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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
5章:王子様の道具 ~勇者にならないために~
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マスク

申し訳ありません。1話飛ばして投稿してしまいました。


1ヶ月後が抜けています。


そちらを先にお読みください。

--マスク--


あらすじ:5階の村が発展した。

--------------------------------------------------



ダンジョン探索班が21階に到着した、と言う報告が入った。


1人の死者も出さないで迷宮を突破して牛頭のモンスターを倒した。


いよいよ本番だ。


ここから先は、ほんの一握りの冒険者しか行ったことが無い。



迷宮探索で食糧が尽き、モンスターだけを食べて20階まで来た冒険者がいる。


その人達は体調を壊して、そのまま20階から帰還の魔方陣で帰って行った。


少しずつ地図を埋めて21階に挑戦した人がいた。


吹雪が舞う極寒の雪原を、荷物になるからと途中で獲ったモンスターの皮を羽織(はお)り、燃える物が無いのでモンスターの脂で暖を取り、病気にならないようにモンスターの生肉を食べて、21階を攻略した。そんな先人達が居た。


それでも22階へ進めずに引き返した。そんな場所だ。


ちなみに今は栄養補給用のポーションや薬が有る。



そんな場所に観光気分で来ないで下さい。奥様!ヘランちゃん!


2人とも、もっこもこの毛皮で重装備だよ!


21階への階段を登ってすぐの場所、とりあえずオラシオンのバリアで吹雪を遮っている。


ここも日帰りで来れちゃう場所になっちゃうんだよね。


「凄いですね。さすが女神様の神器です。吹雪がまったく入って来ないなんて!」


「寒いからもう良いでしょう?5階の村にお戻りになられたらいかがですか?」


隣では侍女の人が焚き火の用意をしている。バリアで吹雪は(さえぎ)れても寒さは防げないらしい。


その向こうでは兵士の人が大きなカマクラを作っている。


カマクラの中に転移の魔方陣を設置して、ベース基地にするためだ。


非常用の食料とか武器とかも入れるつもりだ。


「あら、まだ良いじゃない。せっかくだからマスクを見てから帰るわ。」


「見ても面白く無いと思いますけど。」


そう言いながらカバンからマスクを取り出す。技能工達のすったもんだの(すえ)、ゴーグルとマスクは一体化してコンパクトにまとまった。


結局、木の枠を作るより、シリコンで枠を作った方が薄くて軽い物が出来たのだ。


それを革の仮面に貼り付けている。


風の谷のマスクは形が複雑なのであきらめて、視界の広いペストマスクみたいな格好になった。マスクは正面からの風を避けて、空気を取り込める面積を増やしている。


今日はそのマスクと防寒具のテストに来ている。


今日の私の装備は帽子の付いた毛皮のコートに毛皮の手袋。毛皮のブーツと魔道具のカイロ。それにカンジキ。


カンジキを履かないと雪に沈むのだからしょうがない。履いてもそれなりに沈むけど。


「これだけ寒いと、簡単に氷が作れそうね。冷蔵の魔道具が無くても箱に氷を入れれば冷えるでしょ?」


ヘランちゃんが言う。


「私の国でも昔はそうしていたらしいですよ。氷を運ぶ手間賃と魔道具の値段。どちらが安いですかね?」


「今はまだ手間賃が高いわね。ここまで転移で来れても、危険な場所には違いないわ。」


「その内ここにも村が出来て、気軽に来れる場所になるかも知れませんね。」


木の棒の先にマスクをくくり付けてバリアの外に出してみる。吹雪に負けないかの実験だ。


十分に冷えたら今度は焚き火にかざして見る。温度差による熱膨張で割れないか確認してみる。


温度計を作っておけば良かった。


「水銀って手に入りますか?」


「手に入るけど。何に使うの?」


「温度を測る道具を作りたいと思って。」


「その話は詳しく聞かせて。部屋の温度の事でお母様と揉めているのよ。寒すぎるって言ってすぐに温度を上げようとするの。」


「私の開発室ですけど…。まぁ今度作ってみますよ。」


話をしながらマスクを火から離して棒でガンガン叩いてみる。良かった、割れない。


マスクを付けてみても変形や歪みも無いみたいだ。


何回か同じ事を繰り返した後に、マスクを付けてバリアの外に顔を出してみる。


冷たい!


風が有るだけで、こんなにも体感温度が違うとは!


「どうだ?」


今度は王子様が声をかけてきた。


マスクの有る無しで、これからのダンジョン攻略が変わってくるので、彼も気になっているのだろう。


「ダメですね。ホワイトアウトです。」


「やっぱりか。」


自画自賛だけど、マスクは良く出来ていた。壊れにくいし、視界も広く作られている。


だけど、周りがひどく吹雪いているので見えるのは白色以外にない。数メートル先も見えない。


オラシオンで張ったバリアーの表面も雪で真っ白になっている。同じことが身に付けているマスクでも起きていた。


ここに着いて早々から問題視はされていた。


「まぁ、目を保護する目的は達成されたんだ。手が自由に使えるだけでも有り難いさ。」


王子様に(なぐさ)められる。正直、慰められるとは思わなかった。


王子様にも余裕が出来たのだろうか?


最近、王様からダンジョン攻略の許可も降りたと言ってたし、無理矢理進むことを主張しなくなった。


「では、今までのようにカマクラを掘りながら進むんですか?」


ヘランちゃんが尋ねる。


ここまで来たことが有る冒険者たちの話では、吹雪の合間に先に進み、吹雪きそうになったらカマクラを掘って待避しながら進んだと言っていた。


ただ、晴れ間も短く、狼やらウサギのモンスターやらが出て大変だったと言っていた。


「いや、今回は雪のシェルターを作れる魔道具を作ってもらったから穴堀はしなくて済むぞ。装備も充実しているし、ソリも作っている。士気も十分にあるし、最悪の場合の逃げる手段まで有るからな。大丈夫だ。」


「モンスターの骨と革で作ったショベルもソリも使わなくて済むな、はっはっは。」


「モンスターの脂で暖を取るのも嫌でしたね。あれは臭いですから!」


「今回は気楽で良いですよ。カイロサイコー!」


王子様の言葉に冒険者が口々に言う。(いか)ついおじ様集団がはしゃいでる。


彼等は何度か白い大猿の毛皮を狙って21階まで来ているパーティーだ。


皆、にこやかにしている。笑顔が絶えない。



だからなんと無く言いそびれた。



移動特化の馬、オラシオン単騎で駆け抜けるのが1番早いという事を。



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次回:ここは任せて『対策会議』



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