作戦会議
--作戦会議--
あらすじ:王子様を仲間にした。
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5階の村の焚き火の前で始まる作戦会議。
領主の館とは言わないけど、せめて冒険者ギルドの会議室を使わせて貰いたかった。
ユーハイムの街まで戻らなかったのには訳がある。王子様もご子息様も家出して来ていたのだ。
ダンジョンが何階まで有るのか解らないわ、どんなモンスターが出るのか解らないわ、不確定な事が多い状況で、貴族はダンジョンの中に当代と次代、つまり父親と息子の2人が揃って入ることが許されていない。
なぜなら2人揃って死なれると非常に困るからだ。家督争い的に。
つまり、ダンジョンにいる限りパパ王様やパパ領主様に直接怒られない。
冒険者ギルドには報告してあるからバレてはいるんだけど。
手柄が有れば許されるとでも思っているのだろうか?
「それではダンジョン攻略会議を始めます。先ずはダンジョンについて認識の共通化の為、改めて説明したいとおもいます。」
領主様のご子息様オクタメデル君、愛称オクタン君が司会役をしてくれる。
王子様が頷いて会議が始まった。
参加者は王子様、オクタン君、私と4人の隊長さん。他の人は5の村で泊まる準備をしている。
「そもそもダンジョンはあちこちにありますが、なぜ出来たのか解っていません。ここユーハイムのダンジョンは現在21階まで攻略されています。
10階までは体験した通り獰猛なモンスターも少なく、食糧となるものが豊富で有るために民間人が多く利用しています。
次の10階から20階までは迷宮となります。今まで200年以上かけて探索した結果、迷宮は踏破されていて地図が出来ています。ですので迷う事は無いでしょう。
15階、20階には登り階段の前に守護するモンスターがいます。それぞれ馬の頭と牛の頭を持った大きい人型のモンスターですが、これは何度も討伐されているため問題は無いと思われます。
その次の21階からが問題となります。
21階は広い空間があり、雪に覆われています。普段から吹雪いており白い狼型のモンスターや巨大な猿のモンスターが強敵になります。
白い大猿のモンスターを討伐した先に階段があり22階があります。
現在の最高到達点ですね。
22階は砂に覆われていて、常時砂嵐が吹き荒れているので、目も口も開けていられなかったと聞いています。そのため、現在の冒険者たちは22階の攻略を諦めています。
以上が、現在分かっているダンジョンの姿となります。」
「で。お前の攻略方法はどのような物だ?」
オクタン君の説明の後、王子様が口を開いた。
「大した事じゃ無いわ。5階の村に拠点を作って2つの班に別ける。日中の班は転移の魔方陣を持ってダンジョンを進んで、夜間は見張り班の人と交代してゆっくり休息を取る。今までのダンジョン攻略の荷物と食糧と夜営の問題が解決すれば20階まではかなり楽に攻略出来るハズよ。」
21階までは攻略されているダンジョンだ。先人達は重い食糧と荷物を持って、夜間もモンスターの襲撃に怯えてロクに眠れずに過ごしたそうだ。
転移の魔方陣が有れば食糧を持たない分だけ速く進む事が出来るし、モンスターから食糧を守る手間も省ける。
そして夜は夜組に交代するので、モンスターを気にしないで、ゆっくりと休む事が出来る。
ゆっくり休んでいれば戦う時に十分に地力を出す事が出来るじゃない。
重い荷物を持った先人が出来た事なんだから、楽になったぶん余裕を持って攻略出来るよね。
「まぁ、転移の魔法陣が使えればそうなるな。問題はその先だ。21階の雪原はともかく、22階の砂漠はどうする?」
「攻略隊が20階を目指す間に21階、22階の吹雪・砂嵐対策としてゴーグルとマスクを作ってみようと思うの。現地を見た訳じゃ無いからどこまで対応出来るか解らないけど、視界と呼吸の確保が最優先だと思うの。」
「砂嵐の中では前も見えず息も出来なかったから撤退したと言うし、視界の確保は最優先だろう、ゴーグルとは何だ?」
そこからか!
この世界に来てからサングラスは作ったけど、ゴーグル何て見たこと無いもんね。
「透明な板で目の保護をするものです。女神様の像を贈呈したでしょ?あれを板にして目の前に取り付けられる様にするんです。」
地面に簡単な絵を描いて説明する。
「なるほど!勇者のクリスタルか!?」
「勇者のクリスタル?」
「昔話の勇者の1人に、クリスタルを巧みに扱ってドラコンと戦った人がいる。違うのか?」
クリスタルを操る能力も勇者特典だったのかもしれない…。ミル君がクリスタルの魔法を使えないのは勇者にしか使えない魔法だったのね。
それにオクサレ様は魔法陣をコピーしたと言っていたから、そのクリスタルの勇者の時の魔法陣をコピーしたんじゃないかな。
道具を作るのには使い勝手が良い魔法なので嬉しいわ。
「あ、ええ。似たようなモノです。」
とはいえ、想像の話なので断言はできない。
作るゴーグルはクリスタルでも大丈夫かも知れないけど、念のため強化ガラスで作れれば良いなと考えている。魔法なら何とかなるだろう。
「マスクは口の前を覆うモノですね。それだけでかなり楽になると思います。」
「布のマスクをつける予定だったが。不足か?」
「もうちょっと、性能が良い物を作ろうと思います。」
マスクを立体的にして空気の取り込みを増やせるようにしてみたいと思う。
風の谷のマスクとかペストマスクとか原理は違うけどあんな感じにしたい。吸い込める空気が多ければ動きやすいだろう。
瘴気や悪くなった空気みたいなモノじゃなくて、大粒な雪や砂を吸い込まなくするだけだしね。
「ついでに人数が増えたのでハンドサインを決めた方が良いですね。止まれとか進めとか。」
「ハンドサインは軍で使っているので問題ない。アマネに覚えて貰うだけだ。」
その頃には辺りは暗くなり、夕食の支度を終えた兵士の人に呼ばれた。
夕食は宴会に変わっていった。
なにせ昨日までは保存食だけで、食糧の切り詰めも考えてロクなモノを食べられなかった人達だ。
今日は新鮮なものを料理してお腹一杯食べても問題なくて、夜間の警備も冒険者ギルドに任せられる。お酒だって街まで行って取り寄せてきた。
だから、たくさんの兵士の人からお礼を言われた。ちょっとテレる。
これから何日も続く筈だった節制の日々からの解放は皆を浮かれさせたのだろう。
冒険者ギルドから苦情が出るほどに。
ああ、私だけ『猫の帽子屋』まで帰って寝れば良かった。
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次回:他人任せに『攻略開始』
 




