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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
5章:王子様の道具 ~勇者にならないために~
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誘拐

--誘拐--


王子様に誘拐された。

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兵士の人に手際よく簀巻(すま)きにされて、ダンジョンで使われている小さめの馬車の荷台に放り込まれた。


荷車と言う方が正しいかもしれない。普段は冒険者ギルドの運び屋さんが、獲物を乗せて往き来しているものと同じサイズだ。


相手は王子様と判っているので無下(むげ)にも出来ない。


「大丈夫だから、ちょっと行ってくるね。」


ぐるぐる巻きにされながら、ミル君に声をかける。


「アマネェちゃん、いってらっしゃい。」


ミル君か見送ってくれた。いや、この状態で助けてってワケでも無いけど、のんびりした彼の態度が見捨てられたようで悲しい。帰ってきたら嫌がっても甘えてやろう。


2騎の馬と5台の馬車、それに30人のと兵士とにダンジョンの入り口へと移動していく。


「オクタメデル・ダン・ユーハイムだ。ダンジョンに入るぞ。これが入る者のリストだ。」


馬に乗っている王子様じゃ無い方が言う。


ヘランちゃんのお兄さん、つまり領主様のご子息だね。貴族だけあって整った顔立ちをしている。


「ちょ、ちょっと待ってください。今、確認させますから。」


ダンジョン入り口の男の人が、慌てて冒険者ギルドの建物に駆け込んでいく。


がんばれ担当の人!ここに拐われた人が居ますよー!


簀巻(すま)きにされたまま心の中で叫んでみる。


そんな担当の人を尻目に、王子様御一行はダンジョンに進んでしまった。


受付がいつものおネェさんだったら何とかしてくれていたかも知れないのに。運が悪い。


ガッタンゴットン。


乗り心地は良くない。王都へ行く時に乗ったヘランちゃんの馬車とは雲泥(うんでい)の差だ。


王子様御一行は私が作った新しい魔方陣を知らないのか、普通にダンジョンの1階を進み始めた。


そう言えば、王子様はダンジョンに行くとか言っていたけれど、どんな目的で行くのだろう?


王都に居た時はダンジョンについて根掘り葉掘り尋ねられていたけど、ダンジョンでどうこうしたいと言う話は聞かなかった。


10階くらいまで見たら満足して帰ってくれるかな?希望的観測すぎるかな。


転移の魔方陣が出来てからも、強い冒険者による朝のモンスター退治はしているのでエンカウントもなく進む。


転移の魔法陣が出来たばかりなので、知らないで1階を進む人や転移の魔法陣が怖いって人もるので、もうしばらくはモンスター退治をするそうだ。


荷物用の馬車に揺られているので、手足が痛くなってきた。治癒の魔法をかける。


体を起こして少しでも楽な態勢になるようにしてみる。


ガッタンゴットン。


暇になってきた。緊張しているのか誰1人喋らない。


5階の村まで着くのに半日くらいかかる。私がミル君とお茶をしていたのがお昼ご飯の後だったので、普通に歩くと今日はそこまで行ける事になる。


だけど、身軽な冒険者達と違って、馬車を階段で持ち上げなければならない。これは予想もつかないのでもっと時間がかかるんじゃないかな。


さっきまでお茶タイムだったからお腹の中がタプタプしてる。浄化の魔法があるのでトイレを考えなくて良いのは助かった。30人以上の男の人の近くでトイレとかできないし、半日も我慢なんて辛すぎる。魔法万歳。ノーモア乙女の危機。



1時間ほど経って、誰も話しかけてこないことが解ったので少し飽きてきた。


荷台で揺られているだけだし、見張りにも来ない。


誰か喋ってくれたら少しは状況が解るのに。


縛られたままで体が痛くなってきたので、クリスタルの魔法でナイフを作って簀巻(すまき)のロープを切ってしまった。


体を伸ばしながら周りを見渡すと大量の食糧とその上には毛皮で作られた大量の防寒着。


私が行ったことがある場所は防寒着がいるような場所がない。そして、冒険者の人から聞いた防寒着が必要となる場所は、21階の白い大猿が出てくる場所までない。


つまり、王子様は21階か、もしくはもっと上を目指して登って行きたいのだろう。


「どこまで行くんですか?」


解らないので、馬車の隣を歩いてる兵隊さんに聞いてみた。


「おわ、ビックリした。縄は!?」


「ナイフでチョイです。逃げるつもりは無いので心配無いですよ。」


クリスタルのナイフをひらひらさせながら話しかける。


ガタゴトうるさいので小声なら王子様まで届かないだろう。


「ダンジョンの攻略だとよ。」


やっぱりダンジョンの攻略か。


防寒着も食料もそこにたどり着くために用意した物なんだろう。


「なぁ、何で逃げないんだ?」


兵士の人が聞いてくる。


「行き先も犯人も解っていますからね。どうせ、夜くらいに解放されて無理矢理手伝えって言われるのでしょ?逃げたら面倒だしね。少なくとも王子様に挨拶してから帰りますよ。」


「そ、そうか、そこまで考えているのか。」


「どうした?」


隊長さんらしき人が来た。王子様まで声は聞こえなかったみたいだけど、隊長さんには声が聞こえてしまったのだろう。


いつの間にか荷車が止まっていた。2階へ上る階段に着いてしまったのだろうか。


「あ、隊長。いえ、勇者殿が縄を切られてしまいまして。」


簡潔に報告する兵隊の人。


「王子様に会わせて。」


私も要求を簡潔に伝える。だけど、少し怒った声を出した。


「わかった、こちらへ。」



隊長さんも物わかりが良くて助かるわ。



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次回:『王子様』と対面



明日、新作を上げようと思います。良かったら読んでください。


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