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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
5章:王子様の道具 ~勇者にならないために~
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さいきょうのぶき

--さいきょうのぶき--


王都から逃げ帰って来た。

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ユーハイムの街に戻って、ミル君を堪能したので、お土産を渡しに行こうと街に出た。


ミル君へのお土産は王都で買ったちょっと変わったナイフ。ブレードの背の部分に変わった切込みや穴が付いていて、色々な用途に使えるらしい。


それに、私が作ったクリスタルナイフも贈った。小型化してペンダントトップに仕込むような形にしてある。


ちょっと使いにくいけど、いつでも身に着けていて欲しいじゃん。


コレットさんにはホアード様のお屋敷で飲んだ紅茶。ちょっとパク…分けて貰って来た。


ちゃんと王都で買った髪飾りも渡したわよ。


パン屋一家にはパン切包丁。ギザギザが付いていてのこぎりみたいになっている。硬いパンも柔らかいパンも切れるのに、ちょっとしたデザインが入っていてのでかわいい。


小さなデーツくんにはスプーンをあげた。自分専用のスプーンが嬉しかったのか喜んでくれて可愛かった。


木工屋のサイモンさんには木を細工するための変形ナイフ。持っているかも知れないけど。工具になるものは何種類あっても困らないらしい。


鍛冶屋のゴルドさんにはシャープナー。砥石より手軽にナイフを研げるようになる。少し切れ味が悪くなった時とかに便利。


魔道具屋のシュラン夫妻にはお茶にしたわ。やっぱりサラさんとお茶会しているのが楽しいし。


こちらのお茶葉はちゃんと王都のお店で買って来たわよ。マリアンちゃんと入った喫茶店で、貴族向けだからか少々お高かった。


お土産なんて滅多に貰えるものじゃ無いのでみんな喜んでいたよ。


ただ、みんな揃って「そんな事より…」って続くのが気になったけど。



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お土産を配りながら鍛冶屋『炎の剣工房』でゴルドさんに木に描いた絵を見てもらう事にした。


「こんなのを作りたいんですけれど。」


「何じゃこりゃ、この刃の部分だけを作れば良いって事か?」


「そうです。後の部分は私が作りますので。」


「バカだろ。デカすぎるって。」



『ぼくのかんがえたさいきょうのぶき』


目指すは大剣。


ホアード様のお屋敷で兵士の人と模擬戦をしたんだけど勝てなかった。


子供冒険者教室に通った程度じゃ、剣の腕なんて兵士には及ばなかったのね。


なので、見た目重視。バカと言われようが剣として使うための実用性は2の次なのである。


だって、これは戦う武器じゃなくて脅す武器。


もちろん使えるのに越したことは無いけど。


戦い方は、大剣にビビッてもらっている間に魔法で倒す。


大剣の内側に魔法の杖を仕込めるようにするのだ。大剣だと思ったら魔法の杖だった作戦。


問題は攻撃魔法が上手くいっていない事だけど。


だけど、この大剣には、もうひとつ戦い方をがある。


それはオクサレ様から貰ったオラシオンと一緒に戦う事だ。


あの馬は戦いにはまったく向かないみたい。あくまでも布教する時の足として用意されたようだった。


七つも機能が有るのに攻撃に使えそうなのはマキビシだけなのよね。


でも、速度は出る。飛ぶような速さ。


速度の出たオラシオンに乗って馬上から大剣を突き出すだけで自動的に強い攻撃になる。


上手くいくかわからないけど、私が出来そうな事を並べたらこれが『ぼくのかんがえたさいきょうのぶき』になった。



とは言え、剣って鉄の(かたまり)だから重たいのよね。なので、身の中身はスカスカにくり抜くにした。どうせ2回3回とは打ち合う気もないんだもの。


サイズの問題もあって、これもゴルドさんにグチグチ言われたけど。


出来上がった刃を持ってみる。思ったより重たい。鉄だし。でも、何とかなるかな。振り回すわけじゃ無いんだしね。


それより問題なのは、思ったより威圧感が無い。威圧感が無いのは私の考える武器としてはちょっと困る。威圧してビビッもらっている間に攻撃したいんだから。


しばらく考えて、くり抜いた部分にクリスタルの魔法で骨みたいなものを入れる事にした。


トラス構造ってヤツ?長い鉄骨の間に三角の骨になる鉄骨を入れてるような感じ。


こうすれば強度も出るだろうし、強く見えるんじゃないかな。


でも、そのまま三角にするのは面白くない。


くり抜いた部分に赤いクリスタルで『猫の帽子屋』と透かし文字を入れてみた。


うん。良いね。良いけど、これじゃ看板だよ。看板娘には似合うかもしれないけど。


他に案も無かったので、オラシオンの上で持っていても安定するように、少し長めの柄とカウンターウエイトを付けて完成にした。


後は使ってみて変えれば良いんだよ。



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並行して魔法の研究をしていた。


ダンジョンに行って前に作ったアイテムボックスの魔法を使ってみる。森で試した時は使えなかったものだけど、もしかしたらダンジョンで使えるかもしれない。


結果は、アイテムボックスの魔法はとりあえずもう少し考えないといけないらしい。むぅ。


もうひとつ転移の魔法も使ってみる。こっちはダンジョンに帰還の魔法陣が有るのでそれを応用すれば出来ると思ったんだ。こっちの方が簡単に成功しそうなのよね。


やっぱり見本が有ると楽だね、思った通りに簡単な応用で使えるようになった。魔方陣と魔方陣の間を転移出来るようになった。


さっそく冒険者ギルドのおネェさんと相談したら転移の魔法陣を設置する事になった。1階から3階、1階から5階の村、1階から10階と転移の魔法陣で移動できるようにする計画が持ち上がった。


今はとりあえず設置までしていて、そのうち一般にも公開して使用料を取るつもりだ。少なくとも、おネェさんはそのつもりだ。


だって、話して2日で金額の詳細設定から使う時の問題点まで事細かにレポートを作って、領主様からの快諾(かいだく)を貰ってきていた。


私が領主様に会うのにどれだけ時間がかかったと思っているのよ。おネェさん有能すぎ。



もうひとつ、ちょっとした事だけど魔法の靴を作った。


今までの靴を2段ジャンプの出きる靴に改良したのだ。


だって、オラシオンに乗るときによじ登らなきゃならなかったんだよ。人の見ている前であの無様な恰好を見られるのはあまりにも恥ずかしい。だから、がんばった。



そんな中それは訪れた。


ミル君と『猫の帽子屋』でまったりゆったりとお茶して過ごしていた時の事だ。


王子様。


「ダンジョンに行くぞ。」


護衛の人が30人くらい。


拉致られた。



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緊張感のない『誘拐』



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