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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
1章:森の恵 ~飢えなくするために~
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いちにち

--いちにち--


あらすじ:蛇も美味しかったです。

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私の朝は早い。


太陽といっしょに起きて寝具を整え着替えて、ベッドと寝間着に浄化の魔法をかける。魔法もミル君に教わった。


ベッドには(わら)のクッションにモンスターの毛皮が敷いてある。ここでは布の値段の方が高い。


ダンジョンで捕れるモンスターのお肉が市場に出回っている。ついでに取れる毛皮は余っている。スライムの餌になっているくらいだ。つまりゴミ箱行き。


毛皮を使えるようにする処理を自分ですれば安く手に入れる事ができるし、毎日浄化の魔法をかければ痛むのも抑えられる。毛皮の丈夫さで(わら)のクッションの刺々しさも気にならない。何なら重ねて敷いても良い。まぁ寝心地はそれなりに良い。


井戸へ行って魔法で水を汲んで、キッチンの水瓶を満たしていく。


釣瓶(つるべ)すら存在しないので水を魔法で操作して汲み上げる。魔法で出した水より井戸水の方が美味しいのは、純水とミネラル水の違いなんだろうか。毎日わざわざ井戸から水を()んでくる。


水汲みついでに顔を洗う。水の球を空中に保持したまま顔を突っ込んでバシャバシャする。浄化の魔法でも綺麗にはなっているのだけど、気分の問題だよね。身が引き締まる気がする。


顔を洗ったら浄化と風の魔法で水分を飛ばす。この季節だから風が気持ちいい。


満たされた水瓶に浄化の魔法をかけると水の殺菌・消毒を済ませる。


魔法のおかげで菌もウイルスも寄生虫だって怖くない。神様印の浄化の魔法はまさに万能。万が一食中毒になっても浄化の魔法ですぐに治る。有毒物質を食べても浄化の魔法で済むそうだ。毒キノコも怖くない。


ちなみに、トイレの後も紙で拭かないで浄化の魔法をかけるだけ。これでウォッシュレットよりも清潔を保てる。初めてトイレに入った時にトイレットペーパーが無くて涙目になったのは内緒だ。


初めてのトイレの時は便器の下にスライムが(うごめ)いていて大騒ぎした。森を豊かにする液体肥料製造機はトイレの底に貼り付いていた。


せめて見えないようにしてほしい。おっかなびっくり用を足したけど生物が下に居るなんとも言えない気持ちわかるかな?最初は気持ちが悪かった。


でまぁ、用を足していざ拭こうとしたら紙がない。以前はトイレに入ってすぐに紙を確認していたくらい気を付けていたのに、スライム騒ぎで確認が飛んでしまったのよ。


恥ずかしいのをこらえてコレットさんを呼んで紙を貰えるように頼んだ。毛皮よりも布よりもお高い紙。そんなものがトイレで気軽に使えるはずもなく…。コレットさんに浄化の魔法をかけてもらった。


トイレにも行けない16歳だった私を嫌な顔もせず助けてくれた。コレット様は女神様だ。


あの連絡も取れないポンコツ様では断じてない。


コレット様がお金が無くて神頼みしたのに、食い扶持(ぶち)だけ増やして逃げていく彼女は女神様ではない。断言する。


行き場の無い私を受け入れてくれて、少ししかない自分達の食べ物を分けてくれる。コレット様こそ本当の女神様に違いない。


無計画召喚ダメ絶対。



身だしなみを整えたら、店の前を(ほうき)とチリトリと風魔法を使って掃除していく。


広いところを風魔法でさっと一吹き。気持ちがいい。最後に(ほうき)とチリトリでかき集めてスライムの入ったゴミ箱にポイ。


その間にコレットさんは朝食の準備をして、ミル君は店内の掃除をしている。店内は刃物だらけなので私にはまだ難しい。さすがミル君。


掃除が終われば次は朝食だ。


黒パンとスープ。それに森で取れた果物が付く。森の恵みがたくさん使われている。ありがたい。


お肉少なめな質素な食事なので、ミル君の成長が気になるところ。いっぱい食べさせて大きくしてあげたい。具体的には私の身長より伸びてほしい。


3、4日ごとに森に行く。もちろん食材や薬草などの森の恵をいただきに。私も少づつ採取できるようになって貢献(こうけん)できていると思う。ウサギ?知らない子ですね。


他の日の午前中は店番をしながら売り物の勉強をしたり手入れをしたり、あるいはミル君の勉強の手伝いをしたりしている。算数が出来てよかった。


私たちがお店に居る日の午前中に、コレットさんは仕入れや買い出をしに行く。さすがに森の恵みだけでは不足する物がある。


昼食を挟んで、午後からはミル君と街の中を見て回っている。遊んでいるワケではなく、物価や地理、常識の勉強だ。デートでは断じてない!


2人して街を歩き、お店を見て屋台をひやかす。テミノリスはイノシシみたいなモンスターだった。お金はないので見るだけだ。


ああ、今日もミル君がかわいかった。テミノリスのサイズを教えてくれるために手をいっぱいに広げて…。


夕方になり、空き地へ行くと子供達が集まっている。ダンジョンに近いこの街でダンジョンに入ったことが無い大人はほとんど居ない。


街とダンジョンの気候が違うおかげで、雪が降る冬の間でも狩りや採集、薪拾いなどができる。寒さしのぎにダンジョンを(おとず)れる人もいるらしい。


冬の間もダンジョンで稼ぐ人を増やすために、領主様が冒険者を雇って子供達に剣術や槍術それに弓術を教えている。子供冒険者教室と言う奴だ。


私も子供達に混じって体を動かす。剣を振ってみたり、槍を突いてみたり。部活みたいで楽しい。子供達は真剣だけど。


日が沈み、シャワー代わりに浄化の魔法をかけながら家に帰ると夕食だ。朝のスープに肉を入れて簡単なアレンジ。黒パンとサラダも頂く。


これが具の入っていない塩スープだけだった事を思えば涙が出てくる。


お風呂は無い。浄化の魔法様々だ。


けど気分的に寂しいので、部屋に()んで置いた水で体を拭く。やっぱりさっぱりする。


お風呂に入りたい。


そして、毛皮のベッドで就寝する。

灯りの燃料代もバカにならない。

風呂の燃料代なんて夢のまた夢だ。



夢でも良いからお風呂に入りたい。



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次回:『井戸端会議』で魔法の始まりの話



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