ホアード様のお屋敷
--ホアード様のお屋敷--
あらすじ:王都の前の峠で魚のスープを食べた。
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王都に入ると潮の香りが強くなった。都の中を人達が忙しなく駆け回りとても活気がある。馬車の窓から顔を出そうとすると、マナーの先生に怒られた。
着ている物も動きやすいものから、お宅訪問用のしっかりしたドレスに変わっている。ドレスってこんな構造になっているんだね。動きにくいし…。ガーターベルトって意味のあるものだったんだね。
今日からはホアード様のお屋敷にお世話になる。領主様の娘のヘレナちゃんの別邸でも良かったんだけど、「ワシが保護する。」とホアード様が聞かなかった。
ヘレナちゃんは王都までの足として、そして私為のホステスとして来くれている。
まぁ、少しでも利権を得ようとする領主様の策略なのだろうけど。
ホワード様と一緒に早駆けしないで済むので助かったよ。馬なんて乗れないわよ。一般的な女子高生としては。
ヘレナちゃんが良い娘なので一緒に居ても気分が楽だっし年も近いので楽しかった。マナーの先生の扱きに最後まで付き合ってくれた戦友で、この4週間ずっとそばに居てくれた。
それにユーハイムの街に戻ればホアード様よりヘレナちゃんの家に頼る事の方が多いだろうしね。
城門の喧騒をくぐり抜けて、商店街の客引きの声を横に聞き、閑静な住宅街を遠くに望んで、豪華な貴族街に入る。
「ああ、ここが私の家の別邸ですわ。何かありましたらここを頼ってください。」
大きなお屋敷が目に入る。さすが領主様。辺境伯なだけ有って立派なお屋敷だ。門からお屋敷までの距離が遠い。歩いて行くのは大変そうだ。
こんなお屋敷で執事とかメイドと執事とかにかしずかれながら生活出来れば最高だ。マナーの先生は必要ない。執事だけでOK。
だけど、今日の目的地はヘランちゃんの別邸じゃない。更にポックリポックリ歩いて行くと貴族街が終ってしまった。
「あの、ヘレナ様。貴族街が終わってしまったのですけど。」
不安を募らせて聞いてみた。
「あの方は少し変わった方ですから。」
苦々しそうな顔でなんとか声を絞り出すヘレナちゃん。
確かに誰も研究しない魔法なんてモノを趣味として扱ている変人だ。誰もが使え過ぎていて研究する価値の無い魔法を。お金にならないモノを研究するなんてよっぽどの変人だろう。お金持ちじゃ無きゃ出来ない。
残すところ在る建物は王城だけだ。
崖の上に燦然と佇む絢爛なお城。
お城。王様が住むところ。お金持ち。変人。おおう!王様は変人だったのか!?
ビックリドッキリ大成功!?
ホアード様は王様で、王城に居るとか?
スルー。
見事なまでのスルー。期待に満ちた私の心もスルー。お城の前を、門番を徹底的にスルー。
ポックリポックリ馬車はお城の前を進む。
次第に緑がなくなって岩ばかりの海岸に向かう。家なんてものはとっくに無くなっている。お城の崖の下の方。浅い洞窟を抜けた白い砂浜のそばにやや小さめなお屋敷がポツンと有った。
豪華と言うより質実剛健。要塞のようにも見える。
「遅かったな!聖女よ。」
広く何もない庭を通り過ぎてお屋敷の扉を叩くと、ホアード様が出迎えてくれた。
かなりの大部隊で迎えてくれた。部隊。兵隊さんの様な人が30人ほど居る。
普通はメイドさんが立ち並ぶんじゃ無いかな?物々しい槍が建ち並ぶ。
「お招き頂き有難うございますホアード様。でも、聖女じゃ無いです。素敵な場所ですね。」
建物が要塞風じゃなきゃ良い場所だよ。回りには家の無い静かな入り江の砂浜。
背面もゴツゴツした崖に囲まれ、小さな入江の桟橋にはボートが係留されている。遠目には島が浮いている。
隠れ家的な匂いがする。
「かかか、解るか。ここは城の防衛でも重要な場所じゃからな。」
上を見上げれば真上にはお城がある。首が痛くなるほど真上だ。
お城に侵入するには絶好の場所だろう。
海を越えて反り返る崖を登る覚悟が有れば。いや、あそこら辺とか人間の登る角度じゃ無いし、普通は登ろうと思わないんじゃないかな。少なくとも私は絶対に嫌だ。
「まあ、立ち話もなんじゃ、入れ。」
「有難うございます。」
槍を持った兵士が居る玄関ロビーをおそるおそる抜けて、応接間に通される。玄関に、いかにも「今日ここに来た新人です。」と言わんばかりの、取って付けたように花を活けた花瓶が有った以外は道中に飾り気がほとんど無い。
応接間も少しだけ飾られていて、中に若い男女と、その側仕えみたいな人がいた。
「まぁ、座るのじゃ。改めてようこそ我が屋敷へ。歓迎する。こっちは孫のヴィッセルとその婚約者マリアナじゃ。息子たちはまた紹介するのじゃ。」
イケメンが居た。同じ年ぐらいの爽やかイケメンだ。
道楽出来る祖父を持つ貴族のボンボン。婚約者が居なければ優良物件じゃ無いですか!?
「ヴィッセルです。祖父がご迷惑をおかけして居なければ良いのですけど。」
優しい一言。
ホアード様はオレ様なので大変だ。彼も苦労しているのだろう。私も苦労したし。
「マリアナ・デヴァ・シャルドネよ。ヨロシクお願いしますわ。」
婚約者の方は少し険のかかった声で答えた。
乙女ゲームなら、イケメンで優しそうでお貴族様、これだけの優良物件を抱えていて、いきなり聖女と呼ばれる人物が現れて個人的に知り合いになったら、気が気じゃないだろうな。
悪役令嬢ポジションだよね。
ヴィッセル様が王子様なら完璧だったのに。
まぁ、私が相手なのだから、そう言う事は起こらないだろうけど。
とか思いながら笑顔で挨拶をする。
「アマネです。本日はお招き有難うございます。こちらは手慰みで作った物で申し訳ないですけど、お土産にお納め下さい。」
イケメンにリバーシとオクサレ様の像を渡す。
もう少し男性向けの贈り物とか考えておけばよかった。クリスタルのペーパーナイフとか。カッコイイよね。ハートを掴めるかもしれない。
誰だ?貴族だからお茶会の話のネタだなんて考えてたヤツは?
「買収ですか?貧乏人が無理しなくて良いですよ。」
イケメンの一言にイラっとした。
素直に感謝しとけよ!
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次回:『婚約者』様のお昼ごはん。




