魔法使いの嘆き
本日2本目の投稿です。
『グリグリ』を読み飛ばしている方。ご注意ください。
魔法使いの嘆き
あらすじ:やっぱりポンコツ様で良いかな。
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「でじゃ、魔法の女神様はなんと申されていたのじゃ?」
さっそく、ホアード様がやって来た。
女神様は気がついたら消えていた。また、マンガを漁りに行ったのだろうか。そのまま付いていてくれれば心強かったのに。
「熱く、暑苦しくアサギ×スオウのカップリングについて語られていました。私はスオウ×アサギになると予想しているのに…。大論戦になりました。そして最後に魔道具にのみに使える魔法記号を授かりました。」
抑揚なく言う。あの日の夜の話としては、だいたい合ってるし。
「全くわからん。が、魔法記号をとはなんじゃ?」
解るようには説明してないし。
「ドラゴン語を使わないで魔道具にだけ使える記号です。浄化の魔法みたいな記号を作れるようにしてもらいました。魔道具が戦争に使われるかもしれない事を嘆いた私に授けるために現れて下さいました。」
「それは魔法には使えないのか?」
魔法の使用にだけ興味を示すホアード様。ブレない。
「使えません。それと、女神様に教えて頂いたドラゴン語も忘れさせてもらいました。」
嘘です。ホアード様に付き纏われたくないだけです。
魔法記号を魔法陣として使おうと思えば魔導書に書かれた方を変えれば良いのよ。
女神様が言っていたのとは逆に自分の魔力を力の源にすればいい。まったく魔法に出来ないわけじゃ無い。
「ド、ドラコン語まで!?な、なんと言うことしてくれたのじゃ!」
がっくりと肩を落として膝をついてしまった。少し可愛そうになる。
「どうして、そこまで魔法に拘るんですか?」
「貧富の差を無くしたかったのじゃ。」
そしてシュラン様はポツリポツリと話り始めた。
この国は村によって貧富に差がある。大きな街やダンジョンが、村の近くに有るか無いかが1番大きい理由じゃ。
冬の間にダンジョンに行けない村の人は、雪のせいで家の中でできる内職しかできないから稼ぎが少くなるのじゃ。
しかし村から離れてダンジョンに行くには、距離が有りすぎて、収穫から雪の降り始めの間にたどり着く事は出来ないのじゃ。
例え冬の間に何かを生産したとしても、売り先も大きな街やダンジョンのある街なのだから、遠くへ運ぶ都合上、売値が高くなって売れないのじや。
王宮が資金を出して行商を行かせたりするが持ち運べる量も少ない。
その内に、貧しくなった人々は村を出ていって農地が荒れてしまうじゃろう。
今はまだ、空いた土地に他の家の次男三男が継いでくれているからマシじゃが、その内に人手が流出して農業生産量が減るじゃろう。
それに、ダンジョンの方には人が集まりすぎて、人手が余ってしまう。仕事が無い人々は、やがて罪を犯す様になるじゃろう。
魔法は、魔道具と違い誰にでも使える。
貧しい人でもじゃ。
それに運搬には売れる荷を多くして、私物が少くなる方がいいのじゃ。魔法は荷物にならないのじゃからな。
冷蔵の魔道具は便利かも知れぬが、積み込める量はかなり減るじゃろう。
1回の運搬で運べる量が減れば、商品はより高くなるじゃろう。高くなった品を買う人は減るのじゃ。
それに、流通を良くすれば貧しい人だけではなく、地方を護る兵士や多くの商人たちの助けにもなるのじゃ。
金が入れば、また色々な援助も出来よう。
「例え流通に使えない魔法でも、誰でも平等に使えるのならば民からの文句も少ないじゃろう。魔道具は金持ちにしか使えまい。」
そう言ってホアード様は話を締めた。
意外としっかり考えてた。
金持ちの道楽とか思ってごめんなさい。
この街の外を知らない私には、ダンジョンの有無で生活が変わることなんて想像出来なかった。
トラックの無い世界では中央と地方との貧富の差が激しいのだろう。
「そこまで考えていたのですね。ごめんなさい。ドラゴン語には犯罪を助長する魔法も含まれていました。魔法で人を殺すことも出来るでしょう。それは平等では無いのでは?」
ホアード様は遠い目をして微笑む。
「オマエのスタンロッドと同じじゃ。使い方次第じゃと。あんたは広める気が無かったみたいじゃがな。」
「まあ、一般の人の護身具は別に考えてましたよ。音で脅かしている間に逃げたり人を集めたり出来る様にするものを。」
スタングレネードの事だ。あるいは防音ブザーみたいなのでも良いかもしれない。
「なんと、流石は異世界人様じゃ。爆音の魔道具も殺さない武器じゃと申すのか。雷の閃光と爆音じゃから、てっきりアレもモンスターを殺すモノじゃと思っておったわ。」
女神様が降臨された場所に居ただけ有って流石に異世界人はバレてるか。
勇者だとバレなきゃまだ良いよね。『7歳児に負ける異世界人』なら、まだ戦争に関わらなくて済むだろう。
「スタンロッドもスタングレネードも元々は人を殺さない為の武器ですよ。山菜を採りに行ってモンスターに出くわした時に逃げる為に開発してたんです。閃光を森の中で使うと投げる時も逃げる時も目を瞑らなきゃならなくて使い物にならないですし、街道では人集めの効果も薄いでしょうから、売るにはもう少し工夫が必要でしょうね。犯罪にも使えちゃいますし。」
「武器屋の時点でダメじゃろう。剣でも人は殺せる。ま、使い方次第じゃの。」
それは、そうだけど。モヤモヤする…。
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次回:『激論』 魔法v.s.魔道具
 




