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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
4章:女神様の道具 ~名前を広めるために~
53/93

腐海

--腐海--


あらすじ:女神様は腐っていた。

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「おはようございます。オクサレ様、起きてください。朝食ですよ。」


すでに太陽はかなり登っていた。私もさっき起きたばかりだ。


ホットドック売りはミル君が行ってくれていた。ああ、早起きしてミル君の雄姿を見たかった!


いや、待て、早起きしていたら、私がホットドック売りに行ってしまうじゃないか…ぐぬぬぬぬ。


昨日の夜は護衛の人には遠慮してもらって、女神様とランプの灯りで2人で盛り上がり、同じベッドで寝落ちした。


「オクサレ様って…確かに腐海に落ちましたけど。まあ、おはようございます。」


否定はされなかった。


さすが薄い本にまで手を出して、その上でBLとヤオイの違いを語り、ヤマ無しオチ無しイミ無しの聖典主義を熱く語っていたお方だ。ずいぶんと深い所まで行っていらっしゃる。そして、微妙に古い。


でもお陰で、ミル君やパン屋姉妹、護衛の人3人衆とは出来ないような無責任で非現実的な女子トークを久しぶりに楽しんだ。


こちらでは女子トークも現実に直結する。慈悲は無いのだ。特にパン屋姉妹と話していると、いつの間にかお店の経営の話になっている。


もう少し、無駄話しようよ。



ベッドの近くに机を動かし、朝食の載ったトレイを置く。黒パンとスープそれにサラダだ。女神様へのお供え物にしては粗末だけど気にしない。


私が来た時はもっと粗食(そしょく)だったもの。


2人して黒パンをスープに浸けてモソモソとかじる。


女神様もご飯食べるんだな。


「んで、何で今さら出てきたんですか?」


朝食を食べて一息ついたところで質問した。


出て来なければば私からの非難も受けずに、漫画の世界に浸れていただろう。


彼女は単に魂のリサイクルをしただけで、私が死んだ事故の責任は無かった。責められる(いわ)れはない。


本人談なので、もしかすると殺して連れてきた可能性もあるけど、わざわざ違う世界まで私を探しに来て殺す理由は薄いと思う。


「私が顕れた理由は2つ。貴女が魔道具を広めてくれている事に感謝すること。私と会ったことが無い人が女神としてまつる祠を作ってくれる程になったのは貴女のお陰だわ。ありがとう感謝してる。今までは祠も無かったしね。神格も少し上がったわ。」


女神様が一息区切る。私も黙って聞いている。


「もうひとつは、あなたが困っていたから。魔道具を広めたいけど、争いは起こしたくない。あなたの世界を見ていたから共感ができた。腐海の底に沈んで居たから気付くのが少し遅れてしまったけど。」


腐海に沈んでないで、見守るくらいしていて欲しかった。


「神様にとって争いは避けなくて良いモノなのですか?」


「争いは色々と産み出すわ。戦いを司る神もいるわ。人間以外を優遇している神も居るわ。別に信仰を得られるなら人間が絶滅しても構わないのよ。この世界には森の人みたいな人間以外も居るしね。まあ、あの種族はドラゴンを信仰しているから別だけど。ドラゴンが居るから文化が途絶える事も簡単には無いわよ。」


前世の世界も戦争と共に文化が発展してた。鉄もインターネットも戦争の産物だ。芸術は戦争の副産物だ。


戦争をしてはいけないと思う。でも、戦争が人間の発展を(うなが)して来たのも事実だ。


銅が有れば獲物を狩るのに十分だったのに。銅より強くあるために、銅で武装した敵を倒すために、鉄に発展してしまった。


ご近所さんとの口頭でのコミュニケーションで済むはずだったのに、遠くの人を、多くの人を殺すために世界中に広がるネットワークが繋がってしまった。


そして、私たちは、その恩恵を受けていた。


私は武器屋だ。今は獲物を狩るような武器だけ売れば良いけれど、戦争が始まったら人間を殺す武器を売らなきゃならないかもしれない。それは嫌だ。


私は勇者だ。今は平和だし、力も無いけれど、力を付けた時に戦争になれば、戦争に駆り出されるかもしれない。


偉い人からの要請は避けられるかもしれない。でも、街の人から懇願(こんがん)されたら?ミル君におねがいされたら?


断れるだろうか?


そして信仰も戦争と共にある。


「神様、お救いください。」

「神様、彼を護って下さい。」


戦争が在った方が神様の信仰は集めやすいのかもしれない。


女神様が戦争を望んでしまったら?


魔道具の女神様なら、戦争を引き起こした方が信仰を集められるかもしれない。


それこそ、使い方次第で爆弾を作ることが出来るかもしれない。


「女神様、敵に復讐する為に高性能な武器を下さい。」

「女神様、街を護る為に、囲んでいる敵を皆殺しにする武器を下さい。」


言葉なんてどうとでも選べる。



「でもね、私は人間の文明で産まれたの。愛着くらいあるわよ。そしてあなたの世界で可能性を見てきた。ふふふ。適度に平和にしていた方が腐りやすそうじゃない?私は腐海を産み出すわ!」


「いや、魔道具の女神としてそれはどうなんですか?」


安心したけど、ツッ込まずには居られなかった。


「あら、印刷機を作れば良いじゃない。立派な魔道具になるはずよ。そして、作家を育成すべく布教するのよ!2つの世界の味比べ、楽しみだわ!」


女神様の主目的が解った。

腐っていることが良く解った。


こちらに文学の女神様は居るのだろうか?



是非とも手遅れになる前に純文学の女神様に進化して欲しい。



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次回:女神様のプレゼント『グリグリ』




明日は試験的に

時間を離して、2話投稿しようと思います。


ご了承ください。



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