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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
4章:女神様の道具 ~名前を広めるために~
51/93

--祠--


あらすじ:領主様に負けた気がする。

--------------------------------------------------



「オウ、来たぞ。」


「呼んでないし。」


『猫の帽子屋』にホアード様が来た。フットワーク軽いな、このお爺さん。


こう言う俺様役はイケメン王子様でやって欲しい。傍若無人(ぼうじゃくぶじん)なイケメン王子様で。


そもそも魔法の第一人者ってなんだろうか?楽隠居(らくいんきょ)のお爺ちゃんじゃ無いか?


普通は王宮魔法士とか、魔法兵団長とか、魔法関連の役職の人が来るのではないか?


「ツレ無いこと言うな、セオルヘルムのヤツの所から抜け出すのに苦労したんじゃ。」


領主様の館から抜け出してきたらしい。やっぱりオレ様キャラだ。


「どのようなご用件で?」


「魔道具の件に決まっておろうが。」


「何か決まったんですか?」


「決まらないから来たんじゃ。結局、魔道具の中身については、まったく聞けなかったのじゃからな。どんな魔方陣を使っているのじゃ?」


「簡単には教えませんよ。そのために苦労して細工したんですから。上手くいっていれば何よりです。」


「しかし、何が使われているか解らない以上、対策を取れないじゃろう?」


「それは解りますが、抜け出して来るような人を信頼することができません。お引き取り下さい。私は出かける予定が有るので失礼します。行こう、ミル君。」


一気に(まく)し立てて、ミル君の手を引いて外に出る。


今日は久しぶりにサラさんとお茶会の予定だ。付いてくるホアード様を尻目に足早に魔道屋『苔むした巌工房』に向かう。


ホアード様が隣で何か言っているけど、気にしない。



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「こんにちわシュランさん。サラさんは居ますか?」


どうして、私の周りにはお爺さんとか、おじさんばかりなのだろう。シュラン爺さんの顔を見ながらしみじみと思う。お爺さんに当たりが居なのが悪いよね。みんな意地悪ジジイだ。


ホアード様にオレ様キャラを重ねたからだろうか。異世界乙女ゲーの登場人物は若くてイケメン美形オンリーのはずなのに。


「いらっしゃい。ミル。それに黒猫。そちらは?」


シュラン爺さんがホアード様を指して聞いてくる。


「領主様の館から抜け駆けしてきた人です。気にしないで下さい。」


できればそのまま追い払って下さい。


「ああ、ミルの言ってた魔法の偉い役人か?」


昨日、ミル君がシュラン爺さんの所に来ていたのでその時にでも話を聞いたのだろう。その帰りにサラさんからのお茶会のお誘いを受けたと言っていた。


「なに、老後の道楽でやっているだけじゃ。魔法を扱う役職なぞ無いぞ。今じゃ研究され尽くしていて誰も金を出さんのじゃ。」


なるほど、見栄えのする攻撃魔法が無くて、使い古された生活便利魔法しかないと採算取れないんだろうな。組み合わせも少ないし。


シュラン爺さんもお金にならないから後継者を作りたくなくて、自分の子供にすら教えなかったんだし。


「金持ちの道楽か。まぁ、良い。こんな所に独りで来ている位だから大した地位でもないのだろう。そんな事より黒猫、こっちに来い。」


グイグイとシュラン爺さんは庭の奥へと引っ張って行く。途中でサラさんに会ったけど挨拶もロクに出来なかった。むしろワガママを言う子供を見守る母親のような笑顔で手を振ってくれた。


助けてよ!


庭の奥には(ほこら)が在った。石を彫って細工をして組み上げてある。


石の中の小さな神殿の中には女神様の像が(まつ)られていて、花と果物が供えられていた。


「どうだ、魔道具の女神様の(ほこら)を作ってみたぞ。お前が女神様に言葉を教えて貰ったのなら、ワシにもご利益が有るかも知れん。今更かも知れんがワシも魔道具に関わって生活していたからな良い機会だ。」


シュラン爺さんが自慢する。


「それは良さそうじゃな。ドラゴン語を教えて貰えたのも『猫の帽子屋』の女将の祈りのお陰だと聞いた。ご利益は有るじゃろう。」


ホアード様も庭の奥まで付いてきて、しきりに感心している。王都に帰ったら自分でも(ほこら)を作りそうな勢いだ。


私が作った祭壇なんかよりよっぽど立派だ。私の祭壇は机の上に箱を置き、白い布を被せてミル君に彫って貰った人形を置いただけだった。


まあ、それ以上は作れなかったけど。そんなものをグレードアップするなら、料理を一品増やしていたわ!


現在、その祭壇は食卓の脇のチェストの上にあって、たまにコレットさんが祈っている。割と律儀だ。


「どうかしらアマネ?ミル君とあの人が驚かせようと思って内緒で作っていたのよ。」


サラさんが追い付いてきて説明してくれた。


「そうね、ミル君、シュランさん、サラさんも、ありがとう。とてもびっくりしたよ。」


「そうだろう、そうだろう。ミルに聞いてな、なるべく女神様に近づけたんだ。似てるだろう?」


ミル君に聞いて作ったんだ。そして、あんなポンコツ女神様の事を忘れないミル君マジ天使。


今も照れたように笑っている。かわいい。


「顔は…似てないかな。けど、この像の方が神々しい気がするわ。」


ミル君の彫った女神像は辛うじて人型を取っているだけだった。とりあえず女神に見えるように頑張った老人にはフォローをいれておくべきだろう。


「まぁまぁ、辛口ね。折角だからお祈りぐらいしてあげてね。」


サラさんに言われて、祠祠ほこらを見る。


散々祈って現れなかった女神様だ。いまさら祈っても返事が来るような事はないだろう。


ともかく、せっかく作ってくれたのだからミル君とシュラン爺さんの為に祈りを(ささ)げるのは、良いかも知れない。


私はシュラン爺さんに断ると、祭壇の前にひざまずき、両手を組む。コレットさんの祈り方を真似て心の中で少し真面目に祈を捧げてみる。


女神様、魔道具の女神様。


ひねくれたお爺さんが祭壇を作って下さいました。少しだけ信仰が広がった気がします。



「おっひさ~。」



女神様が現れた。



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次回:女神様と『赤い海の月の向こうで』



今回から、あらすじと次回予告を付けて見ます。


調子が良いようなら今までの話にも付けようと思います。


あと登場人物を更新しました。収穫祭くらいまでを載せる事が出来ています。


残りは、追々。

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