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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
3章:魔法の道具 ~お店をするために~
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私の狩り

--私の狩り—


あらすじ:焚火を囲むって良いね。

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夕食の後、小さな小屋に泊まった。5階の村の宿。部屋はそれぞれ独立していてバンガローみたいだ。


ユーハイムの街とは違って、いつもどんよりとした日が差さない場所。ダンジョン。


ダンジョンの外は寒くても、お日様が恋しくなるらしく、住み続ける人は少ない。


泊まった小屋はダンジョンに生えている木を使って作られているそうだ。中には2段ベッドが2つ両端に備え付けられていて、他には机が1つ、椅子が1つしかないシンプルな部屋だった。


昨晩は疲れ果てて、服装はそのままに浄化の魔法をかけてベッドに倒れ込んだ。


狩りの緊張は思った以上に疲れた。



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今日は私が狩をしてみようと思う。せっかく作った魔道具を試してみたい。


魔道具はスタンロッド。警棒みたいな武器で、刃の無いブレードと言うか、シャフトの部分が当たると感電するスタンガンのような魔道具だ。特殊警棒のように伸縮はしないよ。


これならモンスターが強くても、ウサギの時のように攻撃が通らないなんて事も無いと思うのよ。


ちなみに、ウサギは狩れるようになったよ。ちゃんとレベルが上がってるんじゃないかな。


私が狩りをすることは、出発前にエキシナさんを含めた護衛の人達に散々止められた。


「7歳児に負ける人が狩りをしないで下さい!」


説得するのに苦労したよ。


7歳児に負けていたのは秋までで、冬に初めてダンジョンに入る頃には、ちゃんと冒険者のキール君(16)に勝っていると。圧勝だったと。わざわざ冒険者ギルドの受付のおネェさんの所まで証明してもらいに行った。


結局、最初の一撃だけ攻撃して逃げるという事を約束して、何とか了解を得た。スタンロッドで1発当てれば倒れるだろうって思うんだ。ダメなら逃げる。


「1撃だけ。1回当てるだけだから!」


その後、ミュハエルさんと一緒にもう1回、受付のおネェさんの所に行った。一緒に出来れば良かったのに。おネェさんに怒られたよ。



ダンジョンの5階で昨日と同じように、探査の魔道具を使ってモンスターを探していると、鹿に似たモンスターが居た。やっぱりでっかい。そして立派な角を持っている。


ミュハエルさんによると、突進力は猪よりは無いけれど、あの角が危ないという事だ。避けたつもりが引っかかったりするらしい。


モンスターは、野生の動物とは違って逃げたりしない。


ソロリソロリと後ろから近づいていって、バックアタックを敢行(かんこう)する。


スタンロッドだと、ミュハエルさんのように前から挑戦する必要はないからね。


…気づかれた。鹿のモンスターがゆっくりと振り返る。


私もスタンロッドを構えて攻撃態勢をとる。伊達(だて)に何ヵ月も子供冒険者教室に通っていない。それなりの構えにはなっているんじゃないかな。冒険者先生には怒られていないし。


次の瞬間には鹿のモンスターが突進を仕掛けて来る。本当に突進ばかりしてくるみたいだね。


今からスタンロッドを当てても突進の衝撃は防げそうにない。ミュハエルさんみたいなギリギリの回避なんて出来ないので、早めに横に逃たんだけど、鹿のモンスターは軌道を修正して追いかけてくる。


ギリギリまで避けないのが正解らしい。


危ないと思ったのか、横からエキシナさんが飛び出して来るのが見える。少し距離があるけど直ぐにモンスターを斬りかかれるだろう。


ミュハエルさんは矢を打ち損ねている。エキシナさんが飛び出してしまったので、打てば彼女に当たってしまう。


早くしなければ魔道具を試せなくなる(・・・・・・)


仕方ないのでバランスを崩しながら、鹿のモンスターに飛びかかる。


スタンロッドに魔力を流して起動させながら、突進してくるモンスターの鼻面を狙う。


力は込めなくても当たれば良い。そのためのスタンロッドだ。


へっぴり腰になりながら腕だけ伸ばす。モンスターは目の前に来たスタンロッドを嫌がるように顔を上げた。


バチンッ。


モンスターが倒れて、焦げた臭いがする。


当たった。…のだ。


鼻面には当たらなかったけど、モンスターの前足に上手く触れてくれた。


「大丈夫ですか?」


私とモンスターとの間に立ちふさがるようにして、エキシナさんが剣を構える。


「ちょっと失敗した。」


「ちょっとじゃ無いでしょう!!」


かなり怒っている。でも、その間も倒れたモンスターから目を離さない。さすがプロ。


問答の間にミュハエルさんがモンスターに近づいて、(とど)めを刺した。エキシナさんも周囲の確認をしてから構えを解いてこちらを向いてくれる。


「ごめんなさい。ありがとう。」


素直に謝る事にする。


「いいえ、仕事ですから。でも、確かに一撃でしたね、当たれば。」


「まだまだ使い物にならないわね。お肉も焦げちゃったみたいだし。」


私達がそんな感想を話している間に、ミュハエルさんがモンスターを吊り下げてくれた。心臓を突き刺しても血は流れて来ない。


「血抜きも出来ないな。一応このまま解体して見るか。」


解体してみると中のお肉はほとんど焼けていなかった。ブルーレアだよ。その場でチャチャっと火を起こして肉を焼いて食べてみると、血のクセの強い味がした。食べられない事は無いけど。


「やっぱ、こんなクセのある味じゃ売り物にはならないな。仕方ない、お嬢ちゃんの初の獲物だけど処分だな。」


おかしなことにモンスターに有るはずの魔石が見当たらなかったので、角だけ貰って後は放置する。


死んだ動物は放置しておくとスライムが湧いて綺麗に無くなってくれる。さすがスライム。


その後は時間が余ったので、エキシナさんが狩をしたり、ミュハエルさんが狩をしたり、山菜摘みをしたりとのんびりと過ごした。ミュハエルさんも今回は私達に雇われているので、焦って狩りをする必要が無かったしね。


剣1本で狩をするエキシナさんもスタイリッシュでカッコよかった。


でも、私は狩りにチャレンジさせて貰えなかったよ。



スタンロッドの出力を変えて見たかったのに!



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次回:パン屋姉妹の『変わりゆく泉亭』



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