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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
3章:魔法の道具 ~お店をするために~
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代官様

--代官様--


あらすじ:冷蔵庫を作った。

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領主の館に案内してくれたのは家具屋の『静かな湖畔屋』のガーファンクルさん。


領主様の館にも家具を売っている、家具屋さんの店主さんだ。ガーファンクルさんが注文を受けてきてサイモンさんが作る。筋肉オヤジのサイモンさんには領主様の館での営業は向きそうにないよね。人をからかう方が得意そうだし。


それとガーファンクルさんが受けた仕事のすべてを、サイモンさんがやっているワケでも無いらしい。得意分野の人に仕事を振るのが上手いという事だ。



ともあれ、その領主様の代わりに代官様が目の前に居る。


初老の手前くらいの年齢に見える。身長が高く線の細い体に立派な服が少し重そうだ。とりあえず、目付きが悪い。ずっと(にら)まれている気分になる。


領主様は不在だった。新年会で王都に居るらしい。


雪が降る前に、王都に居る王様へ民衆から集めた税金を持って行って、来年の方針を言い渡される。まさに中間管理職。ついでに他の地方からも貴族が税金を納めに来るので、交流して取引をする。そう冬の社交界だ。


ドレスには憧れるけど取引の場所だと聞くと、とたんに面倒くさそうに聞こえる。勇者で良かったと初めて思う。



「本日はお招き頂き、誠にありがとうございます。こちらが『猫の帽子屋』のアマネです。」


丁寧にガーファンクルさんが挨拶する。


「アマネです。貴重なお時間を(たまわ)りまして、ありがとうございます。」


ガーファンクルさんに(なら)って、付け焼き刃の挨拶をする。緊張もしているのでシンプルいずベスト。


衣装も、いつもより上等な物を着ている。さすがに継ぎ接ぎ(つぎはぎ)の有る服じゃまずいだろうという事で、ガーファンクルさんの奥さんの物を借りて手直ししている。胸に詰め物をしているのが悔しい。


小会議室みたいな部屋には、20人ほどが座れる長机に椅子が並ぶ。学校の会議室を思い出すけど、パイプ椅子より豪華だ。


部屋の壁一面に沢山の本が入った本棚が有って、中央の暖炉が明々(あかあか)と燃えている。年嵩(としかさ)のいった人の肖像画がこちらを(にら)んでる。この人が領主様だろうか。暖炉を飾る花瓶には立派な花が活けられている。冬なのでこの花もダンジョン産なのだろう。


そして並ぶ人の群れ。


代官様と補佐のような文官の人が5人と、他に書記をしてる人がいる。あと、護衛だと思える帯剣した人が4人。大変な事になっている。代官様だけで良いんだよ。10人も要らないよ。


「はじめまして。私がユーハイム領の代官のアルフィスです。どうぞお掛けください。」


代官様は鋭い目つきの割に、にこやかに挨拶してくれるけど、気分は高校入試の面接みたいだ。試されているのがひしひしと伝わる。


「早速で悪いですが、新しい魔道具とは、どのような物なのでしょうか?」


「はい、こちらのアマネが作成しましたもので、箱の中に入れたものを冷やす働きがあります。ジョン、こちらへ。」


ガーファンクルさんが彼の使用人に合図すると冷蔵庫の魔道具を持ってきてくれる。


代官様たちが10人なのに対して私たちは3人だ。うう、心細い。


ここに来るまでは、私が魔道具を持てばジョンさんは要らないんじゃないかと思っていたけれど、人数が1人でも多いと安心感が増える。ありがとうジョンさん。


今日持ってきている物は、この前の試作品とは違って、箱を卓上サイズにして金属の装飾を(ほどこ)した豪華な作りになっている。さすがに、ただの木の箱を持ってくるわけにもいかない。


中に仕込んだ冷却の魔道具も()えてある。魔方陣の言葉に不要な文字を長々と足して、ダミーの魔方陣や魔晶石を仕込んだ上に魔方陣を読めない様にコーティングしたりと、思い付く限りのセキュリティを(ほどこ)してある。


文字を解読し難くしてDEATHの魔法みたいに強力な魔法が出来るのを防ぐためだ。あと、コピー商品を作られないようにするのと。


しばらくはブラックボックスにしておきたい。


「上の部分がフタになってございます。どうぞ開けてみてください。」


ガタン。


冷蔵庫の魔道具を受け取った護衛の人が、フタを開けようとしたのだけど、途中で手を離してしまった。


「申し訳ありません。箱の隙間から出てきた部屋の外の様な冷気にびっくりしまして。」


今度は慎重に開いて安全を確認すると、代官様に渡した。


「ふむ、本当に雪の風のように冷たいな。それで、どの様な用途に使うものだ?」


「主な目的として、中の物の冷蔵保存に使えるかと考えています。今の季節だと室外の方が食品が長持ちしますように、夏でも食べ物やポーションなどの保存期間を延長することが出来ます。また、暑い夏に氷が作れるようになりますので、乾いたノドに冷たい飲み物などお召しになることができるでしょう。」


ガーファンクルさんが丁寧に説明してくれる。


雪が降る中で冷たい飲み物のプレゼンをするのもどうかと思うけど、これから領主様に献上されて、王様に献上されてと考えると、夏に間に合わないかもしれない。夏にこそ使いたい物だしね。


でも、領主様が不在だったのは誤算だった。できれば代官様を飛ばして領主様に献上したかった。その方が話が早かったと思うんだけど。



「なるほど冷たい、冷たい空気が出てくるのだな。それで…、これは戦争には使えるのか?」



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次回:代官様が問う『戦争と冷蔵庫』



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