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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
3章:魔法の道具 ~お店をするために~
35/93

テリヤキサンド

--テリヤキサンド--


あらすじ:マモレナカッタヨ。

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パン屋姉妹によるオンナノコの魔法講座は大変参考になった。風の魔法によるオナラの誤魔化し方など盲点だった。詳しくは説明しないけど。


ダンジョンを歩いていると時どき冒険者が狩りをしているのが見えたり、獲ったモンスターを運搬する馬車が通ったりする。


オンナノコの魔法講座を受けながら、遠目にモンスターを眺めるだけで、何事もなく4階の半ばに有る広場に着いた。


普通の人だと、この辺でもお昼前には着いてしまうらしい。私達が着いた頃には、お昼を過ぎてしまっていた。


魔法講座をしていたからね。仕方ないよね。後始末が原因じゃないよね。


というか、もっと使えそうな魔法が有りそうなので、ぜひ時間を取って教えて貰いたい。



今日のお昼は照り焼きサンドとハーブティにした。


鳥っぽい肉を醤油と麦芽糖で照り焼きにしてカラシ菜といっしょにサンドしてある。連れて来てもらったお礼として用意した。ちょっとした感謝の気持ちだったのよ。


だけど、パン屋姉妹の目が怖い。目ってホントに光るモノなんだね。


クンクンと香りを嗅いだ後に一心不乱にガツガツ食べていた。そして後味を確認するように目を閉じて…、クワっと光ったのよ。ホラーよ。ホラー。


「何よ、これ。美味しいじゃない!レシピ教えてよ!」


「お代わりはないの!?売ろうよコレ!」


「も、もう少し人手を増やしてからかな。お醤油も使っているからコストもかかるし。」


人手が足りない事を告げても2人の暴走は止まらなかった。2人とも毎日パンを作っていて、人手が足りないことは良くわかっているハズなのに。


彼女たちは朝からパンを焼いてその後にホットドックも作ってくれている。パン屋の仕事をして、ダンジョンに恵みを採りに着て、ホットドック屋の手伝いまでしてくれているのだ。


その上にパンの種類を増やすと大変な事になる。


それに、私は弁当屋にも料理屋になる気はないのよね。武器屋の居候(いそうろう)だし。ミル君もいないし。


だから丁寧に断った。



昼食後に食休みを挟んで少し道を外れて歩きだす。そんなに遠くへは行かない。何か簡単に採取出来るものがあるか探しながら歩く。有ればラッキーくらいの気持ちだ。


「重いものは荷物になるから採取しない。薪とかはいつでも採れるから最後だよ。道から外れるから迷子とモンスターに注意して。」


ドリアちゃんの注意を聞きながら、(やぶ)にならない程度の開けた場所を歩く。


今日中に5階の端まで歩かなければならないのであまり悠長(ゆうちょう)にはしていられない。


5階に上がる階段の手前で本格的に採取する予定だ。沢山の人がダンジョンに居るので5階の採取ポイントまで行ってしまうと十分な量を採取できないかもしれないからだ。


5階は黙々と歩いた。朝からずっと歩き詰めだので、かなりへばってきた。ダンジョンの恵みで荷物も増えている。


なるほど、これじゃクロスボウなんて重たいものを持って歩きたくないのも理解できる。


重さが少し違うだけでも、長時間持っているとジワジワと体力が削られる。身に染みて解った。



ようやく5階の村が見えてきた。


木でできた建物ばかりだけど、村はかなり大きい。入口には丈夫そうな木の柵もある。


夏の間は村に冒険者が代わる代わる滞在して、村がダンジョンに飲み込まれるのを防いでいる。放置してると建物でもダンジョンに飲み込まれて、無くなってしまうのだそうだ。不思議。


そして泊まり込みで猟をする人が利用する。


「あっちが共同トイレになっていて、こっちが共同の調理場。あそこのカウンターの人はギルドの人で獲物の買い取ってくれるの。街より買い取り額は安いけど連泊して稼ぐ人は良く使うよ。荷物も預かってもくれるし、毛布とか食器の貸し出しもしている。買い取られた獲物を運ぶのに、たまに帰還の魔方陣が占有されたりするから注意してね。」


村と言うより、バンガローの有るキャンプ場みたいだった。林間学校でしか行ったことないけど。


「夜にモンスターは出ないの?」


「夜は冒険者ギルドで雇われた冒険者が交代で見張りをしているのよ。小屋を借りる時のお金の中に見張り代とか、夏の間の維持費とか含まれているから少し値段は高めかな。半日歩いてここまで来てボウズなんてより、泊まり込みの方が良いよ。効率も違うし、外も寒いし。」


まぁ、今日の調子だと多くても2~3時間くらいしか狩りができない。足の速い人でも半日程度しか狩りが出来ないだろう。


2日同じことをすれば半日+半日で1日程度の狩りができる事になる。でも、1泊して1日と半分の時間を狩りに使えれば、効率は1.5倍だ。


なるほど宿泊施設が出来てもおかしくない。


「専業冒険者って優秀なんだね。毎日帰って来る人がいるよ。」


「あの人達は走ってここまで来るからね。化け物だよ。」


「家族に会いたいとか、家の方が落ち着くとか言ってるけどね。」


クロスボウが重たいって言われた意味が更によく分かった。


ホットドックも2~3時間走り続けて小腹が空いた時にサッと食べるには丁度良かったのだろう。冷たいパンと干し肉だけじゃ少し寂しいよね。


蜂蜜レモンとかスポーツ飲料なんてのも作れれば売れるかもしれない。冒険者は水筒を持ち歩いていないから難しいかな。



帰りは帰還の魔方陣で一瞬だった。



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ダンジョンから戻ってきた事を受付で報告して、初めてのダンジョンは終わった。


報告をしないと受付のおネェさんが帰れなくなるからね。おネェさんの怖さは身に染みている。ギルド長を襲った怒涛(どとう)のラッシュの標的にはなりたくない。


初めて挑む、初めてのダンジョン。いろんなことが解った。ダンジョンの挑み方。ダンジョンの恵みの採り方。冒険者が必要としそうなもの。


ただ、あれだけ頑張った戦闘訓練はほとんど役に立たなかったけどね。木の先から落ちてきた毛虫を払ったくらいだ。


採れたモノ自体はソコソコだったけど、雪に埋もれている冬の森の恵みより断然良い。


何よりオンナノコの魔法が1番の収穫だった。もう少し女友達を作ろう。


出来れば、仕事に関係なくて気兼ねしなくていい人が良いな。


オンナノコの魔法を教えてくれたパン屋姉妹には申し訳ないけれど、テリヤキサンドを食べながら気を遣うのはもう嫌だ。


今日は疲れたし、さっさとパン屋姉妹と別れを告げて帰ろう。ミル君の待っている『猫の帽子屋』へ。


「今日はありがとうね。おかげで良い経験が出来たわ。」



勇者はパン屋の姉妹から逃げだした。

しかし回り込まれてしまった。



てってれ~


パン屋の娘はテリヤキサンドのレシピを得た。



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次回:『冷蔵庫の魔道具』を作ろう。



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