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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
3章:魔法の道具 ~お店をするために~
32/93

はじめての魔道具

--はじめての魔道具--


あらすじ:やっぱり負けた。

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魔道具は魔石に魔力を飽和させることから作り始める。


ダンジョンで獲れるモンスターから魔石が採取できる。黒い石炭のような魔石は、魔道具の電池のようなものとして一般には認識されていた。


魔道具が少ないので、使い道があまりないので安い。


「そう、そんな感じ。ゆっくりと魔石に魔力を流し込んで。魔力が全体に行きわたる様にして。」


サラさんの言葉を耳に感じながら、手のひらに乗せた魔石に少しずつ魔力を流し込む。それ自体は難しくはないのだけど、行きわたらせるという事が難しかった。黒い魔石が黄色を帯びた透明な魔晶石に代わっていくのだけど黒い点が残ったりモヤが残ったりと上手くいかない。


「また、点が残っちゃいました。」


出来上がった魔晶石にはゴマ粒ほどの黒点が残っていた。


「ン、慌てないで、ムグ。端から少しずつ魔力を送り込んであげて。」


サラさんがそっと手を握って慰めてくれる。けど、彼女の口はジャムサンドを咀嚼(そしゃく)するのに忙しそうだ。今日のお茶菓子代わりに持ってきた。パン屋姉妹のジャムサンドは日替わりで楽しめる。


点として残ってしまうと、とそこには魔力が充填(じゅうてん)できなくなる。結晶化した場所が人間の流す魔力を通しにくくするようだ。


そして魔石に魔力を流し込むと少しずつ小さくなってしまう事も、均一にしにくい原因だと思う。魔力の流れが変わってしまって思うように結晶にならない。


魔石に魔力を流して魔晶石が産まれる。


上手く充填(じゅうてん)された魔石は、ゆっくりと形を変え小さな丸い球になる。薄く黄色がかった透明な結晶。綺麗だ。



次の工程ではその魔晶石に魔方陣を刻み込む。やり方は魔法と同じで瞳の魔方陣を魔晶石に写し込むようにすれば良い。


「ほら、また文字がぼやけているわ。やり直しね。」


これがまた難しかった。普段の魔法ならば空中に浮かび上がらせる魔法陣も、魔晶石に写し込むときにゆがんでしまう。光の屈折とか関係しているのだろうか。この世界の魔法は物理に弱い気がする。


小さな魔晶石に小さな文字を書く。まぁ、それだけの事でも難しいのだろうけど。


魔方陣の刻まれた魔晶石に、そのまま魔力を流し込んでも魔道具として使える。これは意外と便利なんだけど、使う時に魔法陣の向いている方向を決めておかないと、変な方向から魔法が飛び出す。


手のひらに魔晶石を乗せて魔力を流すと、手のひらを貫通して水が飛び出てきた。びっくりした。


魔法陣がひっくり返っていたようだ。



後は、魔力を供給するための魔石と出力側の結晶とつなげる、つまり電池と電球をつなげる様にすればいい。


繋げるために魔晶石と銅を組み合わせて銅線みたいなものを作る必要はあるのだけど。まあ、難しかった。均一に魔力が流れるようにすることが難しかった。


手順は複雑だけど出力は魔法より小さい。普段は魔法を使った方が効率は良い。


魔道具を持ち歩かなくても良いしね。


けど、わたしは知っている。家電の素晴らしさを。

単純なものが集まって複雑な動きをすることを。



っていうか、女神様がコレットさんを聖女を仕立て上げて設計図を渡すだけで良かったんじゃないか。


コレットさんマジ聖女だし。



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サラさんの『お茶会』を重ねて、何とか魔道具が作れるようになった時には、すでに雪が降っていた。


まだまだシュラン爺さんのようなライターサイズの魔道具を作ることは出来ないけどね。小さすぎるんだ。米粒…とまでいかないけど豆粒に字を書くようなものだからね。伝統工芸の(いき)だよ。


これでも早く作れている方だと褒められたんだよ。要するに魔法陣の投影だからね。レンズとか焦点とか知っている私には有利だったのかもしれない。ありがとう、理科の山田先生。



そして今日はミル君に内緒で森に来ている。


なけなしのお小遣いで買った魔石を使って作った。新しい魔道具を試すためだ。


魔法と言ったらやっぱり攻撃魔法だよね。


攻撃魔法が使える杖を売り出せば儲かるに違いない。


それに、魔晶石と魔石を繋ぐ方法を使えば二つの魔法を同時に発動できることも解った。


これは自分で発見して、多分他には誰も気づいていない。サラさんにはそれとなく聞いてみたけど2つの魔法を同時には使用できないと言っていた。知っていても、単純な魔道具では必要が無かったのかもしれない。


並列回路とか、直列回路とか、電池と電球をつなげるように輪を作るとできた。何でもやってみるもんだね。ありがとう山田先生。



1つ目の杖を取り出す。氷の杖だ。


うん。氷が出来た。ロックアイスだ。魔法で作った時と一緒だね。風で飛ぶようにしておいたのだけど目の前でぽとりと落ちた。チクショウ。


そうだね、夏に欲しかったかな。氷水でも出せば冒険者に売れていたかもしれない。まぁ、この世界の水の魔法は井戸水くらい冷たいので売れるかどうか微妙だけど。



2つ目の杖を取り出す。雷の杖だ。


雷と言えば電気だよね。電気と言えば家電。私たちが最もその特性を生かし享受(きょうじゅ)してきたものだ。使えれば応用範囲が増えるだろう。期待が高い。


ピリッと来た。うん。それだけ。スーパー銭湯の電気風呂より弱いかな。よく考えてみれば電気を使わなくても火はつくし、浄化の魔法で洗濯機も要らない。


だいたいテレビも携帯電話もインターネットも発信する人が居るから楽しめるのだ。乾電池が出来ても嬉しくない。



最後の杖だ。今回はこれに最大の期待をしている。これの為にミル君に秘密にしたのだ。


杖と言うよりは手のひらに収まるように作ったソレはオニギリの形をしている。左手の中指と手首に紐で固定できるようにしてある。


足を前後に開き、腰を落とす。


両方の手の平を合わせ、腰だめに構える。


勢いよく両手を開きながら前に突き出し、そして叫ぶ!


南の国の大王の名前を!



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ミル君に秘密にしておいて本当に良かった。



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次回:パン屋姉妹と『ダンジョンに行こう』



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