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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
3章:魔法の道具 ~お店をするために~
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お茶会

--お茶会--


あらすじ:お土産にタルト・タタンを作った。

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「本日はお招き頂きありがとうございます。」


魔道具屋『苔むした巌工房』のシュラン爺さん相手に丁寧に挨拶する。嫌味も交えてニッコリ笑う。


赤い帽子にタルト・タタンが入ったバスケット。おばあちゃんを訊ねる私の姿はまるで赤ずきんのようだ。そうするとシュラン爺さんは悪い狼かな。髪の毛は真っ白だけど。


悪い狼の耳。売れるかな。ミル君に着けて貰って襲われる…。うん。アリかも…。


「ふん、ワシは呼んでないわ。」


不機嫌な顔で仁王立ちになるシュラン爺さん。


「そうですね。旦那様には呼ばれていませんよね。奥様にお呼ばれされているんですよね。奥様と2人だけで美味しいお茶菓子を食べたいので、クソジジイさんはさっさと取り次ぎをして下さいませんか。」


悪態を吐くシュラン爺さんに嫌味は続行される。


金貨を貯めるのにどれだけ苦労したか。たまたま猫耳がヒットしてくれたから良かったものの、ホットドックだけなら来年、いやもっと時間がかかっていたかも知れない。


「ワシの分の茶菓子は無いのか?ふん、ケチ臭い黒猫だ。」


「あら、奥様に愛想をつかれて出ていかれましたか?ご在宅では無いのでしょうか。わかりますわぁ、これだけ愛想が悪くて意地汚いと、出ていかれる奥様の気持ちがよぉッくわかりますわぁ。」


「出ていくわけが無かろう。オマエのように意地悪じゃないからな。」


「あらあら、ダーリンをいじめないでね、黒猫さん。こう見えて、とっても可愛いのだから。油断すると猫耳に触れてきて白い毛がすぐに黒くなってしまうのよ。」


玄関で舌戦(ぜっせん)を続けているとサラさんが出て来てくれた。相変わらず褒めているのかけなしているのかわからない言葉を紡ぐ。心当たりが有るのか、シュラン爺さんは真っ赤になっている。確かに可愛い。


「あらぁ、その年で甘えんぼさんなんですね。」


「そうよ、私も、もうすぐ黒猫にされちゃうわ。」


私が意地悪く笑っているのにサラさんは可愛く笑う、素敵なおばあちゃんだ。


「ごきげんいかがですか奥様、本日はお招き頂きありがとうございます。これを、小さいですけど、がんばって焼いてきました。今日のお茶会の席に置いてください。」


ロールプレイを続けながらタルト・タタンの乗ったお皿を手渡す。実際に小さいとは思うけど、謙遜表現してしまうのが悔しい。


「あらまぁ、ありがとう。ちゃんと3つあるのね。意地悪な黒猫さんね。こちらへどうぞ。」


お皿を受け取りながら、庭のテーブルに案内してくれる。街から少し外れた場所に有るこの工房は山が近くて長閑(のどか)だ。木々に囲まれた庭は綺麗に整えられていて、天気が良い今日はガーデンパーティーにはもってこいだ。木漏れ日が美しい。


クロスを敷いたテーブルにはちゃんと3組のティーカップが用意されている。


「初日ですから少しだけ豪華にしてみました。小さいのを旦那様にどうぞ。」


ここまで上手くからかえると思わなかったので心が痛んだけど、小さいタルトをサラさんが手にするかも知れないので先に口に出した。小さい方を自分の分にしちゃう人っているよね。


「なんじゃ、やっぱりケチな黒猫だな。」


「旦那さんがミル君を贔屓(ひいき)すると思いまして、旦那さんの分を小さくしてミル君の分を大きくしておきましたよ。ちゃんと公平です。」


サラさんが上品に大笑いした。上品に大笑いって出来るんだな。すごい。うふふふふってなってる。


サラさんはちゃっかり大きな方を自分の皿に取り分けていた。



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「あら、香りが良いだけじゃなくて、甘味が強いのね。少し苦みもあるけど、いい感じね。美味しいわ。」


優雅に食べるサラさんはそう評してくれたけど、シュラン爺さんは無言で食べている。


「シュランさん、お口に合いますか?」


「甘いな。バターなんて使って贅沢な。」


もう、作ってやらん。


「今日は最初の日なので頑張ったんです!魔道具の作り方を教えてもらえる感謝を込めて作ったんです。普段はバターなんて使えないですよ。それにオーブンが無いことを忘れていて魔力をたくさん使ってしまったので、このレシピはしばらく封印ですね。」


「馬鹿か!魔力を使い果たして魔法の道具を作りに来るなんて本末転倒もいい所じゃないか!」


シュラン爺さんは残りのタルト・タタンを一気に口に入れ、お茶で流し込んで行ってしまった。


味わって食えよ!苦労が台無しだ。


「ごめんなさいね。アレでも照れているのよ。」


「味わって食べてもらいたかったです。それなりに苦労して作ったんですよ。」


苦々しい顔をしていると、サラさんが謝ってくれた。


「そうね。後でキツく言っておくわ。それより、魔力の残りが少ないのよね。今日は座学で、いいかしら?」


「申し訳ないです。そうしてもらえると助かります。」


なるべく早く魔道具が作れるようになりたいので、実技中心にやりたかったのだけど。魔力の残りが少ないからしょうがない。


「しばらくは座学の予定だったから大丈夫よ。普通に魔法は使えるのよね。」



こうして、お茶会で魔道具を教えて貰う日々が始まった。



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次回:クロスボウの『実演販売』



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