表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
3章:魔法の道具 ~お店をするために~
27/93

タルト・タタン

--タルト・タタン--


あらすじ:お茶会に呼ばれた。

--------------------------------------------------



朝日が昇り、新しい1日が始まる。


魔道具の作り方を教えて貰える新しい朝だ。今までの成果だと思うとニヤニヤが止まらない。


朝食を食べ終えたら市場まで足を延ばす。朝の市場はミル君とお昼から来る時より混んでいる。人ごみを掻き分けながら目当ての食材を探す。旬には少し早い気がするけど有るはずだ。


この前、パン屋姉妹にジャムにして食べさせてもらったし。


青りんご。


そのまま食べると酸味が強くて少しボソボソする。だけど、ジャムにするとこの酸味が何とも言えないコクに代わる。皮の青臭さが爽やかさに代わる。料理って不思議。


市場にはダンジョンで獲って来ただろうモンスターの肉や、近隣の村から持ってこられた野菜が並んでいる。人垣の間からあちこち覗いてみる。今日は売っていないのかな。


少しずつ秋に近づいている。知らない野菜も増えていた。売りに来る人の持てる量も限られているから、今日は持って来なかったなんて事もある。


お、有った。小ぶりな青リンゴが山積みになっている。



--------------------------------------------------



白猫ばあちゃん、もとい、『苔むした巌工房』のサラさんの『お茶会』に呼んでもらえたのだ。なら、お茶菓子くらい用意するべきだろう。最初くらい。


だけど、志は低い。


私の知ってるお茶受けって作れるものが少ないのよね。


なにせ、乳製品が高いのだ。ダンジョンで狩れば肉は取れるのだから、わざわざミルクのために牧畜をする人がいない。モンスターのミルクなんてものを絞る人もいないのだろう。と言うかモンスターからミルクが出るのだろうか?


近くの村でも家畜なんて畑を耕すのに数頭飼っているだけなので、ミルクも市場には滅多に出てこない。


ダンジョンに出稼ぎに来る時に、たくさんの家畜を連れて来ることはすごく大変だ。豊かなダンジョンの恵みとは言え、たくさんの家畜の分まで(まかな)えない。


乳製品のほとんどは、もっと遠い村からの輸入に頼っている。新鮮なミルクは馬車での移動に耐えられないので、まず入ってこない。行商でもたらされるのはチーズやバターなどの加工品ばかりだ。


運搬の時に浄化の魔法をかけてどんなに菌を排除しても、馬車の中でミルクは熱で傷んでしまうらしい。それに前の世界のバターってラクダに揺られて作られたのが最初じゃなかったっけ。


ミルクは無いしバターも高い、私が知る洋菓子の類いが作れない。


ケーキもシュークリームも食べられない。

パンにバター?入って無いよ。

それでも天然酵母に賭けたさ。


少しでも美味しいパンが食べたかった。主食だし。最近はパン屋のパンが食べられるけどね。


そして、美味しいパンより入手しにくいのが、ミルクを使ったお菓子なのだ。


どの道、ミルクは手に入らない。生クリームが恋しい。


ホットケーキを生クリームに浸けて食べたい。



今回はお礼も兼ねているので贅沢にバターも使おうと思う。金貨10枚が浮いたと思えば安いモノだ。


市場で買い物ができる幸せ。見てるだけじゃないよ。買えるんだよ。



--------------------------------------------------



作るのはタルト・タタン。


カラメリゼしたリンゴのタルトだ。失敗が成功に繋がったお菓子、サイモンさんに依頼したワゴンが失敗だとは思わないけど、猫耳成金な今の気分には合っていると思う。


ありがとうステファニーさん!ありがとうホテル・タタン!


小麦粉と水とバターを()ねて生地を作る。分量適当。お菓子は分量が命とは言うけれど、細かいレシピまで覚えているはずもない。できれば良いんだ。美味しければ勝利だ。


それに前の世界の一般家庭で使うようなバネ秤が無いからね。いちいち天秤を使うのも面倒だ。


麦芽糖とバターを炒めてソースを作る。砂糖じゃないけど何とかなるだろう。甘いし。生地を形成してスライスした青リンゴを乗せてソースをかける。うん、それっぽくなった。タルト生地だと膨らませないで良いから楽だよね。


そして、あとは焼くだけだけど…。


オーブンがない!!


だいぶこちらの世界に慣れていたのに失念していた。


この家のキッチンにはオーブンもパン焼き竈もない。


コレットさんはパンを公共のパン焼き竈で焼いていた。


予約制なので、今からだと間に合わない。


甘い物が私の判断を狂わせたのだ。チクショウ。これじゃクッキーも焼けないじゃないか。


仕方がないので暖炉に盾の補強用の鉄板を入れてタルトを乗せる。このまま材料を捨てるのはもったいないし、どうせ盾なんてめったに売れるものでもない。後で(みが)いておけば大丈夫だろう。


ダメだったら…サラさんには麦芽糖でも丸めて持っていこう。



意識を集中して魔法で火を操って、タルトをぐるぐる巻きにする。ゴウゴウと巻き上がる炎が輻射熱の代わりだ。カラメリゼの為にタルトの上側に火が多くなるように調整する。


時期的に涼しくなってきたとはいえ、渦巻く炎が熱い。オーブンなら壁でこの熱さも(さえぎ)れるのに…。ソースを焦がすことが目的のお菓子で良かった。ちょっと失敗してもそういう食べ物だと言い切ってしまおう。


かなりの時間を火の操作に費やし魔力が切れそうになったときにソースの焦げる香ばしい匂いがしてきた。うまくいったことにひたすら安堵する。魔法万歳。


ちょっと小さなタルト・タタン♪

ちょっぴり焦げたタルト・タタン♪

初めてだからご愛嬌。♪


5つに切り分けるのは大変だ。均等に切れない。ミル君>>サラさん>コレットさん>私>>シュラン爺さんの順で小さくなるのは仕方がない。そう、仕方がない。サラさんよりミル君の方が大きいのも仕方がない。



子供にお菓子は大事だよね。



--------------------------------------------------

次回:『お茶会』に呼ばれて。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ