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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
3章:魔法の道具 ~お店をするために~
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弟子入り

--弟子入り--


あらすじ:猫耳フィーバー

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「こんにちは、ごめんください。」


やって来たのは魔道具工房。


シュラン爺さんとサラさん夫婦がやっている『苔むした巌工房』だ。


「なんじゃ、黒猫か。頼まれていた仕事はまだできてないぞ。それよりミルはいないのか?」


白髭のシュラン爺さんが出迎えてくれた。この人はミル君を可愛がっている。子供が好きらしい。


そのくせ自分の子供に魔道具の作り方を教えなかったので、孫に会わせてもらえないのだ。自業自得。


黒猫はもちろん黒い猫耳が付いた帽子を被った私の事だ。街の真ん中で通りすがりに爆笑しやがった。


ミル君の前で。


奥さんのサラさんが猫耳を着ける様になった時から、黒猫呼ばわりされるようになった。


もちろん猫耳は爆笑された仕返しに、私がサラさんにプレゼントした。ばあちゃん白猫カワイイ。


「弟子入りに来ました!やっと約束の金貨10枚が貯まったので。」


グイッと金貨の入った皮袋を押し付けてやる。


「本気にしとったのか、あんなこと。嘘に決まってるだろう。弟子を取るのに金も取るなんて聞いたこともないぞ。」


「今の仕事も続けたいし、こちらが無理を言っているのだから当然だと思いました。技術を頂くんですから。」


朝のホットドッグ屋は止められない。看板娘としてホットドック屋をしているから『猫の帽子屋』のお店にもお客さんが来てくれている気がする。


お店の知名度も少しずつ上がっていると思うけど、まだまだ不安だし、結局のところ武器屋だけでは成り立っていない。猫耳を買いに来たついでに見るって感じだ。


それに失敗して塩スープに戻るのは何としても回避したい。



そもそも普通の弟子なら弟子入りしたお店に入り仕事をしながら技術を学ぶ。


『山鹿の角工房』の中2病のケント君(14)だって朝晩工房の掃除をして、サイモンさんの工具を整えたり、その日の材料を出したりしている。


ケント君を見に行ってるんじゃ無いからね。朝のホットドッグ売りのついでに見かけるだけだからね。


「オマエが来るとミルが来なくなるだろう!」


ぐぐぐ、確かに。お店の用件は私がことづかれば良くなる。ミル君がわざわざ来る必要はなくなる。ミル君カワイイし。会えなくなるのはツライだろうな。


「私が魔道具作りを教わっていればミル君も興味を持って習いに来るかもしれませんよ。」


「だから、教える気は無かったって言っているだろう。お前に教えなければミルもいつも通りに来てくれるさ。」


「だったら、ミル君が来る用件を全部私が引き受けても良いんですよ。私ってば居候ですから。そういう雑用こそ私がやるべきでしょう?」


「ぐぐぐ。ミルが来ないなら『猫の帽子屋』に魔道具を売ってやらん!」


「それをして困るのはミル君ですよね。」


にらみ合うシュラン爺さんと私。


「まぁまぁ悪態ばかりついちゃって。ホントはねアマネちゃんに売れない魔道具屋なんてさせたく無いのよ。息子も孫もぜーんぶ追い出しちゃったんだから。」


白猫ばあちゃんことサラさんが穏やかな笑顔で割り込んでくる。黒いトンガリ帽子と白い猫耳が違和感なく似合っている。上品だ。


私が贈ったのは白耳カチューシャだったので、自前で作ったのだろう。意外とオチャメさんだ。


「うるせぇな。魔道具なんて大層なのは名前だけで、たいしたこともできねぇ。魔法が使えればそれで良いだろう。」


魔道具の社会的地位は低い。なぜなら魔法が有るから。


そして、魔法の社会的地位も低い。なぜならたいしたことが出来ないから。


前の世界の物語に出てくるような大魔法どころか、ファイヤーボールすら実用化されてない。狩りには使えないのだ。


魔法とは生活の中では便利だ程度の役割しかもたない。魔道具なんて魔法の補助として使われているだけだ。


魔道具を使わなくても魔法があるし、私も魔法に慣れるまでの補助としては使っていたけれど、最近は魔道具をまったく使っていない。


魔力を節約したいとか、魔力が不足すると言うことも普通の生活ではめったに無いし、不足したなら休憩して回復を待てば良い。魔道具を取りに行く方が面倒だ。


火力を長時間安定させたいとか、2つの魔法を同時につかいたいとか、そう言う時には使用するかな。あんまり無いけれど。


一般に使われている魔道具は、料理に使う家庭用コンロ。水を出す蛇口代わり、扇風機代わりの送風機など単純なものだ。それも有れば便利だけど、無くても全く困らない。なぜなら魔法があるから。


だからシュラン爺さんの言葉は正しい。売れない。大きな街でも数軒しか魔道具屋はない。


私が魔道具に固執するのは、魔道具の女神様に呼び出された事だけじゃなく、元の世界の家電に慣らされていてこの世界では不便なことと、可能性が解っているので面白そうだからだ。


『高度に進化した技術は魔法に見える。』

ならば、高度に進化した魔法はどうなるのか?ワクワクする。


そして、なによりドラゴン語が使えるというアドバンテージ。

少なくとも氷の魔法が使えるのは私だけだ。現状ではコップの水に氷が浮く程度だけど。


来年の夏こそクーラーを開発したい。


暑い夏はまっぴらだ。


「あんなクソジジイほっといて、明日から私の所に遊びにいらっしゃい。お茶会をしましょう。…話題は魔道具の作り方で良いかしらね?」



白猫ばあちゃんのウィンクが眩しい。



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次回:『タルト・タタン』でお茶会に。



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