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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
2章:普通の道具 ~明るい生活のために~
24/93

猫耳帽子と猫型ワゴン

--猫耳帽子と猫型ワゴン--


あらすじ:デーツ君(7)がかわいかった。うぇへへ。

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「ホットドッグいかがですか~、『猫の帽子屋』のホットドッグで~す。」


注目された。


2度見された。


恥ずかしい。


いつも通りのダンジョン前の広場。夏の朝日に新緑の風が心地いい。


広場にはいつも通りにダンジョンに向かうむさくるしいオジサンたち…もとい、勇敢な冒険者達が今日のお肉…違った、冒険の為に入念に準備をしている。


そんな中に現れた真っ赤な少女。…私だ。


真っ赤な鍔広(つばひろ)トンガリ帽子には黒い猫耳が付いていて、真っ赤なケープには『猫の帽子屋』の看板の絵描かれている。目立つ。


こうなったら靴も真っ赤にしてやろうかしら。


基本的に冒険者達は目立つ衣装を好まない。


狩りをするにも採集をするにも目立って良いことは無い。見つかりやすい衣装はモンスターや動物から発見されやすくなってしまって、狩るにしろ逃げるにしろ難易度が上がる。


私だって、こんな派手な衣装の人間が寄ってきたら逃げるわ。


そして、何よりオジさんが多い。


街の奥様もそれなりにダンジョンへは行くけれど、固定で冒険者をやっていて毎日お肉を狩ってくるのはやはり男の人が多い。だから茶色か良くても緑が基調のオジサンが量産される。


彼らが行く10階までは比較的安全なだし日帰りをするためにも、鉄の防具なんて重たいものを身に着ける人はいない。精々革の胸当てとか小手くらいかな。


今までも私が村娘Aの格好をしているだけで、それなりに目立って居たのだ。白いブラウスに籠をもった姿だけで目を引いていたのだ。


売り子として目立つために奮発したシンプルな白いブラウス。それだけでも売れ行きが伸びた。


そこに来て、赤い帽子に赤いケープ、黒猫を象ったファンシーなワゴン。見た事のない奇抜な恰好。その上、黒い猫耳。猫尻尾まで付いている。


サイモンのクソジジイ。


あのクソジジイの考えたこの尻尾が妙に便利なんだよ。単なる尻尾のアクセサリーとしてだけじゃなく盗難防止に役立つ。


ちょっと長めの尻尾の根元をスカートに挟んでおいて、反対側をワゴンの持ち手と絡ませておく。するとワゴンが動くと尻尾が引っ張られて私に教えてくれる。


坂道でワゴンが勝手に動いてしまった時にも気づけるし、意外と便利なんだよ。


だから外せないんだよ。


ワゴンの持ち手も尻尾の形をしているから尻尾と尻尾が絡まって見えてとってもラヴリー。


この繊細な気配り、とうてい筋肉オヤジが造ったモノとは思えない。


まぁ、このワゴンを盗むようなモノ好きが居るか解らないけど。



3度見された。


「どうしたんだいその格好は?」


常連さんの1人が挨拶もなく声をかけてくる。いつもは挨拶してくれる人なのに。


「サイモンさんのトコで、ワゴンを作ったらファンシーにされて、ラブリーなオマケを付けてくれました。」


サイモンさんの性癖にしてやる。


店の名前を出さないのは武士の情だ。交友が狭いとはいえそれなりの大きな街だ。サイモンさんの事を知らない人もいるかもしれないし、同じ名前の人も居るかもしれない。


「サイモンってあの『山鹿の角工房』のか?確かにあそこの奥さんもカワイイフリフリ着けていることが多いな。アイツの趣味だったのか…。」


バレてる。


しかも奥さんも犠牲者だったのか。今度、奥さんのお尻を確認しておこう。尻尾が付いているかも知れない。


「猫の耳とは…アリだな。いや、何でもない。カワイイよ、似合ってる。そうだないつも通り、ホットドッグを2つくれ。」


今度、猫耳カチューシャを商品ラインナップに入れよう。そうしよう。犠牲者を増やそう。


いくら目立つとはいえ恥ずかしい。最初の犠牲者が私だって判れば宣伝の一つに使えるかもしれない。そうしよう。


顔に出さないように気を付けながら決意を固めた。


「新発売のジャムサンドもありますよ。『さすらわない雲亭』のジャムです。あと、ワゴンを買いましたからね、カラシ菜の増量サービスも始めました。」


ワゴンのお陰で出来ることが増えた。


バスケットの時は片手が(ふさ)がっていたので、自前の包み布を持ってきてくれたお客さんのために、包みを開いて入れ替えするのに苦労してたんだ。


ワゴンだと両手が使えるから便利。


包みを開いてトングでカラシ菜を増量することだって苦にならない。



「じゃ、ひとつはジャムサンドで、カラシ菜も試しに増やして見よう。」


思った通りホットドックで慣れた人はジャムサンドでも興味を持ってくれた。それにパン屋のジャムはひと味違う。私の作ったのより美味しかった。


森の恵みの薄い甘さのジャムより美味しいよね。


「いつも、ありがとうございます。」


似たようなやり取りを何度も繰り返す。その度に衣装の事を聞かれて顔から火が出そうなほど恥ずかしかったけど、今日もホットドッグは完売だ!


ちなみに、マントと帽子を着けないと言う選択肢は無かった。


大の男達の中で小柄な私は目立たないし、何より村娘Aの姿だとファンシーな手押し車に負けてしまう。


そこまで見越したかのようなサイモンのセンスだけは素晴らしいと思う。


デザインは気に入っているのだよ。デザインは。私が恥ずかしいだけで。



後日、商品化した猫耳カチューシャはオジサン達にバカ売れした。



オジサンって…。



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次回:新章/約束の『金貨』



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