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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
2章:普通の道具 ~明るい生活のために~
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ホットドック教室

--ホットドック教室--


あらすじ:クロスボウ作りを相談したら怒られた。

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今日の午前中はホットドッグ教室だ。


今度からパン屋さんに作ってもらえるようにするために、ミル君に店番を任せてパン屋『さすらわない雲亭』に向かう。


今日はコレットさんも、ちょっと遠くに仕入れに出ているのでミル君が独りだ店番をしている。ちょっと心配。とはいっても今までも何度も独りで店番していたし、私がいても役立たずだけどね。


店に入り挨拶をすると工房に通された。結構広い。


アズリさん夫妻と15歳を筆頭に3人の娘さん。1人の息子ちゃん。

息子ちゃんデーツ君(7)かわいい。


違う!ショタコンじゃない。


繰り返す、ショタコンじゃない!


アイランド型の作業台に材料を並べていく。時期的にずれているカラシ菜なんかはダンジョン産の物を冒険者のオジさんに採って来てもらった。自分で採りに行けたらタダだっただろうに。悔しい。


早速ホットドック教室を開始する。


「まずは、玉ねぎを刻んでドライトマトと牛脂といっしょに茹でます。水は焦げ付き防止のために入れるので少なくて良いです。しばらくすれば野菜からも水分が出てきますから。有ればセロリとかセリもとかも入れれば美味しくなると思います。」


今日のトマトは自分で栽培したものを使っている。


ドライトマトから採取した種を庭に埋めて栽培した。テレビで水をやらない方が甘くなると聞いたことがあったので、あまり水をあげなかったのだけど、思った以上にゴロゴロ生った。


途中で間引いた苗も森にも植えたのでかなりの量がある。今年の冬はトマトを買わずに乗り切れそうだ。


パン屋の家族も一生懸命に聞いてくれている。トマトの味見でデーツ君が眉を顰め(しかめ)てるのが可愛い。


ミル君は顔に出さないようにするからね。何となく分るけど。3歳の差って結構あるんだなって感心する。


苦手なキノコを食べてポーカーフェイスを気取るミル君が可愛い。


「煮込んでいる間にカラシ菜の塩漬けを紹介します。普段は漬けておいたのを取り出すだけだけど、一応作り方を説明しておきますね。今回は葉の部分だけ使用しているんですけど、種も入れると辛みが増します。あるいは種だけを使う方法もあります。」


カラシ菜の塩漬けは苦肉の策だ。浄化の魔法で腐りにくく出来るとは言え、葉モノは長持ちしない。本来のマスタードはカラシ菜の種を酢漬けにしたもので、葉の部分は使わない。粒マスタードの瓶を見ればわかるだろうか。


種は採れる量が少なかったので葉の部分を使用してたのだけど、葉の部分を酢漬けにすると水っぽくなって持ち運びの時に汁がこぼれそうだった。なので仕方なしに塩漬けにした。


世の中には沢庵を入れたパンも有ることだし大丈夫だろう。


「マーガリンをパンに塗ります。バターが有ればバターでやると良いですけどコストがかかりすぎますよね。」


「マーガリンを使うのはなぜかね?」


「風味を出す意味もありますけど、パンが汁気を吸ってしまうのを防ぐ役目もあります。」


「油なら他の物でも代用できるかもしれないな。背油とかはどうだろう。」


「コクが出るかもしれませんが、舌触りが悪くなりませんか?」


いろんなアイディアが出るのが面白い。


「ケチャップを先に塗るのは汁が漏れないようにするためなので、店売りなら後からかけた方が見栄えも味も良くなると思います。」


「店売りにするなら、もう少し鮮やかな色に出来ればいいね。」


「パセリのみじん切りはどうでしょう?香りが付いて清涼感が出ますよ。」


ひと通り作ると試食を兼ねた質問会が始まる。


紅茶が出る。久しぶりのお茶の味。美味しい。『猫の帽子屋』ではハーブティーばかりだったからね。


ワイワイと改善できそうな点、変えたい点があげられる。


今まで作っていたホットドックはありあわせで作っていたから毎回味が違っていた。森の恵に頼った部分も有ったし、トマトも流通量が少なかったので色々なお店から買っていたしで不安定なのだ。少しずつ味が違う。それに素材の状態でで長期保存しやすいものを選んでいる。看板商品はなるべく同じ味がいい。


これから材料を安定して購入できるなら、変えられる所はまだあると思う。


毎日違うものを(はさ)んで飽きないようにするのも良いかも知れない。あとはアズリさんにお任せだ。


「一番簡単なのはジャムパンですね。」


「食べ歩くには手軽で便利。疲れて甘いものが欲しい時には良いな。しかも作りやすい。なるほどな。」


最後にジャムパンについて相談したら悔しがられた。パンにバターとジャムを挟むだけなので簡単なのだけど、意外と売られていなかった。


私が売り物にしなかったのは見栄えが貧相だからだ。知らなきゃ普通のパンにしか見えない。食べて貰えれば驚くだろうけど、買ってもらうまでが大変だろうと思って止めておいた。


ホットドッグ教室を終えて。5個のホットドッグを包んで貰う。木工屋『山鹿の角屋』に差し入れるつもりだ。


カラシ菜は増やしてないよ。ケント君(14)も悪気が有ってやったわけじゃないだろうし。


この時間ならオヤツにでも食べてもらえるかな。


ついでに加治屋さんに拉致されて回収できなかった手押し車も引き取らなきゃならない。


あの日はゴルドさんから怒られて疲れて帰ってしまったんだ。



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「こんにちは、これ売り物で申し訳無いですけど。」


「おお、悪いな。ケントのヤツが食ってるのは見ていたけど、分けてくれなくてな。ケチなヤツだよな。」


『山鹿の角工房』の工房長、サイモンさんが笑った。買いに来てくれれば良いのに。


「この間のワゴンを引き取りにきました。代金はこれで。」


硬貨の入った皮袋を渡す。


「おお、忘れてた。支払いがまだだったな。そうだ、これはオマケだ。」


真っ赤な鍔広(つばひろ)トンガリ帽子を渡してくれた。


まるで『猫の帽子屋』の看板の猫が着けている物のようだ。


そして帽子には黒く艶やかな猫耳が付いていた。


ついでに尻尾もくれた。



どんだけファンシー好きなんだよ!この筋肉オヤジは!



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次回:私と『猫耳帽子と猫型ワゴン』



カラシ菜のホットドックはでっち上げレシピです。


この世界で作っても美味しいとは限らないのでご注意ください。

異世界のカラシ菜だと美味しいんだよきっと。

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