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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
2章:普通の道具 ~明るい生活のために~
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ナニコレカワイイ

--ナニコレカワイイ--


あらすじ:テリヤキは好評だった。

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注文してから5日でワゴンが出来上がったと連絡が入った。ホットドックの移動販売用の手押しワゴンだ。見習いのケント君(14)がもじもじしながら伝えに来てくれた。


もう少し年齢を落としてからそういう仕草はやってくれ。


ミル君に手伝ってもらって仕事を早めに切り上げてワクワクしながら木工屋サイモンさんの『山鹿の角工房』に出かける。


出来上がるまでもう少し時間がかかると思っていたんだけど、かなり早く出来上がったみたいだ。元の世界みたいに複雑な機械なんて無いんだよ。当然手作業で加工している。他の人からの仕事もあるだろうし一品物の翌日配送なんて到底できない。


「おお、来たか!『7歳に勝った賢女』!」


「10歳まで勝ち上がりました!」


エドモンド君(10)には負けたけれど、エミリちゃん(10)には勝ったのだ。マチガイナイ。


「イバれんぞ、ガキに負けているってことは同じだ。まぁコッチだ。付いて来い。」


丸太が置いてある中庭を抜けて工房まで付いて行くと、注文した…ワゴンが…有った。…有ったのだけど…ナニコレカワイイ。


注文する時の絵も全体的に少し丸みを帯びさせたり、『猫の帽子屋』だからって脚の部分を猫脚っぽくデコレーションして可愛くしたのだけど…、出来上がったものは更に可愛くなっていた。


少し可愛くすることで、冒険者のオジサンたちに印象付ける。その程度の可愛さだ。あまりやりすぎると近寄り難くなったり、…なにより私が押しても似合わなさそうだし…。


対して、このワゴンは最初の猫脚を生かして、上面を猫の背を模した様に滑らかなカーブで飾り切りにして、それに続くように押手も猫の尻尾を連想させるように丸くカーブを描いている。


ワゴンの頭に当たる部分には猫耳まで付いていた。そして全体的に濃紺の車体には白い花柄がワンポイントで上品に入っている。


コレをこの筋肉オジさんが作ったのか…。顔中シワだらけで筋肉ダルマで、文字を読めないフリして人を試すような老獪(ろうかい)な人が…、このかわいいワゴンを作ったのか?


そして…私に似合うのか?


サイモンさんの顔をじっと見つめる。目で訴える。


そっと目をそらすサイモンさん。


「ケントのヤツが力を入れててな、これでもかってくらい丸くなった。インスピレーションが止まらなかったそうだ。」


そうか、弟子のケント君(14)の力作か…。中二病が似合いそうな彼が…。


サイモンさんの趣味だったらどうしょうかと思ったよ。こんどケント君に差し入れしてあげよう。カラシ菜をたっぷり入れたホットドックとドクダミ茶を。ふふ。


「花柄より星柄の方が良かったか?俺は星柄の方が似合うと思ったんだがな。その黒い髪には。」


花も星も関係無いけど。


「いえ、柄まで入れるつもりは無かったので柄が入っているだけでもびっくりです。形もすごい個性的で…カワカイイデスネ。」


少しくらい発音が変になっても仕方ないだろう…。ファンシーすぎて私がこれを押す未来が見えない…。


「気に入らなきゃ作り直させるが?」


いやいや、作り直しをして2台分の料金になるとかシャレにならないから。


「あ、いえ、大丈夫です。これくらいの方が看板として目立ちますし、カワイイですヨ。」


また少しやけくそ気味になってしまった。どうしても私がコレを押すイメージが湧かない。でも、看板としてはとても印象深いと思う。目立つ。


看板としては最適だ。


村娘姿で『猫の帽子屋』の看板絵が描かれた真っ赤なショールを付けて、黒猫をモチーフにしたワゴンを押してホットドック売り。アリだと思う。


それは金髪の美少女とかが押していた場合で、私が押したらどうなんだろう。


ぐぐぐ、悩む。


「良かった。このワゴンは力作だったからな。この足の部分な。ここ、ここな。すげェこだわっててな。本物の猫を参考にしようと思って靴屋の裏の、あそこに猫の集会所が有るんだがな、そこで待ち伏せして一匹捕まえて観察したわけよ。そしたら暴れまわって引っ掻かれてな、でもその時の猫の背中が妙に忘れられなくて、この背中のラインは芸術だと思うぜ。こっちもこだわったからな。そしてこの押手、ここ、この部分、オイ、もうちょっと近くで見てくれよ。この尻尾を押手にするアイディア!これは我ながら傑作だぜ。そう思わないか!」


オマエモカッ!


どうでもいいことを早口でまくし立てるサイモンさん。


顔のシワが多くなったと思っていたけど引っ掻き傷が混じっているのか!


少し呆然としながら適当に相槌を打つ。その間もサイモンさんのワゴン自慢が止まらない。どうにかしてくれ。


「…値段の方はそのままで良いんですか?」


自慢している間にワゴンを押したり引いたり、稼働部分と使い勝手を十分確認してからおそるおそる訊ねた。使い勝手は申し分ない。


まっすぐに押せることはもちろん、思った通りに動いてくれるし、雨が降った時の対策もばっちりだ。元々かなり割り引いてもらっているから多少高くなっても仕方ない。


「もちろんだ。仕事としてもかなり楽しめた。モチーフの一部を取り入れるってのは面白かったぜ。それにケントのヤツも張り切っていたからな。」


筋肉オッサンがニッカリ笑った。この世界には猫脚の机とか無いのだろうか?



素晴らしい笑顔だった。



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次回:商品開発『クロウボウ』



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