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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
2章:普通の道具 ~明るい生活のために~
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胃袋を掴もう

--胃袋を掴もう--


あらすじ:鍛冶屋さんで怒られた。

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最近ちょっとミル君との距離が離れてきた気がする。


私がこの世界に慣れてきたことが理由の一つだと思う。


街に出て、いかついオジサンたちとも挨拶を交わすようになったし、裏通りは避けるけど、大通りは独りでも歩くようになった。


スラムと思っていた一角も、よく見れば殺風景で壁が崩れているだけで、ゴミも見当たらない。


あの一角はきっとずぼらな人が住んでいるんだ。この世界では壁を直す事くらい魔法でできてしまうもの。


他の区画は看板や花壇が充実していてかなり明るく見えるのも殺風景さを引き立てているんだろう。


独りで街を歩くことが増えた。



私が魔道具屋に交渉に行くようになって、ミル君は近所の子供たちと遊びに行くことが増えていた。


遊びに行くと言ったって、連れ立って森に採集に行ったり、体力作りをしたりと、元の世界とは遊びの感じが違う。ご近所でパーティーを組んでダンジョンに行く、そんな将来の準備のような感じだ。


車も電車も無い世界ではご近所さんとのお付き合いも大切な社交になる。狭い世界。いざとなったら違う人と遊べば良いとか、引っ越すなんてことも簡単にできないしね。



でも、もう少しかまって欲しいと思うのは我が儘だろうか?



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この世界には味噌がある。醤油もある。大聖女オヨネ様の恩恵だ。約200年前に降臨された大聖女様は農業と料理に革命をもたらしたと云う。


彼女の作った野菜は瑞々(みずみず)しく丸々と太り、収穫された野菜は手早く市場に流れるようになったと伝えられる。


ユーハイムの街の市場で売っているのは日本の野菜より小さいと思うけど。日本で売られているのが特別品種改良された物なのだろう。


オヨネ様に新しく利用価値を見いだされた野菜も多くあり、ワラビやタケノコなどが食べられる様になった。


彼女は遠い異国に降臨されたのだけど、彼女の伝説はこの街にまで影響を及ぼしている。


醤油や味噌は珍しい調味料として扱われていて、レシピは肉の味噌漬けとか保存食だけだったりするけど。


食生活にはダンジョンに()る影響もある。


独自の生態系を持つダンジョンは現在22階層まで攻略されており、その5階層には小さな村がある。10階層までは比較的穏やで豊かな恵みがもたらされる。


お肉になるのは普通の動物とは区別されている、モンスターと呼ばれる凶暴な奴だけど、お肉には違いは無い。味はすこし違うけど牛肉と豚肉の違い?くらいだね。


お米と海の幸は無いけれど、ミルクもバターも無いけれど、食べる物には困らない。


それでも塩スープを(すす)らなければならないほど困窮(こんきゅう)していた『猫の帽子屋』はどれ程貧乏だったのかって話だけど。


そんなわけで発動する。


構って欲しい私 + 珍しい調味料+お肉 = 『彼の胃袋わしづかみ大作戦。』



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午後からのミル君とのデート、もとい市場調査を終えると、夕飯の支度を始める。


そして、魔改造が始まる。


『大作戦』と意気込んでみたのは良いけれど、前の世界でも大して料理をしていたわけでもない。家庭科で作ったとか、何となく知っているとかで、知識が有るわけでもない。でも、味を知っている。


ハーブと塩の世界に味噌投入!


キッチンの暖炉に火を入れて、朝食のあっさり塩スープを温める。短時間なら薪より魔石コンロの方が点火・消火が簡単で使い勝手が良いのだけど煮込むのなら薪の方が良い。拾ってくればタダだから。


今は夏で暑いので料理の時間だけ火を着けて居たい。だけど薪はタダで手に入るので我慢して使う。今日の薪は少しだけ。火を操る魔法のお陰で調整がしやすいのが救いだ。


味噌と醤油はホットドックのおかげで来年まで待たずに買えた。嬉しい。


頑張って川魚でダシを取って長ネギとキノコの味噌汁を作った時は涙が出そうなほど嬉しかった。


まぁ、思い出の味ほど美味しくはなかったし、コレットさんとミル君の評判は良くなかったけど。


朝のあっさりスープを肉と味噌で豚汁モドキに味変する。こちらは普通に食べてくれる。お肉ってすごい。


平行してテリヤキモドキのタレを混ぜておく。仕上げは食べる前にする。子供冒険者教室から帰って来ると日が落ちているので、明かり代の節約のためにも手間をかけられない。


暖炉から豚汁モドキの鍋を引き上げて、水を入れたヤカンと交代する。


ハーブを適当に淹れてお茶にする。お店のカウンターにカップを持っていってコレットさんとティータイム。濃い目に淹れたハーブティー。


のんびり内職しながら、たまに来るお客さんの相手をする。


「コレットさ~ん、この槍の手入れを頼みたいんだけど。」


コレットさん目当ての冒険者が来た。ボチボチ冒険者の帰ってくる時間みたいだ。

彼は毎日寄り道せず真っ直ぐ店に来るので、この人が来る頃に出ると子供冒険者教室の時間にちょうど良い。


「じゃ、私はちょっと出掛けてきます。」


どこへとは言わない。恥ずかしいから言えない。バレバレだけど。

冒険者の方は早く出ていけと言う様にドアまで開けてくれる。


今日こそ10才のエドモンド君に勝つんだ!


マイケル君(7)には勝ったんだ。できるはず!志は低い。冒険者の先生も私が激弱なのを知っているので生暖かい目で見守ってくれる。



エドモンド君(10)には勝てなかったよ。



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子供冒険者教室から帰ってくると辺りは暗くなり始めている。



さぁ!今日は照り焼きだ!


さっと焼き上げて、照りを付けよう。香ばしいお醤油にミリンは無いから甘めのワイン。砂糖の代わりにドライフルーツのモドキ料理だけど。


豚汁モドキにも長ネギを添えて。



大きく育ってね!ミル君!



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次回:…『ナニコレカワイイ』。



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