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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
1章:森の恵 ~飢えなくするために~
13/93

虫除け

--虫避け--


あらすじ:ウサギより弱かった。

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まずは虫除けだ。


虫は森に入る時に必ずついて来る。ブンブンまとわりついてウザイ。刺されて痒い。


とりあえず身近な不満を最初に解決しよう。割と簡単に出来そうだし。


記憶の片隅から引っ張り出して来たお婆ちゃんの知恵袋によると、「(かおり)りの強いヨモギやドクダミ、ハーブなんかを(せん)じてスプレーすれば虫除けになって、虫刺されにも効果が有る。」たしか、こんな感じだったはず。


この世界の植物は以前とちょっと違うような気がするから、まったく同じ植物は無いかも知れない。けど、強い匂いと言うのが条件だとすれば、いくつか試せば効果が有る植物も生えて居るかもしれない。


前の世界ではヨモギもドクダミもありふれた植物だったから見たことあるし、ミントくらい有名なハーブなら知っている。と言うか庭に生えていた。


ヨモギもドクダミも庭に邪魔なくらい生えていた。ついでにミントも。どんなに駆除しても、どうしても残ってしまって次の年にはまた生えてきた。根絶するくらい取りつくしても平気じゃないかな。


摘むと手に強烈な匂いが残るくらいだから香草としても使われていたはずだ。それに食事のレパートリーが増えるかもしれない。


何しろ元手が要らない!重要だね。



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森に行く道すがら色々な葉をちぎっては匂いを嗅いでいく。辺りを見回して虫が近くに居ないか確認してみる。虫が付いていたら虫除けとして効果が無いと思うのよ。


「アマネェ置いてくよ。」


ミル君に怒られた。ただでさえ少ない私の収穫量が減るもんね、当たり前だね。


それに無闇に葉っぱちぎってクンクンする私、アヤシイ。


「その隣の木はカブれやすいんだ。気を付けて。」


と思ったら、怒っていた理由が違った。


指が切れやすかったり、カブれたりする葉が有るらしい。(ただ)れたりするものまであるらしい。葉っぱコワイ。葉の裏に付いている虫にも注意。うん。オボエタ。


「ごめんごめん。ねぇ、もう少し匂いのキツイ葉っぱってない?」


謝るついでに、匂いの強い植物の話を聞くと教えてくれる。優しい。


「そうだね。お茶に使っているのとか、ああ、確かあの木の裏に臭いのが有ったっけ。」


(しげ)みの奥の少し湿った場所に案内してくれた。一面に同じ種類の葉が(しげ)っている。まるで紫の絨毯みたいだ。葉を摘むとドクダミの独特な香りに似た匂いがする。間違いないかな?


紫の絨毯を蟻が歩いていたりするけど…家の庭でも蟻くらい歩いていた気がする。どうだったかな。最近は庭もあまり見ていなかったし違うかもしれない。


不安にはなるけど、とりあえず摘んでみることにした。


結果、ドクダミ(?) ヨモギ(?)とミントティーに使われている植物を採取する事ができた。


これで、少なくともミントティーは美味しくなるね。コレットさんのミントティーは薄すぎる。



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天気が良かったのでそのまま陰干(かげぼ)しして、(せん)じてみた。


ドクダミモドキ茶が美味しい。


ドクダミ茶は匂いが独特なので嫌がる人もいるけれど、慣れれば薬になる。解熱、解毒に効果が有って便秘解消で美肌にも良かったはず。


こちらの世界の物が同じとは限らないけど、美味しいと感じるならば何かしらの作用があるかもしれない。


いや、スプレー出来なくて、現実逃避していただけです。スプレーポンプが無かった。前の世界では百均に行けばいくらでも手に入るのに!


一応、スプレー自体は存在している様なんだけどね。香水用のスプレーは、外付けのポンプで空気を送って水分を飛ばす方式で、昔のお貴族様が使っていた様なヤツだ。高いし、かさばる。余計な出費は避けたい。


なので、煮詰めて化粧水の様にペタペタ塗りたくって、森に行くことにした。



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臭い。ミル君が手をつないでくれない。ツライ。


しかも森に近づいた頃には匂いが収まってしまった。街中を臭い匂いを撒き散らして歩いてきた苦労は無駄だったんだ。


匂いが収まったという事はドクダミ汁の成分が揮発(きはつ)してしまったのかもしれないし、汗で流れてしまったのかもしれない。


念のため浄化の魔法で汗を飛ばしてもう一度ドクダミ汁を塗りたくる。ミル君が逃げる。うう。


森に入ってしばらく歩いてみる。効果は微妙…かな。なんとなく虫が寄らない気もする。だけど、これじゃ虫除けとしては売れないんじゃないかな。効果は微妙で汗で落ちてしまうし、匂いも青臭い。


まだだ。まだ諦めてはいけない。虫刺されの薬としてはどうだろうか?


虫に刺された所に塗ってみた。少しスーっとして、痒みが治まった…気がする。


「アマネェちゃん、今日は何をしているの?」


ミル君が心配そうに聞いてくる。


「虫刺されの薬にならないか実験してるの。痒みが治まって綺麗に治るはずよ」


知識を披露するのだ。少し自慢気に答えた。


「へーそんな方法が有るんだ。いつもは浄化の魔法で済ませちゃうからね~。」


なん、だと?


「風の魔法で虫除けしてるし、刺される事も少ないけどね。」


私は…崩れ落ちた。



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ドクダミモドキ茶美味しい。


微細(びさい)な風を体の周りに(ただよ)わせると虫が飛べなくなるらしい。


虫刺されは毒に分類されて、軽い毒だから浄化の魔法で簡単に消せるらしい。


魔法万歳。


最終的には、ハーブティーとドクダミモドキ茶ができただけだった。


そして、ドクダミモドキ茶はコレットさんとミル君には評判が悪かった。


こんなに美味しいのに。



今はハーブのポプリを作って、匂い袋をタンス用防虫剤に出来ないか試している。諦めてはいけない。ポプリの結果が出るのは半年後だろう。


ただの匂い袋としても商品棚に並べてみたけれど、客層がコレットさん目当ての野郎ばかりなので、期待できそうもない。



私の最初の挑戦は終わった。



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次回:『天然酵母』をつくろう!



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― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白かったです。 天音がチートなしで、特別な特技も無い中で創意工夫して頑張る姿が素敵でした。 [気になる点] とっても面白い内容なのに「チート」や「ハーレム」といった要素がないと、…
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