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 とりあえず逃げている。

 連れて行ってもらった屋敷の中をあてもなく逃げている。


 俺を追いかけているのは、俺よりも先にここに住んでいた3人の女の子。


 腰まで届く長い黒髪、赤い瞳をした――剣一姫(つるぎいちひめ)

 日の光に当たればさぞキラキラと輝きそうな金髪碧眼の持ち主――フィリー・ラポーズ。

 過去に怖い思いでもしたのか、真っ白な髪の毛をした――古場佐々子(こじょうささこ)


 どうやらそれぞれ人間族らしいのだけれど、フィリー以外は日本人顔。

 しかも、俺と同じ日本から来たけれど、同じ世界から来たわけではないようだ。

 こういうのをパラドックスとか、平行世界とでもいうのだろうか。

 地球の日本という共通事項はあるものの、世界が違う。

 価値観とか文化的なものは大体同じなようで、ほんの少しずつ何かが違うようなのだ。

 

 一姫曰く、魔物は日本にも普通にいる。

 フィリー曰く、AKIBAは世界屈指の難攻不落のダンジョンだ。

 佐々子曰く、日本の首都は明治の時から大阪。

 

 それが俺があとから聞いた彼女らの世界だ。


 ところで、何故俺が追われているか。

 些細な一言が原因だった。

 ビレンさんにみんなを紹介され、俺も自己紹介を済ませ、色々質問されたり、俺も質問を返していたくだり。


「え、ここにいる全員、自分が勇者とか選ばれたチート持ちだと思って、無謀にも魔物に挑んで殺されかけたの? 確認もせずに? 馬鹿じゃねえの」


 その一言に全員がブチ切れました。


「絶対殺す!」

「殺すデス!」

「埋めたる!」

 

 一姫は刀のようなものを、フィリーはハルバードというのだろうか、槍と斧が一緒になったようなものを、佐々子は薙刀みたいなものを、それぞれ振り回しながら追いかけてくる。


 まず言いたい。お前らそれをどこから出した。

 紹介を受けたとき、あの場にそんなもの持ってきてなかっただろう。

 切れて立ち上がると同時に手にしてたよな。


 やはり知らない建物というのはすぐに行き場をなくしてしまう。

 俺はあっさり捕まり、ぼこぼこにされた。


 場所は変わり、屋敷の裏庭。

 俺は顔だけ出された状態で埋められていた。

 

「馬鹿にしてすいませんでした」

「最後までそのように謙虚な態度に出ていれば良かったのじゃ。最初はおとなしくしておったのに同い年だと分かった途端に態度を翻しおってからに」

「デスよー。初対面で人を馬鹿にするのは一番やってはいけないデスよ」

「佐々子は馬鹿やない、馬鹿やない、アホやけど馬鹿やない」


 何か一人だけ違うようなことを言ってる気がするけれど、これ以上被害を受けないようにしよう。


「出して貰えないでしょうか?」

「まだじゃ。とりあえず、この屋敷でのルールを言うぞ。耳をしっかりとかっぽじって聞くのじゃ」


 ここでの生活費は自分で稼ぐこと。

 月に銀貨2枚をビレンさんに上納すること、いわゆる家賃と食事代らしい。

 最初の一か月は温情で払わなくて良いという。


 通貨は四種類で、交換率はこうだ。 

 銅貨100枚=銀貨1枚

 銀貨100枚=金貨1枚

 金貨100枚=白金貨1枚


 金貨や白金貨は貴族や商人連中しか使わないらしく、民間人レベルだとあまり使用していない。

 一般的な労働者が一か月で銀貨10枚は稼げるそうなので、銀貨2枚というのは無理な金額ではないらしい。農家とか工場のちょっとした手伝いとかでも、短い時間で10銅貨は稼げる。

 休みを考慮しても、一か月で銀貨2枚くらいなら十分に稼げる範囲なのだ。

 

「みんなは何をして稼いでいるんだ?」

「冒険者として、依頼を受けたり、魔物を狩ったりして、金策している」

「最初こそ油断しましたが、今ならゴブリン一匹くらいは倒せますデス」


 ゴブリンって、魔物の中で最弱種じゃなかったっけ?


「そんな危険なことしなくても、仕事の手伝いとかで稼げないのか?」

「……簡単に稼げるからや」

「うむ、別に一度行ったところから『もう来なくていい』と言われたわけではないのじゃ」

「デスデス。お給金よりも弁償の方が多いからやめたわけではないデス」

「ふーん、へー、あーそーなんだー」


 読めた、こいつらポンコツだ。ガラクタだ。

 見た目はいいけど、その他が駄目なやつだ。

 ヒロインでいう、ダメインとか、ヒドインとかいうやつだ。


 俺自身もどうなのか、経験がないからまともな仕事はできないだろうけれど。

 戦わなくてもいいならそれが一番だけれど、俺も同じかもしれない。

       

「じゃあ、今度は俺も連れて行ってくれないか? 俺も稼がないといけないからさ」

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