私達の恋愛~セックス同意書~
未来の私達の恋愛、それは…
セックス同意書
これから私は、彼にセックス同意書を渡そうと思います。
今の時代、セックスをするには同意書が必要なの。
スマホや、ARグラスのお陰で、ネットアプリでお互いが望むセックスの同意書を気軽に作成できるようになったの。
このセックス同意書がない全てのセックスは、犯罪、強制性交罪となって、刑務所に男性は入れられます。
今や、これが世界での常識。
恋人でも、フレンドでも、夫婦でも、セックス同意書を創ってお互いのセックスの同意を求めて、同意書にサインします。
同意書の最初には、かならず、こう記されています。
1,このセックスは、お互いの同意の上ですか? YES・NO
署名
2、これによって犯罪及び、裁判で訴えません? YES・NO
署名
3,この同意書にない行為を絶対にしません? YES・NO
署名
4, 最終確認です。これは女性本人の意思に基づいていますか? YES・NO
署名
では、これより後は、その内容に関する質問です。
ets…
これが今の男女の交際なのだ。
私は、彼にセックス同意書を渡した。
「これにサインしてください」
と、ARグラスでの立体署名を向ける。
彼は「え…」と青ざめる。
「ごめん…ムリ…」
私は、セックス同意書をARから消した。
「そう…か…」
学校の放課後、ビル式の学校の屋上にあるテラスで、遠くの風景を見詰める私。
「アンタ…いきなり、セックス同意書なんて、ムリよ」
と、友人のアキコが慰めてくれる。
私は遠くを見ながら
「だって、何時も挨拶とか、話をしたりして…良い雰囲気だったし…」
アキコが私の頭を撫でて
「あのね。セックスしてくださいなんて言って、セックスしてくれる男なんて、百年前のサルだった時代よ」
私とアキコの空の上に、メタトロン・フレームが飛んでいく。
私は、そのメタトロン・フレーム軍隊が空を走って行く姿を見上げて
「そうだよねぇ…。だって2033年、21世紀半ばだもんね」
アキコは私を抱き締めて
「そうだよ。お猿だった20世紀以前の世界じゃあないだよ」
私はアキコの抱擁に溺れながら
「どうすればいいかなぁ…」
アキコは優しく撫でながら
「まずは、デート同意書からだよ」
私は「うん…」と頷いた。
◇◆◇◆◇◆◇
次の日、何時ものように高校に来ると、何時もの変わらない朝だった。
私のいきなりのセックス同意書の話は広まっていない。
私の背に「おはよう」と彼、シュウくんが来た。
シュウくんは、苦い笑みで
「何かの罰ゲームだったんだよね」
私は、ハッとする。
その反応を見てシュウくんは、ホッした笑みを向け
「なんだ…。そうだったんだ…。そんなの普通、ないよね。みんなには言わないから…じゃあ、教室で」
シュウくんは何時もの優しい笑みをくれた。
私はその背を見つめていると、シュウくんの隣に、クラスメイトのメグちゃんが来た。
メグちゃんはシュウくんの右腕に自分の左腕を絡める。
ふたりは…デート同意書を交わしている。
ウワサだと、セックス同意書は交わしていないらしい。
付き合い出しは、友達の紹介だったらしく。
シュウくんとメグちゃんは、お互いに同意書を交わした。
私は俯きながら教室に向かう。
私とは同意書を交わしてくれない。
デート同意書には、セックスの事は書かれていない。
セックスするには、セックス同意書が必要だ。
デートで良い雰囲気になっても、セックスには、セックス同意書が必要だ。
セックスには必ずセックス同意書が必要だ。
私は、窓の外を見る。バスケ部の顧問のアイ先生が、檄を飛ばしている。
男子達が必死にグランドを走っている。
私は、知っている。
アイ先生は、今、走っている男子達の中で、セックス同意書を交わしている男子生徒がいるのを…。
私達は三年生の前半だ。将来を決めないといけない。
あ、アイ先生が、セックス同意書を交わしている男子生徒の前に来る。
その男子が走らされる。
みんな、アイツ、目の敵にされているなぁ…って男子達は言っている。
でも、私は知っている。
アイ先生と、走らされる男子生徒が、セックス同意書を交わしている。
アイ先生の使いっ走りでかわいそう…と男子達が苦笑いする裏で、アイ先生と男子生徒は、セックス同意書を交わしている。
私は知っている。
アイ先生が、セックス同意書を交わしている男子生徒の成績が良くないとして、週末は自分の家に呼んでいる。
でも、本当は…。
そして、アイ先生とその男子生徒は…将来…。
私は、廊下を歩いていると、仲良く話している男女の生徒がいるのを見て思う。
皆、デート同意書にサインしているのだ。
デート同意書は、学校公認の同意書だ。それには、体と体との触れあいは、握手か腕組みだけ。でも、デートを認める同意書のお陰で、皆が恋を楽しんでいる。
女子の中には、複数人と同意書を交わしている人もいる。
皆、正統異性交遊を楽しんでいる。
これも全て、セックス同意書から始まったデート同意書のお陰だ。
あ、シュウくん…。
目の前からくるシュウくんに、私はデート同意書を渡す。
「シュウくん。デート同意書にサインして」
シュウくんは驚く顔をするも
「いいよ」
ARの同意書を手にして項目をチェックする。
「ねぇ、浅見さん。幾つか…要望があるんだけど…」
私は目を輝かせ
「何?」
シュウくんは、同意書に自分の意見を書き込む。
私はそれを見る。
私は、頭が真っ白になる。
デート同意書には、手を繋がない。腕も組まない。話をするだけ。
私は、その同意書を掴んで瞬きした次に
「これだけでいいの?」
シュウくんは、照れくさそうに
「オレ、メグだけには…特別でありたんだ」
私は思った。
これじゃあ、何時も話しているのと変わらない。
シュウくんに触れられない。
これじゃあ、何時もと同じだよ。
でも同意書には違いない。
私は悲しみを隠して
「分かった。これでデート同意書、締結だね」
一生懸命に微笑んだ。
シュウくんは手を上げて
「じゃあ、よろしくね。浅見さん」
私は手を振って
「うん、よろしくね」
と、微笑みを続ける。
放課後、私は、小石を蹴って帰る。
何も変わっていない。
デート同意書も、一応は、デート同意書だ。
アキコが
「カオルーーーー」
と、私に声を掛ける。
アキコの後ろには、男子生徒が二人いる。
アキコは、二人の男子生徒とデート同意書を交わしている。
そして、秘密で、別の大人の男の人と、セックス同意書を交わしている。
これが私達の恋愛、ゲームみたいと昔の人は笑うわ。おばあちゃんが、セックス同意書やデート同意書の話をすると、瞬きさせて驚き。
「そう…それがカオルの世の中なの…」
私はそれに「うん。便利だよね」って微笑んだ。
便利だけど、どこか不便なセックス同意書。安全だけど、どこか不満がある事。
それが私達の恋。
大人は、安全になったと喜んでいる。
私は、好きな人に…。
気軽になった恋人、でも、それは簡単な一枚の紙で決まるの。
私は辛くて、夜遅くまで街の中を歩く。
幽霊の私は、街の明かりを通り過ぎる。
幽霊の私に、ぶつかる人がいる。
「何するんだよ!」
二人の大人の男の人だった。
「ごめんなさい」
「ああ! それで許されると思っているのか!」
脅してくる大人の男達。
私は青くなって怯えていると
「何をしている!」
別の男性が呼び掛ける。
「あああ! なんだよ!」
と、二人がその男に近付くと、その男の人が上を指差し
「お前達…見られているぞ」
二人は、上を見ると三階の窓の高さにあるそこには、監視円盤が浮かんでいる。
そう、私達の世界は、全て見られている。
家の外は、全て見られている。
そして、警察の車が一台来る。
男達は逃げようとする前に、もう一台が来て止まる。
警察の人が
「悪いが…来て貰うよ」
声を掛けた男の人が
「大丈夫か?」
私を覗く。
男の人が警察の傍に来て何か話している。
警察車両に乗っていた女性警官が来て
「君、ちょっと…来てくれる?」
私は頷いて、女性警官と共に警察に来た。幽霊逃避行は終わりを告げた。
両親も、シュウくんもアキコも皆、私を探してくれていた。
私は、みんなに謝った。
「ごめんなさい」
私は、部屋に篭もって考える。
どうしたら…この気持ちを…。
好きな人に好きってしたいのは、許可がいるの?
ルールがあるの?
でも、ルールのお陰で私は危険な事から守られている。
おばあちゃんの頃は、無理矢理なんて当たり前だったらしい。
そんな獣みたいな昔には戻りたくない。
そんな世界で、女の人が生きていけない。
そんな残酷でヒドい歴史があったから今がある。
でも、この気持ちは…シュウくん…好き。
徹夜して私は考えた。そして…。
一日休んで、次の日、学校の放課後、シュウくんを私は呼ぶ。
「どうしたの?」
シュウくんが尋ねる。
私はARのセックス同意書を向けて
「私とのセックス同意書にサインして」
シュウくんは呆れた顔をして
「また、罰ゲームか何か?」
と、苦笑をする。
私は自分の思いを放った。
「シュウくん、以外にもっと好きな人が出来るまで、私は…シュウくんに、ずっとセックス同意書に締結してくれるまで、諦めない」
私の言葉にシュウくんは、今まで見た事もない驚きの顔をしていた。
ザマーミロ!
読んでいただきありがとうございます。
短編なので、気が向いたら、同じ系列の短編を書くかもしれません。
ですが、未定です。
では、最後まで読んでいただきありがとうございます。