エピローグ・旅の終わり
十五・午後七時十一分 愛知県行きバス内
遼の自首により、ツアーコンダクター不在となったバスは高速道路上を走って出発地、愛知県へ向かっていた。
「なんだかさあ、せっかくのバカンスだったのに、これじゃあいつもと同じだよね……」
バスの前側の席に座っている千尋が隣で本を読んでいる二宮に言った。
「何読んでるの」
「推理小説」
「よくもまあ、今そんなの読めるわね。事件が解決したばかりだっていうのに」千尋は溜息を吐いた。
「……あのさ。さっきからずっと気になってんだけど、大川さん、今着ているその服はなに」
二宮は千尋が着ている水色の羽織を見て、怪訝そうな顔をした。
「なにって、映画村で買って来た新選組の服。格好いいでしょ」
「なんでそんな物買っちゃったの」
「いいじゃない。なんかかっこいいし」
「別に人様の趣味に文句を言うつもりはないけどさ……」二宮は視線を再び読んでいた小説に戻した。
「そういえば大川さん。これから僕、しばらくの間ゆっくり休んで青春を満喫するつもりだから、あんまり事件が起きても呼んでこないでね。推理ばっかりで疲れちゃったから」
「え、駄目だよ。これからうちの署、ニノに色々と捜査の手助けしてもらう事になってるから」
「……誰が言ったの、そんな事」
「誰って、上司の郷家さんだけど。高校生探偵の事件の時の人」
それを聞いて二宮は露骨に嫌そうな顔をした。
「ま、わたしとしても不本意な所はあるけど、これからもよろしくね」
千尋はそう言いながらも、「えへへ」と笑ってどこか嬉しそうな表情をした。なんだかんだで、二宮の事を良いパートナーだと思っているのだろう。
しかし二宮は違った。
「んな、アホな」と関西弁を呟いて、二宮は頭を抱えたのだった。
特別編 「150キロ彼方の証明」 完
この事件は創作であり、二宮浩太郎は架空の高校生です




