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150キロ彼方の証明 ~二宮浩太郎の独断推理ノート特別編~  作者: スズキ
特別編 「150キロ彼方の証明」 VSツアーコンダクター/菅野遼
11/15

十一・証明の鍵



 十一・午前十時四十一分 旅館あさみな別館・うぐいすの間



 遼は二宮に連れられ、彼が宿泊するうぐいすの間の前へ来た。


「本当は現場のつぐみの間を使いたかったんですけど、まだ立ち入り禁止で使えそうに無かったので、ここで実験をします。さあ、中に入って」


 二宮は部屋の鍵を開けて、遼を部屋の中に入れた。


「それでなんですか、その実験というのは」


「昨日お話した押し入れの件、あれが説明できそうなんです」


「あの開けっ放しになっていた押し入れの件?」


「そうです。これで押し入れが開けられていた理由と、どのタイミングでジュースに毒が入っていたかを同時に証明することが出来そうです。解決を早めるためにも、ご協力願えませんか?」


「別に良いですけど、僕は何をすれば?」


「ええと、それはですね……」


 二宮は上着のポケットに手を突っ込み、その中からチューブ状の容器を出して遼に見せた。


「それは?」


「チューブ入りわさびです。さっきレストランの厨房からお借りしてきました。取り敢えず、これをあなたに」二宮は遼にわさびを半ば押し付けるような形で渡した。


「何に使うんです? これ」


「これからですね、昨夜犯人が部屋へ忍び込んできた状況を再現します。菅野さんが犯人で、今渡したわさびを毒だと思ってください」


「ふうん。犯人役か……」遼は不機嫌そうに言葉を吐いた。


「まあいいですよ。それでどこからやれば?」


「まず、天堂院さんと弓野さんが部屋を出た時から始めます。ここは一旦、部屋を出て」


 二宮の指示通り、遼はわさびを持って部屋の外へ出た。


「はい、ここで二人が部屋を出ました。菅野さん。入ってきてください」遼が部屋の中へ再び入る。


「次にジュースに毒を入れる段階ですが、さっき自販機でファンタを一本買ってきました。これに毒の代わりのわさびを入れてください」


 二宮はそういって部屋の片隅に置いてあったファンタを遼に渡した。遼はそれにわさびを注入する。


「……あの、二宮さん」


「どうしました?」


「これ、実験なんだから別に毒を入れる必要は無いんじゃない?」


「まあ、折角借りてきたんだから、ここは使っておきましょう」


 遼はわさびを注入し終え、ファンタを振ってわさびと混ざるようにした。


「すいません、ちょっと席を開けるので少し待っていてくれますか?」


「別に良いけど」


「すぐに戻ります」そう言って二宮は部屋の外へと出ていった。


「大体これ位か……」量は十分にわさびが混ざったファンタを、近くの机の上へ置いた。すると二宮が千尋を連れて部屋に入ってきた。


「ごめんなさい、待たせましたか?」


「いや、本当にすぐ戻ってきたからちょっと驚いた」


「そうですか。なら良かった」


「ちょっと待って、これどういう状況なの」部屋へ連れてこられた千尋は状況が掴めないのか、あたふたしている。二宮はそんな千尋を無視して話を進めた。


「さて、ここで計画通りに事を進めた犯人ですが、ここで一つ予想外の出来事が起こってしまいます。天堂院さん達が戻って来てしまったんです。逃げ道を閉ざされてしまった犯人は一体どうしたか。方法は一つ、身を隠すしかありません。その場所は……」二宮は話しながら人差し指を押し入れに向けた。


「あの押し入れです。あれなら一時的ではありますが、身を隠すことができる。どうぞ、入ってみてください」


「入ってって、あの押し入れの中に?」


「ええ、どうぞ中に、さあ」


 遼は二宮に背中を押され、押し入れを開けてその中に入った。昨夜体験した状況と、ほぼ同じ感じだ。


「完璧です。犯人が部屋で身を隠せたことを証明できました」


 満足げな表情を浮かべる二宮、しかしそれに遼は異議を唱えた。


「確かにこれなら犯人は身を隠せたかもしれない。だけど、その後一体どうやってここから抜け出せるんですか? 少なくとも、事件が起きて僕たちが現場へ来ていた時には押し入れは開いていたのだから、その間に部屋を抜け出していなきゃいけない。しかしそれだったら現場の近くに来ていた宿泊者がその人物を目撃しているはずだ。これじゃあ、方法は証明できたとしても、実際に行われたとは証明できない」


 遼の反論を聞いて、千尋もその意見に加わった。


「確かに、わたしとニノがここに来た時、弓野さん以外この部屋から出た人は誰も居なかったわよ、それっておかしいじゃない」


 それを聞いて、二宮ははあ、と溜息をついた。


「説明できるんだよ、それが。大川さんのお陰で」二宮が千尋を指さした。


「えっ、わたし?」



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