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ああああ  作者: あぐる
6/8

5話 意思の発芽

書きたいことの半分も文字に出来ない...。

ユウキは血溜まりの中心でしゃがみ込んで泣いている。

そんな事、ハヤトは許さない。

人の悲しみを受けて人々に希望を与えるのが、英雄なのだから。

「...マト、ユウキを守れ。」

そうつぶやくハヤトの見る先にいる生物を、マトの眼は誰よりも早く捉えた。

それはティミッドドックの様な複数の魔物が一つに纏められたような醜い生物。

そしてソレの周りにいる複数のティミッドドックたち。

本来、村には魔物が来ない筈であったがその常識はもはやこの村においては通用しないかもしれない。


ティミッドドックの暴走種。

しかしそれらが何故か一つに融合しかけていた。


魔物には通常の魔物に加え、一定以上魔力を溜め込んで自身をその魔力により進化した魔物であり、理性と知識を持った覚醒種、理性と知能を持たず力に溺れた魔物を暴走種と区別していた。

そしてもう一つ。

人智を越えた能力を持つ生物を魔王種と呼んでいた。

もっとも、魔王種には魔物だけではなくむしろ魔族の方が多いのだが。


ハヤトは剣をマトに渡し、ティミッドドックの暴走種へのもとへ向かう。

「後、1つアドバイスだ。

戦ってる間は考えるのを辞めるな。

考えろ、最善の一手を。想像しろ、己の強さを。

そして信じろ。

そうすれば俺たち人間は神にもとどき得る。」

ハヤトは怒っている。

事態を予想出来ずスーンを守れなかった自分の不甲斐なさに。

そしてスーンを殺したのだろうこの魔物に。

「さぁ、覚悟はいいかクソ犬共。」

親友の死にキレているハヤトの動きを、マトは一瞬も見逃さずに視ていた。

そこから始まるのは蹂躙。

最短の動きでティミッドドックの喉を掻っ切る。

それも手刀で。

人間離れしたハヤトの動きは常人には掠れて見えるだろうほどの速さだ。

しかしマトには全ての動きを捉えることが出来た。

ハヤトの動きに同様を見せるティミッドドックの暴走種はほとんど無くなった理性をなんとか保ち、纏まっていた暴走種のうちの1体をマトの方へ行かせて襲わせようとしていた。

ハヤトは当然気付いていたが、それを倒そうとはせずに本体を殺す為に動いた。

__マトは負けない。

そういう確信にも近い感覚をハヤトは持っていたからだ。


スーンがあの魔物に襲われたと分かってから、マトは急に頭が冴え始めていた。

初めてマトの前から人が消えた。

この時マトは初めて死について理解した。

とても嫌な気分だ。

どうしてこうなったんだろう。

あのティミッドドックを__

「殺したい。」

それはマトの口から自然と出ていた。

今まで戦うことに抵抗があったマトだが、その言葉はスッと胸に収まった。

__ぼくは今から、生命いのちを奪う。

この時からぼくは自分と向き合い始めた。

アイツを殺す為には、今までのように戦ったら負ける。

殺す方法は今たくさん見た。

ぼくに出来ることも分かってる。

ならば、るしかないだろう。


マトへ一匹のティミッドドック暴走種が向かってくる。

ぼくにはまだ筋力も能力も何も足りない。

だから、アイツに死んでもらおう(・・・・・・・)

その時のマトの眼にはあらゆるものが見えていた。

ゆっくりと近づいてくる敵の筋肉の動きまでもが。

そしてティミッドドック暴走種はマトに飛びかかる。

その瞬間にマトは後ろへ倒れ込む。

間に合わないなら、そこへ置いておけばいい。

それはマトにしか出来ない絶妙なタイミング。

敵の爪や牙が届かないギリギリを保ち、倒れ込みながら剣の先をティミッドドック暴走種の喉のところへつけて剣を地面と垂直にする。

そしてそのままマトへかぶさるように地面へ着くと同時に、自らの重みによって剣が喉を貫通する。

死骸と化したティミッドドック暴走種の下から抜け出し、その姿を見る。

マトはいろんな感情を含めて呟いた。

「もっと、強くならないと。」

マトのウラヌスに来た時のような弱気な少年の面影はどこにもなかった。



一方で、ハヤトはまだ交戦中であった。

複数のティミッドドック暴走種を混合したような魔物は、増殖し続けていてティミッドドック暴走種をいくら倒してもキリが無かった。

「ちっ!めんどくせぇ。

『空気中に含まれる酸素のみを標的の周囲から移動』!!」

ハヤトは魔法での殲滅に切り替えた。

「カッ...!?」

魔物は全滅した筈なのだが、その中心はまだ動き続ける。

「しぶてぇなクソ!!」

ハヤトの頭に血が登るが、行動は至って冷静だった。

「父さん、ソイツの中に何かあるかも!」

マトの眼は、増殖最中の魔物の中に何かがある事に気付いた。

「ナイスだマト!『空気中の酸素と水素から水を生成、圧縮し標的を貫け』!!」

魔法により集まった気体は小爆発を繰り返し水を作り出す。

そして作られた水は魔物に向かって一気に解き放たれた。

水は魔物に当たってその肉体をも貫き始めた。

そしてついに何かが弾けた。

その途端魔物は動くのを辞め、遂に倒れた。

辺りにはもうマトたち3人の他に気配は無い。

やっと終わったとハヤトは息を吐いた。

だか、まだ魔物を倒しただけだ。

ユウキの心は癒えているはずが無かった。

マトの戦闘短すぎでしょうか

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