3話 ウラヌスの地で
マトが全然戦わないぞ?おかしいな...。
村を離れて2日後、マト達はウラヌスへ着いていた。
道中、ハヤトが見せた魔法の事はもちろん秘密である。
あの後にも魔物はいたため、マトとの訓練として2人で戦ったりもしたおかげでマトの機嫌は始めの時ほど悪くなる事は無かった。
「よし、やっと着いたな。
今日は疲れてるだろうから、明日おっさんの家に行くか。」
「じゃあこれからどうするの?」
そう尋ねるとハヤトは目の前の建物を指差した。
「ここは冒険者ギルド。
今のうちから登録して置いても損わねーだろ。」
「冒険者ギルド!!!」
マトは目をキラキラ輝かせてカイトを見る。
冒険者ギルドは学園と違い、稀にだが人間以外の種族がいる国とは違う規則で成り立っている組織である。
大きく違うところは、“種族による差別禁止”というところ だろう。
また、国とは違う規則とは言っても国と近い場所にあるため、ギルドと国は協力的な関係である。
ハヤトとマトが木の扉を開けて中に入ると、すぐに熱気に包まれた。
扉から1番近くにいた受付の女性に声をかける。
すると愛想の良い笑顔を浮かべて、お馴染みの挨拶をした。
「ようこそ、冒険者ギルド ウラヌス支部へ!
初めての方ですね?」
初めて会った人か見分けるこの女性は大した記憶力だろう。
それに気を止めた様子もなく話を続ける。
「こいつの登録をしたいんだが。」
そう言ってマトの頭の上に手を乗せる。
「分かりました、登録ですね。
では年齢と名前と得意武器を教えてください。
また他に書きたい事などもあればお願い致します。」
そう言いながら紙にペンで何かを書き出していた。
「名前はマト、もうすぐ7歳だ。
武器は剣、他はいいや、なんとかなるだろ。」
最後にそこの魔道具の前に立って下さい。
受付の女性が言っていたところには、2メートル以上の大きさの魔道具があった。
魔道具とは長時間魔力を受け続ける事で特殊な能力を持った道具のことである。
そこに立っているろカシャッという音が聞こえた。
「はい、ありがとうございました。
今のはマトさんの情報を保存するための魔道具です。
万が一死亡していまった時に分かる仕組みになっています。」
今更だが、この世界にはあまり普及していないが電気を使った道具が存在するする。
魔力が存在するこの世界で科学が発展したのは、人間には魔力が使えないからだろう。
魔法と科学がバランスを保って共存していた。
「登録が完了しました!
こちらがギルドカードとなっております。」
ギルドカードは身分証にもなるため、そのためだけに登録する人も少なくは無いがランクがあり、F~Sに上がるに連れて受ける待遇もグレードが上がっていく。
最下位であるFランクはほとんど持っていなくても同じようなものであった。
マトは出来上がった自分のカードを眺めていた。
「まぁ、今作っても当分使わないけどな。」
その言葉を聞いてマトは「嘘でしょ...?」という顔でハヤトを見たが、声には出さなかった。
少し落ち込んだマトを連れて冒険者ギルドを出ていく。
その日はそのまま宿に泊まることになった。
________________________
次の日の昼、ウラヌスの商人の家にマト達は来ていた。
マト達を迎えたのは2人の親子。
子どもの方の名前はユウキ・パンリッド。
その父親の名前はスーン・パンリッドだった。
ハヤトがこの世界に転移した時に初めてあった人物であり、この世界に慣れるまでお世話になっていたのだ。
ちなみにユウキの名付け親もハヤトである。
スーンは数少ない英雄ハヤトを知る人物の1人であった。
「やぁ、遠いとこからよく来たね。
歓迎するよ。」
「久しぶりだなおっちゃん、9年ぶりか。」
ハヤトはスーンと話し出す。
「君は相変わらずだねハヤト。
でもそうだなぁ、もうおっさんと呼ばれても仕方ないかな。」
ハヤトは27歳、スーンは39歳だ。
ハヤトからしてもかなり年上と言えるだろう。
だが外見と言葉使いは39歳とは思えないほど若く感じた。
「そこの可愛らしい子どもが君の子どもかな?
こちらは僕の子のユウキだ。
仲良くしてやってね。」
スーンは優しい笑顔でこちらに話しかけた。
「よろしくね、マト。
ボクはユウキだよ。」
ユウキの口調はまるでスーンを真似したようであった。
ユウキとスーンもかなり親子仲が良いのだろう。
「スーン、母親はどうした?」
先程までと違い、真面目な顔つきで尋ねるハヤト。
「彼女はユウキを産んだ時に亡くなってしまったよ。
聖女である彼女は元々短命だったんだ...。」
ユウキの母は邪神の封印を見守る聖者に選ばれていたのだが、子どもを産んだ事で体力を失いすぎてしまったのである。
「......ウチと似たようなもんか。
悪かったな、本当に。」
「いいや、ハヤトが謝ることではないだろ。
仕方が無い事だったさ。」
大人2人の沈んだ空気に、子ども達も黙ってしまった。
それに気付いたスーンは明るく振る舞う。
「僕達はまだ話したいことがあるから、ユウキとマト君は一緒に遊んできなよ。
夕飯も作るから、夜までには帰ってきてね。」
スーンから言われた通りに、マトとユウキは家を出ていった。
思ったより仲良くなってくれそうな子ども達に安心しつつも、きっと居ずらく感じていたのだろうと反省するスーンだった。
ほとんど話と説明回になってしまった