2話 小さな冒険
他の投稿者さんってどうやって名前とか地名決めてるんでしょうか..
ある日の午後。
それは、マトとハヤトが稽古を本格的に始めて数ヶ月後の事だった。
素人同然だったマトはハヤトに剣技を教わりながら体力を向上させていたのだが、強くなった実感が湧かずに思い悩んでいた。
そんな時、この村を出て馬車で2日ほどの場所にある村に住む商人に会いに行くこととなった。
ハヤトから聞いた話ではその商人とはマトが生まれる前に出会っていて、ハヤトがその村に滞在していた時に大変お世話になったのだという。
そしてその商人には年齢が同じ子どもがいるらしく、お互いに落ち着いた頃に手紙が届き会うこととなったのだ。
「マト、今からウラヌスに行くぞ。
...ってどうした?
そんな顔して。」
ハヤトはマトの顔を見るなりそう言い出した。
マトは普段そこまで感情が顔に出ないのだが、すぐに気付くのはやはり親子だからだろう。
「ぼく...やっぱり才能無いのかな?
一向に強くなれる気配がないよ...。
お父さんにも全然歯が立たないし、何より身体が追いつかないんだ。」
それはマトにとってとても辛い相談だった。
だが、ハヤトはそれを重くは受け止めなかった。
「なら村を出てる間に考えろ。
肝心なのは何が出来ないかじゃなくて、何が出来るかって事だ。
それに、そんな簡単に親が子に負けるかよ!」
笑うハヤトにマトは少し不機嫌になりつつ、馬車に乗り込む。
だがそれも馬車が動き出し、爽やかな風がマトの頬を撫でるまでだった。
マトは人生初の冒険に心を踊らせていた。
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村を数時間後、マトの顔にさっきまでのような楽しそうな顔は無かった。
むしろよく数時間もったものである。
「退屈...暇...。」
「そりゃあそうだろ。
誰も好き好んで魔物のいる森を通ろうとなんてしないし、ここはまだ村の近くだから寄ってくるような魔物も出ない。
俺たちの冒険はまだまだこれからだっ!ってな。」
「こんな調子で2日間とか...大変だね...。」
ハヤトのテンションの高さに戸惑いつつ無難な返答をする。
そんな時、馬の半分くらいのサイズの犬がちらほらと目につくようになっていた。
マトも、たまに読む本やハヤトに教わった知識によってこの辺の生き物や植物について知っている事が少なからずあった。
その知識を記憶から引っ張り出して近くの犬と照らし合わせると、この犬はティミッドドッグという名前の魔物である。
しかし犬の魔物という事もあり、人間が危害を与えない限り無害であるし、ペットにしやすい魔物でも上位であったため殺す必要は無いと判断してカイトは無視をしていたようだ。
だが、それにしても....
「それにしてもあの犬が出てくるのが早すぎねぇか?」
マトが思った事と同じ事を、カイトも考えていた。
馬車で移動を始めてかなり経ったとはいえ、魔物は本来もう少し村を離れた所から現れるはずだった。
あの魔物は犬の姿をしているくせに草食だったため、記憶もかなり鮮明に覚えている。
だが、理由など考えても情報が少なすぎて分かるわけなど無くティミッドドックの横を通り過ぎてウラヌスへ向かう。
それからしばらくはただの平原だったため、兎などの動物や襲ってこない魔物としか遭遇せずにただただ退屈な時間を過ごした。
しかしほとんど声を発しなくなったマトにため息をついて、馬車を止めた。
「マト、ちょっとこっち来い。」
「うーん...。」
2人はゆっくり地面に足を付けると、凝り固まった筋肉をほぐし、少し離れた所へきた。
「馬車に乗ってるだけだとケツが痛くてやってられねーからな。」
そう言って大きめの枯木に向かって魔法を唱え始める。
『魔力で集めた気の名は酸素と水素。
標的の前で混ざれ。』
マトには聞き取れない言語を唱えながら見えない何かが動くのを自慢の目で捉えたマトはこれから起こる現象を見逃さないように息を飲んだ。
すると目の前の木は突然もぞもぞと動き始めた。
ハヤトの魔力を感じ取ったのだろうそれはトレント、れっきとした魔物であった。
だが動き出すのが遅すぎた。
既にハヤトは魔法を唱えていた。
『爆発せよ!ファイア!』
トレントに向かって飛んでいったのは小さな炎の球体。
敵に近づくにつれ炎は小さくなっていくように見えたが次の瞬間
トレントを中心として大きな音が耳に、地面に響く。
少し遅れて暖かい風が通り過ぎていきやっと出来事に頭が追いついた。
「そういや、魔法見せるのもこれが初めてだったか?」
ハヤトはそう言いながら笑ってこちらに振り返る。
マトはあいた口が塞がらなかった。
さっきまでトレントがいた地面は大きく抉れて大きな穴が空いていた。
「肝心なのはイメージだ。
完璧にイメージ出来れば多少有り得ないことでもその通りになっちまうのがこの世界だ。
自分を信じれねーやつは絶対勝てねーんだぜ?」
それはいつもの稽古のように、マトに何かを教える時は決まって笑顔だった。
しかしマトにとってこの時の父の姿は何よりも輝いて見えただろう。
マトがこの大き過ぎる背中にそして自分の才能に、明確な大きな目標を作ったのはこの時が初めてだったかもしれない。
もっと書かねば...