1話 英雄の息子
徐々に文字数増やしていけたらいいなぁ
邪神との戦いから数年後。
朝、頭を撫でられる感覚でマトは目を覚ました。
窓から入ってくる風が気持ち良く、マトを2度目の夢の中へ引きずり込もうとするのに耐えながら目を開けるとそこには慣れた手つきで頭を撫でている父、ハヤトの姿があった。
ハヤトはマトが目を覚ましたのに気づき、言葉をかける。
「おはよ。
朝ごはん出来てるから顔洗ってこいよ。」
そう言って寝室を出ていった。
マトは話しかけられた事ですんなりとベッドの誘惑に打ち勝つことが出来たので、言われた通り顔を洗って朝食を食べに行く。
「おとうさん!今日もけいこしようね」
マトはまだ6歳であるため幼さが残る話し方でしか話せなかった。
「なんだよ。最近まで稽古なんてやりたがらなかったのに。」
ハヤトは少し驚いたかのように目を大きくする。
「ぼくはみんなより弱いから。
その分頑張らなくちゃ!」
マトは気合を入れるように小さな拳を握った。
ハヤトの表情は自然と緩んだ。
その我が子の姿を見る目は優しさに満ちていた。
マトは地球人であるハヤトの息子であるため、元々戦いが好きな性格ではなく、人を傷付ける事を極端に嫌がる。
そのため同世代の子どもに勝ったことがないのだ。
マトはこの厳しい異世界において優しすぎた。
その事を少し前に知って、稽古を思いついたのだ。
だが、気持ちは体を鍛えただけでは変わらない。
ハヤトはその事に気付きながらもせめてマトの精神が成長するまで、身体だけはつくっておこうとその場しのぎの考えを持っていた。
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時刻は昼をとっくに過ぎ、辺りはオレンジ色の光で満ちていた。
広い広場に親子2人の影が地面に沿って伸びている。
ちょうどマトとハヤトは稽古を終えて家に帰るところだった。
「ねぇおとうさん。
おとうさんって『えいゆう』なんでしょ?」
「正しくは『英雄だった』だな。
今じゃただのお前のとーちゃんだよ。」
ハヤトはマトの頭を撫でながら続ける。
「俺は女神から力を授かったから魔法が使える。
ただな、人間にとって魔力は恐怖の対象でしかない。
お前も気を付けるんだぞ。」
本来、人間には魔力を使うための器官が存在しない。
そのため魔力を使えるのはその器官を持った魔族か魔獣だけなのである。
だがマトはその器官を持って生まれてしまったのだ。
その理由の1つには、女神の力による恩恵も含まれるだろう。
そしてマトには他の人間とは違う事がまだあった。
眼の色が白いのである。
この世界には赤眼や碧眼も存在し、髪の色も眼の色も多種多彩であったが白眼は稀であり、周りの視線を集める事も珍しくはなかった。
そしてその眼は遠くのものまで鮮明に見通すほどの視力が備わっていた。
マトとハヤトの親子は村では変わり者という評価だったが英雄と言うことは2人だけの秘密であり、バレていないのは2人の絆が証明しているだろう。
夜になり、マトが寝かしつけたあとハヤトは息子の事を考えていた。
これから先、いつか必ずマトには悪いことが起こる。
魔法の事などがバレてしまった時にマトを助けてやれる人間はいるのだろうか。
願わくば出来るだけバレないように、バレてしまってもマトを守れるように。
自分じゃなくてもいい。
どこかの誰かが、マトを支えて欲しい。
ハヤトは自分の無力さを痛感して目元が熱くなる。
情ねぇなぁ...この世界では強くても自分の息子1人救えねぇ...
もう、失わないって決めたくせに。
「親もツレぇなぁ、ちくしょう...」
村の人も寝静まった夜に、ぽつりとハヤトが呟いた。
マトはまだ仲のいい友だちはいなかった。
性格は亡くなった母であるアイズに似ているためハヤトのように活発に動く事が少ないからだ。
そんなマトの未来のために、ハヤトは3年後に学園へ入学させることに決めた。
そこの学園長とは古くからの知り合いであるためマトにとってもいい環境になると考えたからだ。
自分の息子の才能を誰よりも知るハヤトは、これから先のマトの成長を想像する。
まだ見ぬ仲間と共に競い合い、己を高め続ける。
強くなったマトの周りにはいつしか良い友人がたくさん出来ていて。
ハヤトと共に今度は邪神を完璧に倒す。
いつしか自分よりも強くなって-。
たくさんの楽しみを知って、笑って欲しい。
その為に親が子に出来ることはたくさんある。
学園に行くまでの3年間でどこまで教えられるか。
その時のハヤトの顔は師が弟子に期待しているような、生き生きとした顔つきに変わっていた。
まだ操作に慣れていなくて大変です