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第124.5話:運命の出会い

 これはあの日の回顧にすぎない。

 もう10年以上も経った、過去の後悔と運命の出会い。

 この名前も知らない星の、あるいは世界の中で

 この星に生まれた訳ではない私の、この星での生き方を決めた出来ごと。



 私の慟哭を聴いたのだろうか?

 それとももっと前から様子を窺っていたのだろうか?

 商館に武装した男たちが踏み込んできた。

(数は・・・20くらい?)


 よくはわからないけれど統制のとれている動きだと思う。

 私の足元にいて腰を抜かしていた肥満体の男が途端に跳ね起きて、男たちの方にすがりつき私の方を指差してなにかしら喚いていたが、男たちに拘束された。


 この男たちはどうも商人たちとは違う勢力らしいけれど、一体何者だろうか?

 細かい装飾の違いはあるけれど、装備が整っていて動きが訓練されているところを見ると兵士なのだろうか?


 私は警戒はされている様だ。

 何人かの兵士?は此方をじっとみて剣か槍を構えている。

 どうも突入してきた以外にも外に兵士たちがいるらしくて、逃げ出した男たちのわめき声が聞こえてくる。


 やはり彼らは兵士、それもこの大きな街の正規軍で何らかの任務でここを囲んだということだろう。

 敵対するのは得策ではないのかもしれない、でも今鎧装を解けばいきなり斬り殺されるかもしれない。


 こうしている間にもゴルフさんの亡骸からは徐々に温みが失われていく

「なんでこんなことに・・・」

 私の声に、なにかしらを感じとったのだろうか?

 槍を構えていた男が構えをといて、隣の兵に預けた。

 さらに男は、ニコリと笑うと両腕を開いて私の方に向き直った。


 そして己の胸に手をあてて

「セメトリィ、セメトリィ!」

 そういいながら近づいてきた、周りの兵隊も狂ったのかと言いたげに「セメトリィ!&*@§?」と何事か叫び男を止めようとしたが、男は私の前までやって来た。

 セメトリィというのが彼の名前なのだろうか?


 彼は私を油断させたいのか、それとも敵意がないことを表しているのか?

 私は一先ず、抱き上げていたゴルフさんの亡骸を床に降ろしてみた。

 周りの兵士達は私の動きを警戒してかどよめくが、セメトリィ?さんは落ちついた様子で私の方をみて、もう一度だけ

「セメトリィ!」

 と自身を指し示して声をあげた。


 私も覚悟を決めよう。

 この人は私と言う脅威に丸腰で向き合ってくれたのだから、私も応えなくては。


 私は鎧装を解いて、少女の姿に戻ると自分の胸に手をあててゴルフさんが名づけてくれた名前を・・・

「カナリア」

 と名乗った。


 鎧装を解いた時には驚いた様子を浮かべたセメトリィ?さんは

「カナリア~~」

 となにか聞き取れない言葉をつらつらと述べたあと、手をさしのばしてきた

(握手かな?)

 そう思った私は、通常の銀腕をつけたままで申し訳ないなと思いながら握手に応じた。


 敵意はないことと言葉は通じないことが分かったのか、兵士たちは私への警戒を多少緩めた。

 それから私はゴルフさんの亡骸の横に戻り。

 もっていた布で少しでも綺麗にしてあげようと顔や傷周りを拭きはじめた。

(少しはきれいになったかな、ごめんなさい、私のせいで、私と出会わなければ・・・)

 商館の中はすでに兵士たちに占領されて、奥に向かった兵士たちが子どもを数人連れてでてきた。


 私と変わらない年頃の子どもたちは重たそうな鉄の腕輪を着けていて、兵士の一人が肥満体から奪った鍵束を使うと、その鉄輪は外れていった。

 やはり、奴隷だったのか?

 しかしもうひとつ気がついた。


(この子たち耳がある!?)

 何をいっているのか?と自分でも思う。

 私にも耳くらいはえている。

 でも違うんだ。

 この子たちのほとんどには、猫や犬の様にフサフサの毛に覆われた大きな耳がついていたのだ!


(アニメに出てくる獣人さんみたい!カワイイ!!)

 私は可愛いものが好きだ。

 今の今まで落ち込んでいた心が少しは弾む。

 でもその子たちは格好はぼろぼろだし、怪我している子もいるみたい、ちょっと悪目立ちしちゃうかもだけれど、今さらかな?


 私は「みつ」を装備した、再び光を放った私に視線か集中したけれど、構うことなく治癒の術を使う。

 少しは傷の痛みが引いたのだろうか、治療を施した子ども達の表情が多少柔らかくなったのは分かった。


(あ、この子・・・)

 獣耳の子どもの中に一人、服がズタズタにさかれている子がいて、悔しそうに顕になった肌を手で隠していた。

 すらりと細身のスタイルで、顔もカワイイと思う。

 ただその子の様子からは望まない行為を強いられた痕跡がありありと汲み取れて、他の子達も少なからずそういう状態なのがわかってしまった。

(あるいは私も、こういう目にあっていたかもしれない・・・暁さん・・・)

 愛しい人に会いたい。


 私は自分の着替えの中から数少ない神楽の持ち物であるダボダボのパーカーを取り出すと、その特に服がぼろぼろの子に着せた、私よりも身長の高い女の子には少し丈が足りなくてすらりとした足が惜しげもなく晒されている状態になった。

 それでも女の子は喜んでくれた様で、ピタリと私にくっついてきた。


 その子はイヌの様なフサフサした耳が垂れていて、毛並みも柴犬みたいでモフモフしている。

 キレイに洗ってやればきっと気持ちいいものだろう。

 私はゴルフさんを失ってしまったけれど、一人にならなくて本当に良かった。

 一人になってしまえば私はきっとすぐに心が折れてしまう。

 ゴルフさんを失ったことは悲しいけれと、それ以上に自分にすがってくれる存在があることで、私は精神の安定を保つことができているのが分かった。


 奴隷だった子ども達と私は一緒に、兵士たちに保護されて、兵士達の宿舎に連れて帰られて一夜を過ごした。

 兵士宿舎のある区画の墓地に、ゴルフさんは埋められた。

 約2週間ぶりにまともなお風呂と食事にありつけて私は非常に気持ちが緩んで、宿屋を取ったことを忘れていた。

 翌日ゴルフさんの荷物から宿を割り出してもらって宿においていたゴルフさんの遺物を兵士が回収してきてくれた。


 其れを整理していると、どうもセメトリィという男は私を誰かに会わせたいらしく、連れ出しに来た。

 何を言っているかわからないけれど私の傍を離れなくなった、イヌ耳のリスタ?が変わりに聞いてくれてる様だ。


 リスタは私とセメトリィさんの間に割って入り私を庇う様に立ち、話を終えたらしいセメトリィさんから服を受け取った。

(着替えろということかしら?)

 みた感じフリフリとした飾りが多くて、見た目40歳位のセメトリィさんがこれを用意したと考えるとかなり違和感のある服だけれど・・・?


 リスタがセメトリィさんを部屋から追い出し、代わりにカーラといっただろうか?保護された子どもの一人をつれてリスタが戻ってきた。

 そしてリスタに手伝われて、私はそのセメトリィさんが持ってきた服に着替えさせられた。


「わぁ・・・お姫様みたい!」

 鏡の前で私は思わずくるりと一回転


 ドレスとしてはシンプルなのだけれど。

 それでも私の乙女心をくすぐるフリルとリボン、色合いは白とピンクのロリータ風のドレス。

 思わず興奮してしまうほどの少女趣味のドレスに身を包んだ私はちょっと浮かれ気味。


 それに対してリスタとカーラは地味目な、ドレスに見えないこともない程度のもの。

(私だけ特別扱いなのかしら?)

 二人はそこまで気にしてなさそうだけれど、自分だけ特別扱いはちょっと感じ悪いかなって思ってしまう。


 それからセメトリィさんに連れられて、 大きな建物へ馬車で連れて行かれた。

(これは・・・お城?)

 ドレスを着せられてお城へって・・・私は舞踏会にでも参加させられてしまうのだろうか?

 それは困るよね・・・この世界は愚か、日ノ本の授業の創作ダンスですら怪しい出来だったというのに・・・。


 しかしその私の心配は杞憂に終わる・・・。

(え?何ここ?アレって玉座?)

 広く高さもある部屋、奥に2段階高くなった場所がありイスが3つある。

 そして、そのイスのうち2つに人が座っていて。

 片方に30くらいに見えるおに、おじさん?難しいラインだ。

 それからその娘さんなのか?5歳くらいの女の子が脚をぷら着かせて座っていて・・・


 その王様らしい人とセメトリィさんがなにやら話しをしている。

 私は何をしていいかも分からずただ棒立ちで、リスタとカーラは跪いていた。

 それからセメトリィさんが女の子に声をかけると、女の子が立ち上がってこっちに寄って来た。

 兵士たちが止めようとしたけれど、王様らしい人が手で制する。


 女の子と目があった。

(なんだろう・・・不思議と吸い込まれそうな瞳、リアお姉様と似てる?)

 そんなことを考えていると頭の中に声が響いた。

「(こんにちわ、黒い髪のお姉さん。)」

「え!?日ノ本語!?あなた!日ノ本語が喋れるの?日ノ本とココは繋がってるの!?」

 驚いた私は捲くし立てる様に矢継ぎ早に言葉を紡ぐ


「(そんなにおはなしされてもクレアには分からないわ・・・コレは心が通じてるだけで言葉まで分かるわけじゃないの)」 

 クレアと名乗った少女の目を見て呆然とする、私はこんな年下の少女になんて怖い声を出してしまったんだろう。


「(伝えたいと心で祈れば伝わるの?)」

 なるだけ穏やかに、地球ではありえない若草の様な色の少女の頭をなでながら私は心に伝えたい言葉を思い浮かべる。

「(そうよ・・・、やりのおじちゃんがおねえさんをクレアのせわやくにしたいっていってるから、ことばとか、さほうとか、おしえてあげる)」

 思念によるらしい会話、言葉が通じなくても心を伝える事ができるというその能力は非常に稀有なものだと思うけれど、彼女は、クレア姫様はいとも容易いことの様にやってのける。


 この出会いがなければ私はこの世界の言葉を覚えるのに何年かかったか分かったものではない。

 王様(本当は皇帝だったけれど)の許可が出て私とリスタとカーラは晴れて姫様の側遣え見習いとして、遣われる様になり、1年後には、私はサテュロス語が喋れる様になっていた。

 

遅筆でごめんなさい、神楽回想2コマ目です。

話の都合で3コマ目は大分あとになります。


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