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第157.8話:アスタリ湖攻略7

少し短いですがアスタリ湖の話の最後の部分になります。

 アスタリ湖ダンジョンの本格的攻略が開始されて10日目昨日最後の拠点にした空洞からダンジョンにもぐって初めての完全な右折をして、僅かに10分ほど奥に進んだ場所、このアスタリ湖ダンジョン入り口のほぼ直下

 私、ユークリッドはひとつの部屋にたどり着いた。

 昨日立てた推測ではここにはもう3回りは大きい部屋がある見立てだったけれど・・・

 部屋の大きさはごくごく狭く兵士が20名入れないくらい・・・。



「ユークリッド様・・・ここが最後の部屋なのでしょうか?奥側に扉もありますが、開かない様です。」

 ペイロードの指揮官トーマ・ルベライト氏がいかにも困惑していると分かる表情で私に問いかける。

「そうだね、僕にも分からないけれど、何か仕掛けはありそうな部屋だよね?」

 そう部屋だ。

 7日目の探索の最中から、ダンジョン内は洞窟ではなく、明らかに人工の通路とこまごまとした部屋、そしてたまに拠点化できる様な大きな部屋があった。

 このダンジョンは人の手で作られて、なんらかの目的で隠された場所なのだ。

 そして、私たちの見立てでは、この部屋かその奥に部屋があるのならそこに、魔剣、神器、あるいは鍵、言葉は何でも良いけれど、私が所有しているクリスタルソード|(仮称)と同等の危険な武器が安置されているはずなのだ。


「ユーリ様、部屋の内部は調べますがユーリ様はいかがなさいますか?」

 軍官学校時代の同級生のアイヴィが、私が一緒になって調査するのか、それとも部屋から出ているのか?とたずねてくる。

 勇者適正を持っているのはこの隊では私だけだから、私は残るべきだろう、勇者でないと安全に武器を保持できないのだから。


「僕も一緒に調査するよもし鍵が出たら、僕が回収しないといけないし、ほかの調査員の選出はトーマ殿に任せる。」

 室内に私とアイヴィ、トーマ氏、それに記録官2名と手先の器用な兵士3名、ダンジョン探索に功のあった罠師の冒険者ナレさんとが残り、ほかの兵たちは7名を部屋の防備に残して、残りは一旦拠点まで下がらせた。


 室内の調査をしていると、壁面は大体つるつるとした滑らかな手触りで、石とも木とも異なる、かといって金属でもない、一番近いのは陶器だろうか?温度は冷たいけれど触った感じに冷たさがなくて気持ちい。

 部屋の中央には壁と同じ材質でできたテーブルが有りその上に大きくないモニュメントがあって、それは方錐の天地を逆にして地面に突き刺した様な形をしている。


 怪しいのは、入ってきた入り口とは逆側の扉とその横にある謎の図形、それからこの中央のモニュメントだけれど・・・私は、モニュメントに近づいてその周りの台を触ってみる。

 やはり壁や床と同じつるつるすべすべとした滑らかな地肌、うちの城もこんな材質で作れたら城内を裸足で歩く様にしたいくらい気持ちがいい。

 それと触った感じでは保存の魔法はかかっていない、かかっていないのにまったく痛んでいない・・・。

 不思議な建材を使っている。


 テーブルの周囲をなでながら一周してみると四角形のテーブルで一辺だけ少し表面が区切られている部分がある。

 他の変はすべて滑らかなのに1辺だけ小さな四角がいくつか彫られている?見方によってはトラップや仕掛けのスイッチに見えなくもない・・・か?

 押し込まないように表面を撫でてみる。

 すると・・・・ヴォンと短い音がした。


「え?」

 押していないのに反応させてしまったらしい。

 直後プシーっと音がして入り口の扉が閉まり。

 私たちは部屋の中に閉じ込められた。

「な!扉!?そんなものがどこにあった!?」


 ナレさんがおどろいて入り口側に走るが、すでに扉は閉まったあとだ。

(壁から扉が生えてきた様に見えた。まさか罠?私はここでどうなるの?また死ぬの・・・?私の迂闊さで大事な部下たちも命を落とすことになるの・・・?)

 私の頭の中はドンドン悪い方向に進む。


 しかしそれもすぐに次の驚きで掻き消えることになる。

『☆#жΞΜΓ‡♪~』

 真ん中のモニュメントの上に見知らぬ女性の姿があった。

「誰だ!どこから現れた!!」

 トーマ氏と兵士のうちの二人が槍と剣とを女性のほうに向ける。

 しかし女性は気にした様子もないというかまったく気づかずに言葉を放ち続ける。

『$∇Ь¥★~』

「記録官!表音文字で言葉を記録して!なにを言ってるか分からないけれどあとで調査する必要がある!」

 私はとっさに記録官に命令をだした。

 記録官は一瞬動作が遅れたもののすぐに記録をとり始めた。


 部屋の周りからはゴリゴリと岩肌ををこすり上げる様な音が聞こえ、立っているのに移動している様な妙な感覚がある。

 中央の女性は話続けるが、すぐに子の女性はここにいないことが分かった。

 女性を通して向こう側にいるアイヴィがうっすら透けて見えているしこちらの言葉には一切反応がない。。

 結晶通信の様に遠くにいるのかそれとももうどこにもいないのか分からないけれど、このモニュメントはおそらくそういう魔法的装置なのだろう。


 女性は私たちには分からない言葉を3分程度話続け、それが終わったとき周りから聞こえていたゴリゴリという音もなくなった。

 そして、入り口と逆側の扉が開いた。


「どれくらい書き留められた?」

 女性の姿が掻き消えたのを確認してから記録官に声をかける。

「申し訳ございません、最初の20秒ほどについてはまったく書き取れませんでした。ただ後半2分ほどの部分については、二人で照らし合わせればおおむねすべてを書き留めることができたと思います。」

「上出来、僕こそごめん、まさか押さなくてもスイッチが反応するなんて思わなかった・・・。」

 もしも密室にして毒ガスを吹き付ける様なトラップだったら全滅の危機だった。

 さて進むべきか退くべきか・・・。


 後方入ってきた入り口の扉は閉ざされている、逆の奥側は先ほどまでと異なり開け放たれている。

 どうやれば入り口側が開くかも分からないし一旦進んでみることにしよう。

「それじゃあちょっと人数が少ないけれど、進むしかなさそうだし・・・進もうか?」

 私が指揮官で、私がそういえば、他のものは従うしかない、逆に言えば私がそういうことで、彼らの行動の責任は私がとることを暗に示すことで少しはおびえずに調査ができるはずだ。


 ナレさんが慎重に扉の外を確認して、それから全員で外に出た。

 そして驚く。

 その部屋はあまりにも巨大な、上に行くほど大きくなる多分、円錐台の形状をしていた。

 多分というのはその部屋はかなり広く、今まで下ってきた道の描いた軌跡からそう想像したに過ぎないからだ。


 今まで横穴がすべて入り口を中心とした円から外側に向かって伸びる、通路から左手側の横穴だったのは、内側にはこの部屋があったからだ。

 今まで右に緩やかに回っていた通路はすべてこの部屋のすぐ外側にあるのだろう。


 天井は暗いし高いのでよく見えないが、床は比較的狭くて、直径は円形闘技場の場内の1/3ほどだろうか?

 それでもひとつの部屋として考えればすごく大きいけれど。


 部屋の中央付近には何かの台座があり、その上に・・・多分三尖槍ということになるのか?

 私の、ユーリの身長くらいの長さの槍が鎮座していた。



次回の更新から本編に戻ります。

長い間本編の更新を滞らせてしまい申し訳ありませんでした。

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