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第157.3話:アスタリ湖攻略2

※2017/3/10 回想先が食事中となっていたのを食事前に修正しました。

          神楽の名前が神楽になっていた箇所をカグラに修正しました。

 前回のあらすじ、大陸の中の物理的な隔たりの解消や、連邦の更なる発展のためにアスタリ湖のダンジョン攻略の拠点にやってきた私アイヴィ・グレートワールは、同じ建物に宿泊することになったペイロードの幹部候補、トーマ・ルベライト様に脱衣場で遭遇するという事故にあい、あまつさえ男同士だから気にするなというありがたいお言葉を頂いてしまった。

 私の自尊心的にも、彼の名誉のためにもこの事実を何とか隠し通し攻略を完了させねば・・・私はなみなみならぬ決意を胸に最初の夜を明かしたのだった。



 翌日、日も高く上ったお昼過ぎ、私は複雑な気持ちで剣を振るっていた。

 拠点の周囲にいる魔物の群の討伐を目的として私たちはいくつかの部隊に分かれて任務についていた。

 ユーリ様とサリィ先輩、カグラお姉様にナディアさんにアビー先輩は拠点キャンプで兵の合同訓練中

 シア先輩と3騎士のおじさんたちはアスタリ湖ダンジョンの偵察、そして私とトーマ様に、サーニャとリスティは拠点のあるアスタリ湖沿岸から精霊の森方面に続く森の魔物の討伐のために兵を動かしていた。


 この地域は、四季がはっきりとしている地域で今の時期はほとんどの魔物が繁殖期を終え子育ての季節になっているため、気性が荒くなっている。

 拠点周りを軽く掃除しておかないと、危険だということで精霊の森のエル族たちと照らし合わせて本日一日かけて魔物の数を減らすのだ。


 この四季の森の東側の私たちが移動しながら魔物を減らし、森の西側のエルたちは逃げてきた魔物を狩る。

 他の方角に逃げるものもいるのだろうけれど、私たちは点在する近くの集落からスタートして狩りを行い、拠点は訓練中の本隊がいるのでカバーできるし人がいない森の奥地に行くのは構わないということである。

 私とトーマ様は拠点北西側の村から、南側の村からサーニャとリスティが出撃する。


 そう・・・トーマ様と私が一緒にいるのだ。

(気まずい・・・・。)

 昨日のことがあるのは勿論気まずいのだけれど、この期間中隠し通そうと思っていたのに、私が女である事がばれてしまったのだ・・・。

 話は今朝の食事前に遡る。



(昨夜のことは事故、昨夜のことは事故、よし・・・)

「アイヴィ・グレートワール入ります!」

「どうぞ」

「失礼します!」

 朝、気持ちを切り替えて拠点のテントに顔を出した私は元気に挨拶をしながらテントに入った。


 まだ時間が早かったからかテントの中にはトーマ様とカグラお姉様とサクヤ様それにサーニャだけがいた。

「おはよーアイヴィ、昨夜は良く眠れた?」

「んー、まぁまぁ・・・かな?」

 本当は悶悶としていて眠れなかったけれどサーニャに対しては学生時代から、女として弱みを見せる事が負けた様な気持ちになるため適当にごまかした。


「アイヴィおはよう、今日は魔物の討伐頑張ってね」

 まだ半分眠った様な感じのサクヤ様を抱っこして身体を揺らしながらカグラお姉様が笑いかけてくれる。

 相変わらずとても素敵な方だ。

 朝からこんな素敵な笑顔を見れるのは、この遠征に参加した最大の特典の気がする


「カグラお姉様、おはようございます。」

(目の下に隈とかできてないかな?肌荒れとか、寝癖っ!大丈夫かな?)

 一応部屋から出る前に身支度をしてきたけれど、軽く手で確認しながら安心してカグラお姉様の前に近づいていく。


「アイヴィ殿はもしかして、カグラ様の弟様なのですか?」

(!?)

 いきなりのトーマ様の質問に頭が固まった。


「え?どうして弟だとおもうんですか?」

 核心を突くトーマ様の問いに、カグラお姉様は質問で返す。

「いえ、髪の色も珍しい・・・あぁナディア殿もいるので目立たないですか、黒髪っていうのは、普通珍しいほうなのですが、この部屋では黒髪が多いですね、キレイな色だと思います。それと昨日も思ったのですがアイヴィ殿がカグラ様の事をお姉様お姉様と慕っていらっしゃるので・・・」


「あぁいえ、そうではなくってどうして弟だと思うのですか?アイヴィはこんなに可愛い女の子なのに」

 そういってカグラお姉様が私の頭をそのすべすべした手で撫でて、そのまま身体のほうへ引っ張り寄せた。


(げ!いきなりばれた!?)

「へ?」

 固まり赤くなるトーマ様、私も気まずさと女性の裸を見たことに気付いたことで赤くなるトーマ様の顔をみたことで改めて昨夜の事を思い出して恥ずかしくなる・・・。


「あれ・・・?アイヴィちょっと熱くない?」

 カグラお姉様が心配そうに私の顔を覗き込む。


「あぁいえ、ちょっと朝から走ってきたので、それで体温が上がってきたのかも知れません。」

 とっさにごまかすけれど、サーニャは私とトーマ様の顔を交互に見ているので多分何かを感づかれた。


 それから、他の人たちも入ってきたのでサリィ先輩が待っているはずのイシュタルト側の本陣に向かって今日の打ち合わせをしたのだけれど、途中サーニャが私に耳を寄せてきて・・・。



「ねぇ、トーマ様となにかあったの?」

 と尋ねてきた。

 トーマ様の名誉のためにも、私の名誉のためにも、裸を見られた上に男だと思われていたなんて事を言うわけにはいかず。


「なんにもないよ?弟って言われたのが恥ずかしかっただけ。トーマ様も私のことを男だと勘違いしていたのが恥ずかしかったんだとおもうよ?」

 とごまかしていうけれど

「ふーん、じゃあそれでいいけど、これから何日同じ屋根の下で過ごすかもわからないし、いい大人なんだから、わだかまりがあるなら今日中に解決しなさい?もう学生じゃあないんだから」

 と、目を細めていうサーニャは絶対なにかに気付いていた。


 サーニャは結局リスティと結婚したらしいけれど、男女の機微にも聡い様だ。

 私を解放してぬかるみに嵌ったリスティを助けに行くサーニャは、王都で暮らしていたときよりも生き生きしている様に見える。

 やっぱり里から離れて寂しい思いをしてたのかな?


 それから話し合いを経て現状のとおり私とトーマ様は肩を並べて進行中なのだ。

 冒険者10人とペイロード兵30人それから、私とトーマ様、42人で森ゆっくり南下中。

 この森には中型魔物が中心に分布しており、種類は小型なものから、角ウサギ型、狼型、鹿型、猪型、虎型、熊型が確認されている。

 他はともかく狼、虎、猪は、頻繁に人里にも現れるらしいので討伐隊は村人たちから歓迎された。



(ソレはそれとして、気まずい・・・)

 昨日裸を見られた相手、しかも私の事を男だと思っていて、せめて最後までそのままで通そうと思っていたら、速攻で女だと明かされてしまった。

 隣を盗み見ると、トーマ様もこちらを伺っていたのか目があったが、すぐに視線を反らされてしまった。


(うわぁ・・・ホントきまずい・・・。)

 騙された、と思っているだろうか?

 トーマ様からすれば、同性だと思ってフランクに接したら女性で、たいした身体もしていないのに今私が昨夜の事を持ち出せば、彼が築いてきたキャリアに傷がつく、割りに合わないだろう。


 魔物なれしている冒険者たちが魔物を誘い込み兵たちが囲ったところに追い込む。

 ソレを繰り返しつつ徐々に進軍する。

 討伐した魔物の解体は村人たちが買ってでてくれたので任せて、後から村人の食料分を抜いて拠点に届けてくれる様になっている。

 指揮官であるトーマ様とその護衛に着いた私は、ほとんど直接戦うことなく徐々に進んでいく。


 結局夕方まで狩りを行ったが、想定外のことは一度もなく危なげなく終わり

 サーニャたちと合流した後キャンプへ戻る。

 サーニャたちの方は一度想定よりも大きい虎型と遭遇し崩れかけたが、さらに大きい外皮の状態で待機していたリスティによって頭を抑えられまともに動けないままサーニャに頭部を貫通されて終わったそうで、あちらの兵士たちはサーニャとリスティに尊敬の眼差しを向けていた。



「それでは私は兵士たちを戻してきますので・・・」

 今日まだ10回くらいしか言葉を交わしていないトーマ様が、私に一言伝達し、先にテントに戻る様に言って立ち去った。

 

 ソレをみていたサーニャがトーマ様に自分たちの率いていた兵士も受け渡した後こちらにかけてくる。

 リスティは既にテント脇で全身に水をかぶっている。


「ちょっとちょっと・・・、朝と変わらないか、もっとひどくなってるじゃない。いいこと?私たち軍官学校卒業生は、各軍で下級管理職以上についていくの、それが、コミュニケーションがまともに出来ない人では勤まらないわよ?」

 少し責める様な口調で指を立てるサーニャ、身体からは新緑の匂いと淡い光が立ち上っていて、夕暮れの中でも神秘的な美しさを放っている美少女。

 胸はシア先輩と同じ程度にスレンダーだけれど、彼女の事を男だと思う男はいないだろう。


「はぁ・・・」

 ついついため息も出てしまうというものだ。

「ちょ!?ちょっと!どうしたのよ?らしくないわね!」

 長年の親友にまでこんな態度をとってしまう自分にさらに惨めさを覚えた。

「報告会のあと、ちょっと話し聞いてくれる?」

 惨めでも、情けなくっても私はこの親友以上に人の感情の機微に聡い知り合いがいない。

 私の周りはなんというか、天然ちゃんばかりなのだ。


 何せあの賢いアイラちゃんでさえ、たくさんの後輩男子から向けられる好意にただの善意以外の者を感じ取れていなかった。

「いいけど・・・、なんかアイヴィらしくないわね?調子狂うわ」



 サリィ先輩のテントに入ると既にリスティとトーマ以外は皆いて、さらに一人追加の人間がいた。

「あ、ジル先輩」

 結晶魔法の第一人者で、長距離結晶通信技術の開発者でもあるジルコニア・ナハト先輩、いつも少し眠たそうな目をしている、そして・・・

「あら、またまた顔見知りが増えたわね、お久しぶりアイヴィちゃん、ちょっと落ち込んでるみたいね?」

 私の知人の中では貴重な、人の感情の機微き敏感な人でもある。


「ジル先輩もあとでちょっと相談に乗っていただいてもよろしいでしょうか?」

「・・・別にいいけど?」

 こうして頼もしい増援を得た私は、報告会でも少し元気を取り戻した状態で報告をする事ができたのでした。



アスタリコ攻略は始まりませんでした。

おかしいですね。

次回からはちゃんとダンジョンに入ります。

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