第十七話~襲撃~
防衛省特殊介入部隊による輸送班は、関越自動車道を通り、埼玉と東京の県境に差し掛かろうとしていた。二台のセダンが、押収した麻薬を積んだトラックを守るように前後を走る。
「もうすぐ東京ね」
トラックの助手席にいる姫由久代が呟く。
「このまま何事もなければいいけど」
『ちょっとちょっと! 怖いこと言わないの!』
無線で突っ込みが入れられた。最後尾のセダンの助手席にいる、京橋楠だ。
『何事もないように警戒してるんだけどね』
さらにセダンを運転している綾目留奈が口を挟む。
『ま、油断大敵なのは変わんないわ。というわけで気を付けなさいよ、ツカサ』
「……そこで何でアタシの名前が出るのさ」
『あんたはただトラック運転すればいいだけだからね』
「表に出ろ、ルナぁ!」
「……またやってますよ」
先頭車でも、無線の音声は流れていた。運転を担当している英賀敦が苦虫を噛み潰した顔をしている。
「もう少し何とかならんのですか、あの娘ら」
後部座席の茂澄豊も苦言を漏らす。
何と返そうかと雲早柊が考えたとき、無線に割り込みがあった。
『太刀掛だ。聞こえるか』
「太刀掛さん? 何事ですか?」
『ヘリの整備員が黄麟会の構成員に買収されていた。先程、尋問して吐かせた内容によると奴らは――』
太刀掛の言葉を最後まで聞くことが出来なかった。突如、雲早達の車を横殴りの衝撃が襲った。
二両目のトラックを運転していたつかさは見た。
右車線を高速で走っていたトラックが、先頭車の横に着いた瞬間、突如路線変更し、雲早達の車を弾き飛ばしたのだ。先頭車は猛スピードで路肩に乗り上げ、ガードレールに激突し、横転する。
そして、割り込んだトラックが、つかさ達の目前でスピードを落とし始める。
「ブレーキ!」
久代の警告を聞くまでもなく、つかさは急ブレーキを掛ける。しかし、止まり切れず、トラックに正面から激突した。その衝撃でエアバックが展開され、視界が塞がれる。
最も慌てたのは最後尾のルナだ。目の前を走る輸送用のトラックで視界が限られ、先頭車が跳ねられたことに気付くのが遅れた。
トラックが急ブレーキを掛け、ハザートランプが灯ったと同時にブレーキを踏むが、激突を免れない。
そう判断したルナはハンドルを左に切って路肩に進路を変えた。
「対ショック姿勢!」
助手席の楠に警告した。再度ハンドルを切り、車の方向を調節、ガードレールと車側面が猛スピードで擦れ、激しい火花が散る。
やがて、車が停止する。
「大丈夫、クスノ?」
「なんとか……」
ルナは何が起きたかを確認するため、身を起こそうとする。
その時、サイドミラーに銃を構えた男達の姿を捉えた。
「伏せて!」
次の瞬間、車に大量の弾丸が撃ち込まれた。




