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冥府の剣(改訂後版)  作者: 梅院 暁
第二章 ~覚醒編~
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第十六話~捕捉~

 夜の帳が降りた頃、港を出た男がいた。人の目を気にしているのか、キョロキョロと周りを確認しながら郊外へ向かう。男はコートを纏っているが、その中は整備員の着るツナギだった。

 少し経ち、その後を別の人間が追った。


 男は郊外にある少し寂れたバーに入った。店内に客はほとんどなく、カウンターは誰も使っていない。四台のテーブルも一台だけ埋まっている状態だ。

 男は迷わず唯一人のいるテーブルに向かった。テーブルには、三人の男が座っている。

「首尾は?」

 座っている男の一人が聞いた。

「上々」

 座りながら答える。

「案の定、ヘリが使えなくなったから車で運び始めた」

「今朝出たトラックか?」

「その通り」

「よくやってくれた」

 男は満足そうに頷く。

「で、約束の金は……」

「これだ。受け取れ」

 男の分厚い封筒を取り出した。指輪のハマった手で、テーブルに放る。

 報告した男が、嬉々として報酬の入った封筒に手を伸ばす。

 次の瞬間、封筒を渡した男の手が動いた。封筒に気を取られていた男の首を掴む。指輪に仕込んでいた毒針が刺さり、悲鳴を上げる間もなく即死。首から手を放すと、何が起こったのかも理解できないまま死んだ男の身体が床に崩れ落ちる。

「片付いた。後は同志の吉報を待つだけだ」

 男達が笑みをこぼす。

「お前達が聞くのは、吉報ではない」

 突然の声に、男達の顔がひきつる。

「凶報だ」

 言葉と共に、入り口のドアが蹴破られる。

 バーのレジにいた店員が、マカロフを抜いた。スライドを引き初弾を薬室に込める。

 だが、引き金に指を掛けたところで、乱入者の抜いた回転式拳銃に額を撃ち抜かれる。

「観念していただこう」

 太刀掛たちかけひとしは右手に握る短銃身モデルのリボルバーーーコルト・ローマンの銃口を男達に向ける。

 男の一人が、テーブルをひっくり返した。

 太刀掛は引き金を二度引き絞る。

 2インチの短い銃身から放たれた二発の.357マグナム弾が、木製のテーブルを容易く貫通した。テーブルの向こうから悲鳴が二人分響く。

「キェッ!」

 最後に残った一人が、テーブルを飛び越えながら刃物を投擲した。柳の葉の形をした短刀。

 太刀掛は咄嗟にローマンで顔をガードした。グリップの底に、柳葉飛刀が刺さる。

 着地した男は掌を太刀掛に向けながら突進してきた。指輪についた針の先端が、太刀掛に狙いを定めている。

 ――銃で狙う暇はない。

 一瞬でそう判断した太刀掛は、ローマンを手放す。引っかくように突き出された相手の右手を、左手で掴んだ。

 このとき、太刀掛の右手は手放したローマンの代わりに、刺さっていた柳葉飛刀の柄を掴んでいた。軽く振ってローマンを刃から外すと、逆手で振るった。膝に刃を走らせ、腱を断つ。

「ゲェェェッ!」

 絶叫する相手の右手を、ひっくり返ったテーブルに叩きつける。指輪の仕込み針がテーブルに刺さり、使い物にならなくなった。

「返すぞ」

 太刀掛は男の手の甲に柳葉飛刀を突き立て、テーブルに縫いつける。

 その時、厨房の方から二人、男が出てきた。案の定拳銃を構えている。

 太刀掛は床を転がると、先程手放していたローマンを拾った。相手の放った銃弾をさらに転がってやり過ごし、冷静に一発ずつ撃ち込んでいく。さすが耐久力自慢の一品だけあって、床に落としたぐらいでは問題なく作動してくれた。

 ローマンの残弾が一発になった。

 太刀掛は立ち上がり、他に敵がいないことを確認すると、激痛にのたうち回る男に狙いを定める。手を刃物で貫通される感覚を味わったことないのか、もう悲鳴を上げることすら出来ない。

 止めを刺そうとしたところで、整備員の男がすでに死んでいることに思い至る。せっかくだから、この男を捕虜にすることにした。

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