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シンデレラにお願い  作者: 高遠 泉
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魔道士と聖職者①

滅茶苦茶、怒られた。


…無事に魔道士認定式を終えて正式な魔道士として城に残る事が決定した私。

お給料の前借を頼むため、いい成績を収めようとしただけの私。

なのに。

何故。

こんな仕打ちをうけなければいけないのか。


「聞いているのか?」

魔道士隊長という、この無駄にイケメンの男性が先ほどから女性は云々と独自の女性論を長々と論じている。

男尊女卑の世界なのかぁと少しげんなりしながら思う。

確かに既存の魔道士の隊員を見回すと女性がいなかったような気もする。

認定試験会場には私以外の女性もいたのに。

…。

「あの・・・・。」

「なんだ。」

「質問なんですけど。」

「?」

「お城の魔道士ですけど、女性の方っていらっしゃるんですか?」

「いないが。」

「!」

やっぱりー。

心の中で濃紺の髪をした隊長に向かって指を指す。


「何故、いらっしゃらないんですか?」

だっておかしいじゃない。

確かに知っている限りの女性は皆、魔法は使えるけど微力だった。

でも、中には私の様に男性と同じくらいの魔力を持った方だって歴代にはいたはず。

まさか男女差別で魔力を持っていても女性は魔道士にはなれないとか?

と、思って聞いてみたら、イケメン隊長が少し怪訝な顔をした。

まぁ、多分、皆知っている一般常識みたいな事を聞いてしまったのかなぁとも思いつつ。

「…あ、えーと、実は私、先日頭を強く打ちまして。以前の記憶が全くないんですよー。」

へへっ。

と笑って予防線を張る事を忘れない。

イケメン隊長の眉間に更にしわがよる。

けっ。

イケメンは渋い顔をしても、イケメンだなぁ。と何気に思いつつ。

「…。そうか。」

「ええ。」

「…。確かにな。何故、女性には魔導力の強い者がいなかったんだろうな。」

と、普通に納得されてしまった。


え。

記憶を失った所はスルーですか。そうですか。


というか、誰も疑問に思わなかったのか。

「そもそも、そういうものだと思っていたからな。」

「?」

「男は魔力、女は聖力。そういうものだからだ。」

ん?

何?

それ。

魔力は解る。でも、聖力?

ケアル。みたいな白魔法的な?


「…そもそも、女性は魔道士認定式後、選別試験を受け、大抵が聖職者として城に勤務する。」

「聖職者ですか。」

「そうだ。」

「力は弱いとはいえ、普通に過ごしている女性たちよりも魔力は上の者が大抵残って聖職者になるんだ。」

「もちろん、男性よりは弱い力しか発揮出来ないが、女性の魔力はとても重要だからな。本来女性が使う魔力は聖なる力ということで聖力という。

魔力とは違い、破壊する力ではなく再生の力が主だ。ただ、まとめて魔力といってしまうがな。」


やっぱり!

白魔法ですね!

私にも、使えるかな。

あれ?

でも。

「?でも、そもそも試験内容は岩を破壊するっていう試験でしたよね。」

「…女性も男性もどちらも岩を壊す課題と、静物を再生する課題両方させているんだ。」

「…。」

「お前は、岩を壊す課題で大事になってしまったのでこちらに連れてきたが他の者は午後から静物再生の課題をこなす事になっている。」

「…。す、すみません。」

そうだったのか。

「お前も後でもちろん、そちらの試験もやってもらうからな。」

「…はい。」

そうかー。

私、白魔法、使えるかな。

ちょっぴりわくわくしてきた。

使えたらきっと破壊してしまった森林も再生できるかもしれないよね。

にこにこしていたらイケメン隊長の隣にずーっと静かに座っていた白い服に身を纏った男が落ち着いた声で、話の中に入ってきた。


…誰。

怒られている途中に入ってきた人だ。

つい、怒られていたので途中から入ってきても顔をあげませんでした。

すみません。

心の中で謝罪する。

「すみません、中々口を挟む暇がなかったものですから。」

青い軍服姿の魔道士の姿とは違い白い魔法使いの様な出で立ちのさわやかな青年がほほ笑みかけている。

なにこの、イケメン率。

しかも、なにこの爽やかな人。

しかも、申し訳ないとか謝っちゃって。

いえ、いいんです。

どんどん割り込んでください。

怒られていただけですから。


隣の不機嫌な魔道士の隊長を余所に、白い男性がぺこりと頭を下げた。


「初めまして。私、聖職者の隊長を勤めますバロンという者です。」


バロン!!!!

名前を聞いてテンションが上がる。

やだ!

猫の紳士のあのバロンと同じ名前!

私を猫の世界に連れてって!

なんちゃって。


あ、そういえば、こちら魔道士隊長とは違って紳士的なイケメン顔!

しかも、爽やか!

やだ!これ!

はっ!!

結婚相手にいいんじゃない!

バロンだし!

名前だけでテンションあがるわ!

この声と顔付きで絶対紳士だし!

聖職者の隊長ってことは白魔道士でしょ!

癒しでしょ!?

テンションあがる!!

しかも隊長!!

王子様狙いもいいけれど!

こちらの隊長も妹の旦那さんにはいいんじゃないかしら!

お姉さんの血が騒ぐわー!!!


そう思った私は勢いでこの聖職者の隊長バロンに

「独身ですか!?彼女、いますか!?」

と、前のめりになって聞いていた。


もちろん、魔道士の隊長に更にこっぴどく、しかも顔を真っ赤にされながら怒られた事は言うまでもない。


そんなに怒らなくてもいいじゃない。

そうして私の初出勤の午前中がまるまる潰れていったのだった。

そして間髪入れずに怒られたものだから、バロン隊長の独身なのか、彼女はいないのかの質問の返答が聞けずじまいで踏んだり蹴ったりである。


そして、その後、あれ?でも聖力って女性しかもってないんじゃないの?という理由から



「あ!バロン隊長って男性に見えますけど、本当は女性の方ですか?」

と続けざまに聞いたら今度は魔道士の隊長から拳骨をくらった。

女性にこぶしで拳骨をくらわせるとは!

男性の風上にも置けない奴!!!


だって、聖職者って女性がなる者なんでしょー?

そしてもちろん、この質問の答えも謎のままだ。


くそう。

あの、魔道士の隊長、覚えてろよ。(涙目)



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