中ボス
遅くなりました。
仕事が忙しいのです。
すみません。
門を越えた先は満月が輝く夜の世界だった。
フィールドは草原のままであったが、周囲が岩で円形に囲まれている。
おそらく、この中で戦うのだろう。
そう思いボスの姿を探してみると、対面にある一際大きな岩の上に、ウルフの三倍はある黒狼がいた。
あれがブラックウルフか。
沸き立つ心を押さえながらブラックウルフに向かって歩いて行くと、ブラックウルフが満月に向かって吠える。
「ウォォォォォォン」
草原にブラックウルフの遠吠えが響き渡る。
戦闘が始まるかと身構えたが、ブラックウルフに動きは無い。
俺が疑問に思った次の瞬間、3体のウルフがブラックウルフの背後に表れた。
さっきの遠吠えはウルフを呼ぶ為にしたということか……。
俺が様子を窺っていると、もう一度ブラックウルフが吠える。
「ガァァァァァァァァァァァァァァァァ」
先程とは比べ物にならない程の咆哮。
そしてブラックウルフの空気が震える程の咆哮と共に、ウルフ達が此方に向かってくる。
戦闘の始まりだ。
「ッ!?」
背後から飛び掛かってくる来る気配を感じ、攻撃を中断して回避を選択する。
次の瞬間、俺のいた場所にブラックウルフによる鋭い爪の一撃が放たれた。
俺は反撃しようとするが、今度は左右から反撃を邪魔するようにウルフが襲いかかってくる。
「ティア!頼む」
俺の言葉を聞いたティアが、襲いかかってくる2体のウルフに風の刃を放つ。
しかし2体のウルフは多少のダメージを覚悟しているのか、最低限の回避だけでそのまま襲いかかって来る。
「ッチ!」
2体のウルフの攻撃は俺の首に向かってきている。
このまま攻撃を受けると、致命傷で一撃で死ぬ可能性がある。
ブラックウルフへの反撃を中断して攻撃を回避する。
回避後に周囲を見渡せば、ブラックウルフは距離をとり、3体のウルフが俺を囲うようにしている。
戦闘が始まってから暫く経つが、俺は未だにウルフの一体も倒せていない。
戦闘が始まってから、先程の様な事が続いているのだ。
魔法を放っても、今まで相手にしたウルフと違い回避されている。
このまま戦闘を続けていれば、少しずつダメージを受けているウルフ達が倒れると思うが、その間に俺が致命傷を受けるかも知れない。
なので、あまり長期戦は望ましくない。
ここは少し無茶をする必要がありそうだ。
俺はそう決めると、ほとんどのMpを使って全身に魔力付与を行う。
ブラックウルフ達が襲いかかってくるかと思ったが、警戒して様子見をしている。
丁度いいのでそのまま準備を進める。
「ティア、魔力付与で強化して、俺が合図をしたらブラックウルフに攻撃しろ。その後は援護だ」
ティアに指示を出しながら、今朝作ったあるアイテムを取り出す。
そして取り出した、深紅の液体を一思いに飲み干す。
口の中に壮絶な味が広がるが、必要な事と思い我慢する。
準備が終わったので、ブラックウルフ達へと構える。
「ティア、やれ!」
ティアに合図を出し、俺はウルフの一体に駆け出した。
ウルフの一体に近づきながら、思考を加速させていく。
強化した俺の速さに驚いたのか、ウルフは動けていない
そんなウルフに薙刀を降り下ろす
何の抵抗も感じることなく、ウルフを両断する
ティアの一撃のお陰で、ブラックウルフに邪魔を受けずに1体を倒すことが出来た
砕け散るウルフを確認しながら気配を探ると、斜め後ろから2体のウルフと少し離れた真後ろからブラックウルフが駆け寄ってくるのがわかる
振り返ると、2体のウルフが近くまで来ていて攻撃してくる
俺は最小限の回避にとどめ、まずは左側のウルフに武技を交えた蹴りを放つ
「《スタン》」
左側のウルフを蹴り飛ばし、勢いを利用して右側のウルフには下から掬い上げるように薙刀を振るう
薙刀はウルフを両断して、倒すことが出来たが、そこにブラックウルフが襲いかかってくる
今の体勢では回避は不可能
左手を薙刀から離し、噛み付いてくるブラックウルフの口に突っ込む
Hpが四割近く減ったが、噛み付いたままブラックウルフの動きが止まる
すかさず薙刀を持ち変え、ブラックウルフの脳天に上から突き刺す
赤いエフェクトが起こり、ブラックウルフが砕け散る
蹴り飛ばしたウルフを確認すると、武技によって硬直した所にティアの風の刃を受けて砕け散る所だった
中ボス討伐のアナウンスが響き、アイテムを受け取る。
するとティアが目の前まで飛んできた。
ティアを誉めようとすると、しきりに俺の左腕を指差している。
見てみると、左腕の手甲と服がボロボロになっている。
確認してみると、手甲は破損して服は耐久値が減っていた。
手甲は右腕があるので破損状態で、消滅では無かったので良かったが、このままではまずい。
カオルさんに直してもらう必要がある。
なので取りあえず手甲を装備から外しておく。
このまま町に帰ってもいいが、ここまで来たので宣伝だけはしておきたい。
おそらく大ボスの門まで行くのは問題が無いので、宣伝をしてから帰ることにしよう。
俺はそう決めると、ブラックウルフがいた大岩に表れた門に向かう。
しかし中ボスでこれでは大ボスはどれくらい強いのか。
まだまだ強くなる必要があるし、配下を増やそうか。
俺はそう考えながら、門をくぐっていった。
ヨルが飲んだアイテムは次の話で出てくると思います。




