畑
ハヅキと別れた俺は、畑へと向かっていた。
店は建設中だが、出来てから直ぐに営業する為には、今のうちに畑を作って、材料を安定的に確保出来る様にしておかなければならないからだ。
畑に着くと、大工の人達が店を建てている途中であった。
素人の俺には詳しくは分からないが、見た限りでは完成にはもう少しかかりそうだ。
それでも、現実よりは圧倒的に早い。
玉鋼を手に入れる為に炉を作った時にも思ったが、こういった所はゲームらしい。
そんなことを考えていると、俺に話しかけて来る者がいた。
「おう、ヨルの坊主じゃねえか!店が出来るには、まだ数日かかるぞ!」
「こんにちは、棟梁。今日は畑の準備に来たんですよ。店で使う材料を用意するには、まだ足りませんから」
相変わらず、元気な人だ。
そういえば、初めて会ったときは驚いたが、今はもう慣れたな。
「そうか!さっきも言ったように、店が出来るにはまだ数日かかるから、しっかり頑張りな!店の方は俺達が完璧に仕上げてやるからよ!」
「宜しくお願いします。店の完成、楽しみにしています」
「おう!期待して待ってな!」
棟梁はそういうと、作業に戻って行った。
店の方も順調そうなので、俺も畑作りを頑張りますか。
さて、それでは早速、畑を耕していこうか。
前から少しづつ耕してはいたが、まだ畑にする予定の半分も耕していない。
今日中に全てを終わらせるのは無理だと思うので、とりあえず半分だけ終わらせて、薬草などを植える事にしよう。
俺は鍬を取り出して、作業を開始した。
ザクザク
ザクザク
ザクザク
ザクザク
ザクザク
ザクザク
羅刹のステータスは高いので、なかなかの速さで耕すことが出来る。
このまま一気に終わらせてしまおう。
ザクザク
ザクザク
ザクザク
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ふう、思ったより大変だったが、満足できる結果だ。
俺の前には、耕された大地が広がっている。
鍬一本でこれだけ耕すのは大変だったが、俺は楽をした方だろう。
種族が羅刹で良かった。
これで耕すのは終了だ。
そして次は薬草などを植えるのだが、その前に一つスキルを取得しなければならない。
【農業】のスキルだ。
それは何故かというと、薬草などの植物はそのまま植えるのではなく、種でなければならないのだ。
そして、その種を作るのに必要なのが【農業】の技能《クリエイト・シード》。
一つの植物から複数の種を作る事が出来る。
それでは、スキルを取得しようか。
スキルの取得だが、スキルスロットの空きが二つあったので、ついでにもう一つスキルを取得することにした。
その結果、俺のスキルはこうなった。
ステータス
ヨル 羅刹
セットスキル(13)
【百鬼夜行Lv3】【薙刀Lv48】【土魔法Lv30】【気配察知Lv67】【調合Lv51】【錬金Lv28】【木工Lv6】【石工Lv3】【裁縫Lv1】【鍛冶Lv44】【暗視Lv7】【農業Lv1】【徒手格闘Lv1】
新たに取得したのは、【農業】と【徒手格闘】。
【農業】を取得したのは、さっきも行った通り種を作る為で、【徒手格闘】は決闘で思う所があったからだ。
【徒手格闘】の武技には、俺が受けた様な相手の動きを阻害する物が多い。
それに、他の戦闘スキルの武技と比べて、【徒手格闘】の武技は使った後の硬直がほとんど無いのもいい。
それにしても、スキルレベルの差が激しいな。
そのうち、何とかしなければ………………。
少し話がそれてしまったな。
今は畑について考えなければ。
【農業】のスキルは取得したので、早速《クリエイト・シード》で種を作ろう。
薬草を取り出して、武技を使う。
「《クリエイト・シード》」
持っていた薬草が光り、光が収まると俺の手の中には種が三つあった。
どうやら、薬草一つで三つの種が出来るようだ。
残りの薬草を全て種に変えると、薬草の種は六十個程になった。
このまま増やしていけば、いつでも十分な量の薬草が手に入るだろう。
それでは、魔力草や他の植物も種に変えていくか。
全ての植物を種にしたので、植える作業に移る。
種にしたものの中には、毒草もあるので気を付けなければ。
間違えて毒薬を作るなんて洒落にならないからな。
…………うん、本当に気を付けよう。
そんな事を思いながら、俺は十分に気を付けて種を植えていった。
それと種を植えるのは、なかなか大変な作業だ。
これから育てる物も増えていくだろうし、効果の高いポーションなどを作る為に蒸留水を用意したり、技能ではなく手作業で作らなければならない。
それに新しい素材を手に入れる為に、少しは攻略もしなければならない。
これは、本格的に誰か雇った方がいいかもしれないな。
店や畑の用意は出来てきたが、他にもやらなければならない事は多い。
【魔力付与】の件もあるし、店が出来る前に一度カオルさんに相談しに行くか。




