一歩
一歩進むと足が埋もれた。焦ってひき抜こうとしたらもうかたほうのあしも取られてしまった。
そうやって、今の僕になってきしまった。そんな浅く弱い土台に力強さがあるわけでもなく、かといってかけがえのない宝物が埋まっていたわけでもない。
どこにでもあるような、平凡な。
僕だって、テレビで見たあの有名人のように、素晴らしい土台に、根を大きく大きく伸ばしたかった。
でもこの世界は、僕には歩けるようなものじゃなかった。きっと、この世界には、この地面を歩ける人と歩けない人がいるのだろう。きっと歩けない人が大半で、なら仕方ないと割り切ってしまうのだろう。
ゆっくりとゆっくりと、僕はその土台と一体化していく。このままこの弱い大地に、まるで枯葉のように風化していくだけなのだろうか。
否!
僕は、この恐ろしい世界で、あんなにも希望に満ちて、一歩を踏み出したはずなのだ。この一歩を、その勇気を、忘れてなるものか。
この世界には、この地面を歩き出そうと思える人と、思えない人がいる。
一歩でいい、たとえそれが過ちへ転じたとしても、一歩を踏み出さない者に、才能を語る資格はない。




