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序章

最後まで読んでいただけると幸いです。

都心にあるビルの屋上。私のお気に入りの場所一つだ。

「今日もいい天気だなーん」

腑抜けた声で言っても、ここなら誰にも聞かれない。そもそも立ち入り禁止区域だし。

と、パーカーの内ポケットの中が振動する。

「もしもし?」

スマホを通話モードにしてから話し掛ける。相手は分かっている。このスマホには二人しか入っていない。一人は学生だからまずないと思う。

『A地区23。窓写りだ』

相手はそれだけ言うと、通話を切った。

「マガラの奴、もうちょっとマシな言い方出来ないのかねぇ」

とは言え、それが私の仕事なので仕方ない。でなければ、私が作られた意味がない。

袋から刀を取り出し、スマホで座標を確認する。

「あれ、ここじゃん」

わざわざ向かう手間が省ける。一跳びで鉄枠の上に立って、私はそこから飛び降りる。

「CODE-C:モード白刃」

刀を鞘から抜く。その刃で空間を切り裂いて、アンダーワールドに入る。

「確か窓写りとか言ってたっけ」

都市伝説"窓写り"。高層ビルの窓清掃員がよく見るものだったと思う。窓に写った自分が違う動きをして、驚いて落ちた人間を引き込むやつ。となると、敵は私と見た方がいいかな。

「来たか」

私を白黒にしたような奴。得物も同じ。

血が騒ぐ。早く斬りたいと本能が叫ぶ。なんとか理性を保ちながら、私は走る。

刃が空を切る。防がれて、火花が散る。

「アハッ」

私の中で理性が弾け、握る手に力がこもる。

窓写りは私の攻撃についてこれていない。とりあえず心臓に狙いを定める。

「オルァ!」

全力で突く。確実に心臓を貫いた。それでも私は止まらず、ビルの壁を突き抜ける。二枚ほど壁をぶち破ったところで止まる。

今の私の顔は酷く歪んでいるに違いない。何故なら。こんなにも楽しいのだから。

窓写りが睨んでくる。と、その姿が唐突に消える。

「そうか……窓に飛んだか」

窓写りっていうくらいだし、窓が本体かもしれない。となると、厄介だ。何せ、ここは都心のビル街。窓など無数に存在する。

「いいじゃん。鬼ごっこも嫌いじゃないし」

全部の窓を叩き割っていくのも楽しそうだ。開けた穴から外に出る。

「さて、どこにいるかな……?」

舌なめずりしながら辺りを見渡す。

静けさだけが辺りを支配する。気配すらない。いくら待っても現れない。

苛立ちを覚え始めた頃、いきなり背中を斬りつけられた。反撃するがそこにはもう何もない。

「やってくれるじゃん……!」

傷はもう治りかけているので問題ない。それより問題はどうやって窓写りを捉えるかだ。瞬間移動をしているような相手を捉える方法は二つ考えられる。一つは相手の移動速度を上回る予知能力。それはあくまで個人の資質なので、私には不可能だ。残る一つは、攻撃を受けてから相手が移動する前に攻撃出来る鋭い反射神経。私にはこっちのが性に合っている。

「どこから来る……?」

どこから来ても対応できるように、神経を尖らせる。

またしても死角から斬りつけられる。右の横腹辺りだ。そのコンマ一秒後には、私が右手に持っていた鞘が窓写りの頭部を直撃する。

「やれば出来るものだね。私もビックリしてる」

倒れている窓写りに言う。窓写りは変な方向を見ると、そのまま消えてしまった。

「なるほど。そういうこと」

私には、もう敵のトリックが読めてしまった。では、最後に。

「派手に散ってもらうか」

私はわざわざ交差点の中央まで歩いて、敵を待つ。四方はビル。窓写りからすれば絶好の位置に私はいる。

キョロキョロと辺りを見回すが、何もない。まぁ、相手も隙を伺っているのだろうと気長に待つ。

それから一時間、動きがない。

「逃げはしないから、まだいるはずなんだけどな……」

いい加減アンダーワールドから出たい。

背後で物音がする。首だけ振り向くが、何もない。

気のせいか、と前に向き直った時、ずぷり、と私の胸に刀が突き刺さる。

「なんてね」

私は刀をを振るい、窓写りの目を潰す。

おおよそ声とは思えない叫びを上げる窓写りの腹を踏みつけ、仕返しとばかりに刀をその胸に突き入れる。

「お前の能力は、視線の先の窓に身を隠すことだ」

私は己の胸に突き刺さった刀を抜いて、投げ捨てる。

「お前らU.W.E.の好物は人間の脳だから、頭は狙ってこないのは分かってた。けど、それが仇となったな。私は異常でね、脳を破壊されない限り死なないんだ」

グチグチと音を立てて胸の傷が塞がっていく。

「もちろん、お前の本体の場所も知っている」

窓写りの耳元で囁く。慌てた様子である窓を見つめる。

「なるほど、そこか」

ただのハッタリだったが、見事に引っ掛かってくれた。刀を鞘に仕舞い、跳ぶ。ビルの窓枠に足をかけ、どんどん上へ行く。

一ヶ所だけある黒ずんだ窓。これが奴の本体だ。

通り抜けざまに一閃。手応えはある。鞘を持った右手で、突起物を掴む。

「足りないか……」

一太刀じゃ足りない。こんな高所じゃさっきみたいに通り抜けざまにしか斬ることが出来ないし、その一瞬ではせいぜい三太刀が限界だ。でも、目測では三十太刀は必要。

「CODE-A:モード夜桜」

刀の能力を切り替える。

手を離し、窓写りの本体に一直線に落ちていく。

「ハァァァァァァッ!」

黒ずんだ窓を斬る。その直後、圧縮された未来から残り二十九の斬撃が襲いかかる。

断末魔と思しきかん高い金属音のような音とともに、アンダーワールドが崩れ始める。納刀し、袋に刀を仕舞う。

フードも被る。白銀の髪に蒼い瞳など、日本では目立ち過ぎる。

やがてアンダーワールドは霧散し、元の世界に戻る。

空は相変わらず、いい天気だった。


こんな感じて書いていきます。

設定は徐々に開けていくつもりです。

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