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魔族と届いた悲報

 自分で言うのもなんですが、私はエレメンでも有数の魔法使いです。小説や漫画で言えばチートな存在で、自分勝手に生きても誰からも文句を言われないでしょう。 

 でも何ででしょうね、エレメンに戻って来てから悩み事が倍増した気がします。ちなみに昨晩も堅物神官の企みにより、紅葉と離れての寂しい一人寝。

 ベッドに腰を掛かけながら頭をフル回転させていると、ドアがノックされました。

 

「せい君、おはよ…難しい顔をしてどうしたの?」

 紅葉は挨拶もそこそこに私の隣に座ります。

 

「冨楽先生に渡す武器の事でちょっとね」

 冨楽先生に武器を渡すのは簡単です。でも武器は何かを傷付け命を奪う為の道具。武器は誰かを守る為にある、そんなのただの詭弁です。


「何か問題があるの?」


「永久凍土の剣は強力だし、ブリザードタイガーの手袋と組み合わせれば強力無比な装備になるんだよ。でも、それが問題なんだ」

 確かに永久凍土の剣は氷属性だから冨楽先生のアーツと相性が良いですし、ブリザードタイガーの手袋があれば手が凍傷に掛かる事もありません。


「やっぱり強い武器を持っていると貴族に目をつけられたりするの?」


「確かに強力な武器を持っていると難癖をつけて奪おうとする貴族はいるよ。でも、冨楽先生は織やんの弟で私の知人。いくら貴族でもそんな馬鹿はしないよ。むしろ怖いのは冨楽先生の実力と武器のバランスがとれていない事、そして戦場で突出して一人になる事さ」

 実力と武器のバランスがとれていないと、自分の強さを見誤ってしまいますし、戦いに慣れていない人が強い武器を持つと、一人だけ突出して敵に囲まれてしまいます。


「でも、淳子ちゃんや館老さんと一緒にいれば冨楽先生も無理はしないと思うけど」

 ちなみに、その二人も悩みの種なんですよね。


「そうなると寺柳さんの武器と館老さんと契約する精霊を決めなきゃいけないし、三人の連携も考えなくちゃ駄目なんだよ」

 再び頭をフル回転させていると、紅葉が嬉しそうな顔でクスリと笑いました。


「やっぱりせい君は私の自慢の彼氏だ。ネサンスの人達が言ってたの”ジャスティスファングがその気になれば、いくらでも好き勝手に生きれる”って。でもせい君は好き勝手に生きるどころか他人ひとの為に一生懸命悩んでる。私はそんな優しいせい君が自慢なの」

 

「ありがとう。見た目も自慢できる彼氏なら良かったのにね」

 でも、現実は紅葉の趣味を疑われるでしょう。


「またそんな風に言う。私はせい君の顔も好きだよ。前から気になっていたんだけど魔族は今どうしてるの?キヨキ聖皇国と戦争をしていたら攻めて来たりしないかな?」


「魔族は自分達の住んでるアルジアル大陸からは出てこないよ。それが停戦の約束だったし、魔族はもう攻めてくる必要がなくなったんだ」

 動物がマナの影響で進化したのが魔物、そして魔族はマナの影響で進化した人間。


「必要がない?せい君達が魔王を倒したから攻めて来ないんじゃないの?」


「魔族が住んでいるアルジアル大陸はマナが濃すぎて植物がまともに育たないんだ。作物を植えても毒を持って殆んど食用にならない。カイラインは国の食料事情を解決する為に侵攻して来たんだ」

 多分、唆したのはジャンティー・ミゼル。何故なら魔族の神の名はクラージュ・ミゼル…誰か気付きましょうよ。


「でも、そんな話はネサンスで聞かなかったよ」


「だってこの話は一部の人間しか知らないなんだよ。魔王カイラインは極悪非道な悪者じゃなきゃ為政者にとって都合が悪いのさ」

 実際の魔王カイラインは民の事を一心に思う立派な王でした。


「でも、それならまた新しい魔王が攻めてくるんじゃないの?」


「魔族に土壌から余分なマナを吸い出すマジックアイテムを渡してあるから大丈夫だよ」

 敢えて公表しないのは、いつ魔族が攻めてくるかも知れないと言う危機感があれば人間同士の争いが少なくなる筈…だったんですけどね。


――――――――――――――


 ラシーヌは周囲を広大な森に囲まれており、エルフの許可がなけれ町に辿り着くのはまず不可能です。  

 私達は客人として扱ってもらえたのでラシーヌ城にもスムーズに辿り着けました。

 ラシーヌ王との会談も滞りなく進み、館老さんの精霊契約に着いて話し合っていた時です。

 ナトゥーラ様からの緊急連絡が来たんです。


「セイガさん大変です。サクセスがキヨキ聖皇国との戦いを表明しました」

 ネサンスの調査員の情報によると木谷君と瀬羽さんが大活躍したらしく、サクセス王が強気になったらしいです。

 それにジャンティー・ミゼルがネサンスの占いに介入した可能性もありますね。

どうやら今回も否応なしに戦いに巻き込まれた様です。

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