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勇者の国

 朝焼けの海に浮かぶ一艘の船。

 そして水平線から登ろうとしている太陽。

 まるで私の旅を祝福しているかの様です。

 …現実逃避は止めましょう。

 ナトゥーラ様が用意してくれたのは船と言うよりもボートでした。

 確かに、小回りは効くし見つかりにくいと思います。

 ユラユラと揺れる様は、不安定な私の人生を映しているんでしょうか?

 そして太陽は登ると同時に雲に飲み込まれました。

 直射日光はお肌の敵です…特に私のデリケートな生え際の天敵なんです。

 暗雲じゃないだけ良しとしましょう。


「セイガさん、本当に一人で行くんですか?」

 ナトゥーラ様が心配そうな顔で私を見ています。

 今回の私を見送ってくれるのはナトゥーラ様とベルク様のお二方。


「単独行動の方が安全ですから。何より紅葉達に汚い物を見せたくありませんし」

 キヨキ聖皇国は、耐性がないとトラウマに成りかねない国なんですから。


「お前のふざけたマジックアイテムを持っていかなくて大丈夫なのか?」

 ベルク様が言っているふざけたマジックアイテムとは、時空リュックとマジックルームの事だと思います。


「あれは紅葉達の所に置いていきます。キヨキ聖皇国に渡ったら大変ですし」

 マジックルームには貴重な触媒や強力なマジックアイテムが置いてありますし。


「本当に満中さんに何も言わずに行くんですね。嫌われますよ」

 旅立ちの時間は紅葉達には教えていません。

 夜逃げならぬ朝逃げ状態。


「嫌われても紅葉が無事なら、その方が嬉しいですから。では、行って参ります。アクア…?」

 不思議な事に、魔法を唱える前に船が波に乗ってゆっくりと動き出しました。

 

――――――――――――――


 私の船旅は順調に進んでいました。

 そう、恐い位に順調です。

 船は魔法を使わなくても、導かれるかの様に海路を進んでいました。


(ジャンティー・ミゼルが干渉してるんだな)

 この世界の神は、異界人の王を早く殺したい様です。

 思えば、私達四人は昔からジャンティー・ミゼルの手のひらで踊らされていました。

 都合良く人と出会い、都合良く物が手に入る。

 今思えば、まるでシナリオがあるゲームの様でした。

 いや、シナリオはあったんだと思います。

 ジャンティー・ミゼルが自ら書いた悪趣味なシナリオが。

 シナリオ通りに従い、剣士そうちゃんは殺されました。

 シナリオに逆らわなかった僧侶オリやんは石にされました。

 自分の思い通りのシナリオにしようとした勇者ひでちゃんは、討伐され様としています。

 シナリオから逃げた魔法使わたしいだけが、自由を手に入れました。

 再び異世界に戻って来た魔法使いは、またジャンティー・ミゼルにより書かれたシナリオの登場人物になってしまうんでしょうか?


(今は登場人物を演じてやる…だけど、大人になった魔法使いはシナリオの裏を読むんですよ)

 どんな意図で書かれたシナリオなのか、きちんと見させてもらいます。


――――――――――――――


 現実逃避したいです…。

 予想以上にキヨキ聖皇国は悪趣味でした。

 国中にキヨキ聖皇家一色なんです。

 勇者公園に聖皇橋、ヒデオタウンに聖皇家博物館。

 果てはキヨキ聖皇生誕二十五才の像。

 ちなみに私は二十五才の誕生日を一人で祝いました。


(随分と自分に都合良く解釈してるな)

 私がいるのはディップルシティにある魔王討伐記念館。

 魔王カイラインを倒したのは勇者ヒデオだそうです。

 そして私達三人は英ちゃんの忠実な部下になっていました。 

 ちなみに、私はこんな事を言った事になっています。


「僕の名前はジャスティスファング。ヒデオ様にお仕えしている魔法使いだ」

 四人は何があって対等の友達と言ったのは英ちゃんですよ。


「フィルは僕なんかよりヒデオ様にこそ相応しい」

 確かに、英ちゃんの方がイケメンですけど、寝とりの過去をここまで都合良く美化しますか?


「僕は日本にもどり、ヒデオ様のご家族へキヨキ聖皇の偉業を伝えて来ます」

 魔王城に一歩も入らずに手柄だけ手にいれたのは確かに偉業でしょう。

 塵一つ落ちてない清潔な町なのに私の気分は最悪です。 

 首都のヒデオタウンに行くのが怖くなってきました。

 いや、英ちゃんは確かに勇者です。

 自分の名前を着けた町に臆面もなく住めるんですから。


―――――――――――――――


 マジですか…。

 キヨキ聖皇国のお金単位がヒデでした。

 コインには大きくHが刻まれています。

 魔石を売って三十万ヒデをゲット…ちなみにパンは百ヒデらしいです。

 

(しかし、国境に検問も作らないとはね…キヨキ聖皇国まで来ればロンギングに感染するから検問は必要ないってか)

 聖皇都行きの馬車は二万ヒデ…随分とぼったくっています。

 それでも馬車は満員で、すし詰め状態。

 もう嫌だ…。

 皇都に着くなり出迎えてくれたのは巨大な英ちゃん像。

 そして町の外壁にはキヨキ聖皇が活躍するレリーフが彫り込まれていました。

 お城まで一直線に伸びている石畳は綺麗に磨き抜かれいています。

 そして遠目にも巨大と分かる城。

 パンフレット (一冊一万ヒデ)によると、キヨキ城の特徴はカラフルな屋根。

 政治をする場所、要人をもてなす場所、民の訴えを聞く場所… 聖皇の家族がが住んでいる場所。

 それぞれが違う色で塗られているとの事。

 そして側室が住んでる場所も書かれていました。

 …堂々と税の無駄遣いを公表しているとは。

 ちなみに廊下も屋根と同じ色が塗られており、どこにいるかが直ぐに分かる仕組みになっているそうです。 

 色分けなんて英ちゃん以外は必要ないと思うんですが。

 ここは英ちゃんの英ちゃんによる英ちゃんの為の国ですね。

北海道に詳しい方がいましたら活動報告に協力をお願いします

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