ジャンティー・ミゼル
中途半端な知識で書いてる所があります
もし、貴方が異世界に行く人に会ったら何を注意しますか?
魔物、未知の風土病、文化の違い、色々あるでしょう。
ちなみに異世界経験者の私は神様に気を付けなさいとアドバイスします。
それも邪神や荒神じゃなく、善神に気を付けなさいと。
降臨してきた光は徐々に人の姿へと形を変えていきました。
そして現れたのは純白のローブに身を包んだ二十代後半くらいの女性。
新雪を思わせる純白の髪と澄んだ湖の様な碧眼の持ち主。
整った顔には赤ん坊を抱いている母親の様な穏やかな笑みを浮かべています。
「ねえ、せい君。あの綺麗な女の人は誰なの?」
「ジャンティー・ミゼル様だよ。紅葉、私の動きに合わせるんだ」
私と紅葉は地に片膝を着いて顔を伏せました。
ジャンティー・ミゼルの降臨に気づいた人達が教会から飛び出して来て、次々に私と同じ様に片膝を着いていきます。
その圧倒的な神聖さに圧倒されたのか久郎達も膝を着いていました。
「私の可愛い子供達、母に顔を見せて下さい。遠き世界のお客様も顔を見せてもらえますか?」
「ああ、ジャンティー・ミゼル様。お会いでき嬉しゅうございます」
代表して挨拶をした教会の司祭は感極まったのか落涙しています。
「まあまあ、大袈裟ですね。母が子供に会いに来るのは当たり前ではないですか。ブリーゼ、シェルム、貴女達には辛い思いをさせましたわね。私は一人の子だけを贔屓する事は出来ません。ですからプレゼントだけでも受け取ってもらえませんか?」
そう言うとジャンティー・ミゼルは胸の前で手を組みました。
次の瞬間、ミゼル様の手から真っ白な光が溢れだしました、光は二筋に別れブリーゼとシェルムの前へと向かっていきます。
そして光は二人の前で徐々に形を変えていきました。
ブリーゼの元に向かった光は珠へと変わり、シェルムの元に向かった光は剣へ姿を変えました。
「珠は石化した人間を瞬時に元に戻す事が出来ます。剣は魔法防御を高める力を附与しました」
つまり、オリヤンを治して英ちゃんと戦えと言う事。
「そしてお久し振りですね、ジャスティスファング。いえ、セイガ・アカイ。前回は何もお礼が出来ず申し訳ありませんでした。何かお望みの事はありませんか?」
そしてさらりと私の正体をばらすジャンティー・ミゼル。
「私の望みはキヨキ聖皇国に捕らわれているオリジンを救いだす事と今回ガイアに無理矢理喚ばれた人達を無事に日本に帰す事です。ミゼル様、何とぞお力をお貸し下さい」
「まあ、それでは貴方は何も得をされませんわ。それでも宜しいのですか?」
私がいくら強力な魔法を使えても神であるジャンティー・ミゼルには敵う筈がありません。
「自分より大切な人が出来ましたので」
「そうですか、貴方も大人になったんですね。その願い聞き入れましょう。可愛い子供達、母はいつも見守っていますからね」
ジャンティー・ミゼルはそう言い残して天に帰って行きました。
(悔しいですけど、今は彼女の駒になりますか)
強い者に悪戯に楯突いて、周りを危険に晒す訳にはいきませんし。
空をじっと見つめていたらカコちゃんが駆け寄って来ました。
「しょうちゃん、大変!!カミカちゃんがしょうちゃんの正体を聞いたらショックで気絶しちゃった」
私がジャスティスファングだって事実は神様の降臨より衝撃的なんでしょうか。
―――――――――――――――
気絶したカミカさんの看病は女性陣にお願いして、久郎と冨楽先生にマジックルームへ来てもらいました。
「これから話す事は他言無用だ。ジャンティー・ミゼルを見てどう思った?」
「おい、神様を呼び捨てかよ?優しい女神様にしか見えなかったぜ。お前だってエレメンのグレイトマザーだって言ってたろ」
そう、確かにジャンティー・ミゼルは優しい女神様です。
ただし、エレメンの民とエレメンの民に味方する者にはですが。
「心理学のグレイトマザーって知ってるか?」
「ユングが説いた元型一つですよね。母性には無限の優しさと子供を束縛すして自分に従わせる二面性がある、そんな感じでしたよね」
流石は先生、スラスラと答えてくれましたね。
「もっと言い方を変えればモンスターペアレントだな。ジャンティー・ミゼルはエレメンの民には無限の優しさを持っている。そしてエレメンの民の為には、どんな労苦も厭わない。エレメンの民が望むなら異世界召喚に手を貸すのも何とも思わないぐらいにな」
「それじゃ、お前の召喚に協力した第三者ってのは…」
サクセスが作った契約書では、私を拘束するのは不可能。
それこそエレメンで出来るのは、ジャンティー・ミゼルくらいでしょう。
「あの方にとって異世界の人間は輸入動物と変わらないんだよ。さしずめオリヤンはエレメンの民の役に立っているから米かな。そして英ちゃんはハブを駆逐する為に持ち込まれたマングース。そのマングースがハブじゃなく固有種を駆逐し始めた。だからジャンティー・ミゼルはマングースを駆逐出来る外来種の召喚に協力したのさ」
「米とマングースか。さしずめお前は動物園にいるハゲウアカリだな…」
ハゲウアカリ、アフカリに生息するおでこの広いお猿さん。
「またマニアックな例えをしてくれたな。確かに私はウアカリと似てるよ」
「だろ?かこもしょうちゃんがいるって大騒ぎしたんだぞ」
「全く…とにかくジャンティー・ミゼルには気を付けろ。怪しいと思っても絶対に口にするなよ。ジャンティー・ミゼルはエレメンにとっては絶対的な存在だ。下手したらエレメン全てを敵に回す事になる」
多分、私以外のメンバーもジャンティー・ミゼルが選んだんでしょう。
紅葉、久郎、かこちゃんは私を引き込む為に。
冨楽先生達はオリヤンにキヨキ聖皇国を裏切らせる為に。
そして木谷君は無知な正義感を刺激してキヨキ聖皇国と戦わせる為に。
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