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友人の墓

 暖かな日差しに青く澄んだ空、行く道はサクセス国内の街道ですから魔物や盗賊が出没する可能性は低め。

 絵に描いたようなドライブ日和り…私が操っているのは馬車ですけど。

 青々しい若葉に小鳥のさえずり、街道脇を彩る色鮮やかな草花。

 絵に描いたようなデート日和り…私の隣にいるのは冨楽先生(おとこ)ですけど。

 私に聞きたい事があるらしく冨楽先生が隣の席をキープ、ちなみに紅葉は馬車の奥でガールズトークの真っ最中。

 それにしても、何で女の人の笑い声ってあんなに響くんでしょうね。

 時折、私の名前が聞こえてくるんですが、内容までは分からず気になって仕方ありません。


「それで私に聞きたい事って、なんですか?」

 私としては早く話を切り上げて紅葉とイチャイチャしたいんです。


「私のアーツはどんな物なのでしょいか?お恥ずかしい話ですがいまだに上手く扱えないんです」

 冨楽先生のアーツはランクSSSの氷竜斬。

 威力も強く使い勝手が良いアーツです。


「ショウガ、先生がこう言ってるんだ。何か教えて差し上げろ」

 ガールズトークに混れずに御者台近くにいた久郎が会話に割って入ってきました。


「おい、何でお前が命令すんだよ」


「俺はかこの保護者だ。学校の先生に気を使うのが当たり前だろうが」

 そう言えば久郎はかこちゃんの授業参観や三者面談にも行ってましたね。


「答えは簡単、氷竜斬に合う剣がない事が一番の原因だよ。氷竜斬は武器に氷竜の力を付与するアーツ、かすっただけでも凍らせる事が出来る。先生は途中で剣を握れなくなるんでしょ」


「ええ、そうです。情けない話ですが柄が冷たくなり過ぎて持てなくなるんです」

 そう言いながら恥ずかしそうに顔を臥せる冨楽先生。

 悔しいですけれども、イケメンってどんなポーズをとっても絵になるんですね。


「それで良いんですよ。鉄の剣にまともに氷竜斬を付与した日には、剣が冷たくなり過ぎて手の皮膚が剥げかねませんから。剣はあてがありますから大丈夫ですよ。一番の心配も杞憂で終わりましたし」


「杞憂?冨楽先生のアーツには何があったんだ」

 

「氷竜だけじゃなく竜は気位が高いんだよ。見ず知らずの人間が自分の力を使っているのが分かったら怒り狂うくらいにな」

 背中に乗る時は土足厳禁、体の汚れを落としてからじゃなきゃ怒る…まるで昔のヤン車です。


「私は氷竜どころか竜にすら会った事がありませんよ」


「先生がオリヤンの弟だからですよ。前回の戦争で人間に味方した竜は少なくないんです。オリヤンは竜の傷を良く治していましたから」

 先生が恩のあるオリヤンの弟だから力を借りても怒らないんでしょう。


「竜か…そんなに強いのか?」


「竜種にもよるけど強いよ。旅団位は簡単に全滅させる」

 鋭い爪と牙、岩も砕く力、硬い鱗、様々なブレス…強いなんてものじゃありません。


「そもそも竜ってなんなんた?でかいトカゲじゃないんだろ」


「半分正解だな。恐竜がマナを体に蓄えて竜種に進化したんだとよ。ちなみに魔族は類人猿がマナを蓄えて進化したらしい」

 西洋の竜も恐竜の化石から想像されたらしいですし。


―――――――――――――


 それはサクセスの首都を立って三日目の事。

 宿屋で紅葉と休んでいると、シェルムが神妙な面持ちで話し掛けてきました。


「アカイ、明日寄りたい所があるんだ」


「明日ですか?明日はサクセスの国境を超えますが、あの辺りには何もない筈ですよ」

 あるとしたら草か木くらいの筈。


「お前が帰ってから出来たんだよ。ほら、ジャンテイ・ミゼル様が降臨なされた平原があるだろ、あそこに教会がたったんだよ。そこにソウシが眠っているんだ」


「そうちゃんのお墓ですか…」

 確かにそう君が英ちゃんに殺されたのなら、シェルムはそう君のお墓をキヨキ聖皇国にはたてないでしょう。


「ああ、頼めるか」


「むしろ私からお願いしたい位だよ。一日位遅れてもナトゥーラ様は怒らないさ」

 それにジャンテイ・ミゼル様の関連の教会をスルーするのは得策じゃありません。

 なにより私はそう君のお墓に手を手向ける事で、気持ちにけりをつけたいですし。

 

「せい君、私も小結さんのお墓に行っても良い?」


「せい君は賑やかな方が好きだったからお願いするよ。それじゃ明日も早いから寝よう」

 悲しいかな、どこの宿屋も壁が薄くて未だにお預けをくらっていたす。


――――――――――――――


 そう君のお墓は英雄に相応しい立派なものでした。

 

(そう君、久しぶり。またエレメンに来たよ。そう君が食べたがっていうんまい棒持ってきた…私が英ちゃんを倒すから見守っていてくれるかな)

 

「アカイ、ありがとう。マナカも悪いな。ソウシも絶対に喜んでいるよ」


「ああ、次はオリヤンも一緒にお参りに来てうんまい棒で何が一番美味しいか決着をつけるよ。そう君、私はチーズが一番だと思うよ」

 ちなみにそう君がコンポタでオリヤンはサラミ派。


「えー、せい君、うんまい棒はキムチが一番だよ」


「ソウシ、安心しろ。アカイにも可愛い彼女が出来た…ソウシ、会いたいよ」

 次の瞬間、上空から一筋の光が降りてきました。


(あれはジャンテイ・ミゼル)?


 やっぱり、私は彼女が書いた脚本の参加者の様です。

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