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ジャステイスファングの天敵?

 富楽先生とソヨカさん達をどうやって会わせるか?

 ただ今ソヨカさん達は紅葉と一緒に寝室に待機中。

 ちなみに寝室は、私達のいる研究室の隣にあります。

 富楽先生はプロの教育者、年頃の女の子と接するのは慣れている筈。


「ブリーゼ、私が部屋の外から気持ちを安定させる魔法を掛けるから娘さん達と富楽先生を会わせてみませんか?」

 多分、ソヨカさん達は富楽先生位の年の男の人には過敏に反応はしない筈ですし、富楽先生なら適度な距離を保ってくれる筈。

 そして私がいたら泣かれる可能性が大ですから、私は逃げさせてもらいます。

 理由は分かっていても地味に傷つくんですよね。

 まずソヨカさん達がいる寝室に精神安定の魔法と防音の魔法を掛けました。   

「多分、これで大丈夫だと思います。私はここで待っているので何かあったら声を掛けて下さい」 

 ブリーゼ達が研究室にを出て少しすると、紅葉とシェルムが研究室に入って来ました。


「流石は私のせい君!!ソヨカちゃんもエイバちゃんも富楽先生と楽しそうにお話をしてるよ」

 紅葉がニコニコと嬉しそうに笑いながら私の隣に座りました。


「多分、富楽先生の対応が良かったんでしょう」 

 決して、顔の差ではない筈。


「意外と顔の差も大きいんじゃないか?アカイは昔から女受けが悪かったもんな」

 でもシェルムはニヤニヤと嬉しそうに笑いながら私の顔を指差してきました。

 確かに貴族の女性が主催のパーティーに私だけ呼ばれなかった事が何度かありましたし。


「そのお陰で研究を進める事が出来たんだよ。私は賑やかなパーティー会場より静かな研究室の方が落ち着くし」

 決して、負け惜しみ何かじゃありません。

 

「まっ、確かにお前の魔法には随分と助けられたもんな…フィルの奴も良く自慢してたんだけどな」

 私の自慢の魔法使いさんでしたっけ。

 でも最終的には魔法だけが重宝されたんですよね。

 

「そんな昔話に意味はありません。今のせい君は私の自慢の彼氏なんです」

 

「おーおー、お熱い事で。もしかして俺は邪魔者だったか?」

 確かに紅葉の言葉は嬉しいですから、今すぐにでもイチャイチャしたいんですが。


「いくら私でも先生の近くでイチャイチャする勇気はないって…シェルム、プロの戦士から見て富楽先生の動きはどうだ?」

 ブリーゼレベルの戦士なら直接戦い方を見なくても、普段の動きである程度の実力が分かる筈。


「ありゃ素人だよ。お前の女の方がましだぜ」

 

「やっぱりか。それなら先生達三人も次の依頼に連れて行かなきゃな。最低でも寺柳さんと館老さんに忠告が出来れば安心なんだけど」

 特に館老さんのアーツは不味いですし。


「そいつらのアーツは何なんだ?」


「寺柳さんが戦士系のソードダンス、館老さんが精霊召喚だよ」


「召喚…しかも精霊召喚か…不味いな。アカイ、大丈夫なのか?」

 大丈夫じゃありませんが、あの二人が私の話を信じてくれるとは思えません。


「せい君、何が不味いの?二人共、私のお友達なんだよ」


「精霊は自然の意志、つまり自然の味方。よほど強力な信頼関係がなければ自然破壊に繋がる様な強力な魔法は使ってくれないんだよ。樹木や大地にも精霊は宿っているんだ。紅葉も知り合いより身内の方が大切だろ?」

 精霊は属性は違っていても、それぞれ密接な関係でいわば戚同士みたいな関係。


「そっか、木を燃やしたら木の精霊さんのお家が亡くなっちゃうんもんね。だからせい君もライオンさんと戦った時に周りに気を使っていたんだね」

 何も考えずに強力な範囲魔法を使ってナトゥーラ様に叱られたのは私です。


「それともう一つ問題がある。モミジ、お前はそのタテオイって女とアカイどっちの味方だ?もし二人から同時に助けを求められたらどっちを助ける?」


「それはせい君です…もしかして召喚師同士が戦う時は信頼関係が大切になるんですか?」

 

「そう、そうしたら何も出来ずに負けてしまう。抜け道はあるんだけど館老さんには無理だし」

 とりあえず紅葉が私を選んでくれて安心しました。


「抜け道?せい君どうすれば良いの?」


「代償を捧げるのさ。精霊の好む魔力や魔石を精霊に渡すんだ。中には人の魂や女性の体を好む精霊もいるんだよ。昔、敵対する国を倒す為に住民の魂を捧げた王様がいるそうだ。結果、敵国に大打撃を与える事が出来たけど国力が低下して負けたらしい」

 今の館老さんは魔力も弱いし、捧げる魔石もない。

 そしてサクセスの契約書を書き直さないと、違う代償を捧げる事を強制される可能性が高い。


「そんな…敦子ちゃんは大丈夫なの?」


「ソードダンス、剣を握った事がなくても、まるで踊るかの様に、次々と剣撃を繰り出せるアーツ。紅葉なら不味さが分かるだろ?」

 何しろ喚ばれた中で武闘派なのは紅葉だけ。


「剣の握りが甘いと威力が落ちるし、体力がないとアーツが終わったら隙だらけになるかな」


「それに足場が悪いとバランスを崩して地面や仲間を攻撃する可能性もある。ゴブリンやオーク位までなら有効だけど強い魔物には効かないよ」

 アーツ発動と同時にバックステップでかわされて、アーツが終わると同時に距離を詰められたらお終いです。

 依頼に一緒に来てもらえればシェルムに鍛えてもらえるんですけどね。


―――――――――――――


 今までの事がバレたらサクセスは国際的に孤立するでしょう。

 その為か、私だけが王の執務室に呼ばれました。


「ア、アカイに命ずる。リヤンのイッポ王の命に従いネサンスに行け」


「行けですか…何か勘違いしていませんか?私は貴方の命に従う理由はありません。サクセス王、貴方の愚行は許しがたいものです。何も知らない若者を国の都合だけで巻き込んだんですからね」

 執務室が剣呑な雰囲気に変わります。

 そりゃそうです、ただの冒険者が一国の王を罵倒したのですから。


「ぶ、無礼者。いくらリヤンの使者とは言え死罪は免れぬぞ!!本来ならお目見えの資格すらないのだぞ」


「ありますよ、私の名前はセイガ・アカイ。こっちの世界ではジャステイスファングの方が有名ですけどね」

 サクセス王と取り巻きの貴族の顔が一気に青ざめていきます。

 そりゃそうです、自国を滅ぼす要因をわざわざ喚んだ事が分かったのですから。


「ジャ、ジャステイスファング…嘘だ、あの者の魔力は測り知れぬと言うではないか」


「それは抑えているからですよ。おかしいと思いませんでしたか?ポッと出の冒険者にイッポが親書を託したり、貴方方が仕向けた実働隊が返り撃ちにあった事を。言っておきますが、貴方達じゃ私に傷すらつけれません」

 脅しを兼ねて魔力を解放します。

 濃い魔力が部屋を包み込み、リヤン王達を圧迫していきます。

 次の瞬間、私の頭に鋭い痛みが走りました。

 そこにいたのは一人のフェアリー…これは不味いです。


「全く、大人になってもお調子者は治らないんですね。セイガさん、遊んでないで早くネサンスに来なさい…それとサクセス王、私の可愛い弟子の平穏を壊した罪は重いですからね」


「ナ、ナ、ナ、ナトゥーラ様…はいっ!!行きます。直ぐに行きます」

 あのフェアリーはナトゥーラ様の使い魔。

 どうやらナトゥーラ様は使い魔を通じて会話をしてる様です。

 多分、私が使ったサンダーブランチの魔力を感じて監視していたんでしょう。


「よろしい。それとサクセス王、セイガさんの事を他所に洩らしたら国を滅ぼしますから覚悟して下さいね」


「流石はナトゥーラ様。正に亀の甲より年の功」


「セイガッ!!次に年の事を言ったらぶん殴るわよっ」

 やっぱり、ナトゥーラ様は何年経っても恐いです。


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