異世界にいく準備をしたら巻き込まれました
前の話にかこの台詞を付け加えました。
紅葉とはネットの掲示板で知り合ったんです。
私がモーさん牛乳で働いてますと書き込んだら、私モーさん大好きですってコメントをしてくれたのが紅葉だったんですよ。
それが切っ掛けで仲良くなったんですけど… 言い訳をさせてもらえれば知り合った当初は高校生だって知らなかったんです。
若い娘だっていうのはメールのやり取りで何となく分かったんですけど、まさか17歳の高校生で同じ町に住んでるとは思いませんでした。
もう1つ言い訳をさせてもらえれば、見た目がどストライクで性格も二重丸。
おじさんなんか相手にされないって思いつつメールのやり取りをしてたら紅葉の方から会いたいって言われて、まさかの逆告白…振られた今じゃ関係ありませんけどね。
そんな事を考えていたら、いつの間にか目的地に着きました。
「さあ、着きましたよ」
「ショウガ、ここで何を買うんだよ」
私が最初に来たのは作業着や安全靴を売ってる労働者御用達のお店です。
ちなみに私が仕事で愛用している作業着(胸ポケットにモーさん牛乳の社名入り)
も、このお店に発注してるんですよ。
「かこちゃんとも…満中さんの作業着だよ。お前は工務店で着てるやつがあるだろ」
久郎は工務店で働くガテン系なんですよね。
「だから何で異世界に行くのに作業着が必要なんだよ。普通は鎧とか防弾チョッキとか買うんじゃねえのか?」
やっぱり、私が着いてきて正解でしたね。
「慣れない人間が鎧なんて着たらまともに動けないし疲れで直ぐにダウンしちゃうんだよ。作業着は布も厚手だから枝に引っ掻けても破れないし袖口に隙間が出来ないから虫が入ってくる事もない。異世界の虫なんてどんな菌を持ってるか分からないんだぞ。医学が進んだこっちの世界でさえマラリアとかで年間何十万人って人が死んでるんだぞ」
討伐するにしても収集するにしても虫のお家にお邪魔する様なものなんですから。
「それじゃ安全靴も買うのか?」
「安全靴って結構な重さがあるだろ?向こうには車なんてないから場合によっては1日中歩き通しになるんだぜ。靴は防水性があるトレッキングシューズを何足か買えば良い。ここでは軍手も買うんだよ」
安全靴を履いて湿地を歩いたら移動だけでへばりますよ。
「軍手?何でだよ」
「指を動かしやすくて丈夫で通気性が良いし洗っても直ぐ乾く。しかも滑り止めのイボも着いていて安い。素人が金属の小手なんて使ったら腱鞘炎になるぞ。第一、誰がどんなアーツを持ってるか分からないのに戦い方を決めれないだろ?」
アーツには苦い思い出があるから言いたくないんですけど。
「ショウちゃん、アーツってなに?」
「かこちゃんならスキルとか才能って言った方が分かりやすいかもね。エレメンではその人が生まれつき持ってるアーツを判別する方法があるんだよ。アーツは戦いに使えるバトル系や鍛冶に使うスミス系とか多岐に渡っていて、さらにSSSからEまでランク付けされてるんだ。だからエレメンでは自分のアーツが役に立つ仕事に着く事が多いんだよ」
ちなみに私のアーツは厳重に封印しています。
「それじゃアーツがないと好きなお仕事につけないの?」
流石に不安になってきたのか、かこちゃんの目が潤んでいます。
かこちゃんを泣かせたりしたら、シスコンぐまがうるさいでしょうね。
「アーツは資格みたいな物だからあった方が有利って感じだよ。大事なのは自分の努力。それじゃ次はアウトドア用品の店に行くよ。それが終わったらスーパーで調味料とか保存食を買うぞ」
「アウトドア用品ってテントとかを買うのか?」
「テントも必要だけど持ち運びが不便だからな。とりあえず大きめのリュックに手回しのランタン、それに水をろ過する道具にサバイバルナイフか鉈。雨具も買っておけば便利だ。そういや久郎、お前の契約書も直さなきゃいけないんだよな。流石に今は持ってないか」
雨で濡れた服は容赦なく体温を奪っていきます。
「おう、きちんとお前の分も貰って来ておいたぞ」
…このシスコンぐまは何を言ってるんでしょうか?
「まさか、私の名前を書いたりしてないでしょうね?」
「経験者がいてくれたらかこが生き延びれる確率が高くなる。お前に嫌われても俺はかこを助けたいんだ…すまん」
久郎はそう言って私に土下座をしてきました。
「ショウちゃん、怒るなら僕を怒って。僕が一番悪いんだから」
かこちゃんまで土下座をする始末。
「はー、転移の魔方陣を構築するのは大変なんだぞ。言っておくけど私はスパルタだからな」
久郎とかこちゃんを見捨てたら寝覚めが悪いですしね。
…私も行くって言った瞬間、紅葉も喜んだのは気のせいでしょうか。
エレメンですか…あの人達はどうしてるんでしょうか。
まあ、会う必要もないんですけどね。
勇者にも護衛騎士だったあの娘にも。
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