十四年目の事実
一度、後半を消してしまい書き直しに
「そううですか。ところでオリヤンは…」「こ、こちらへどうぞ。馬は…私達が預かりますので。き、傷なんて絶対に着けませんから」
ブリーゼにオリヤンの事を聞こうとしたら、若い獅子人の男性が間に割って入って来ました。
獅子人の男性に案内されたのは頑丈な軍用の馬車。
飾りどころか乗り易さも考慮されていない実用一点張りの馬車。
「やれやれ、ご丁寧に魔法封じの魔方陣まで設置してくれて。信用をされていないな」
「あの子達はジャスティスファングを恐れているんですよ。失礼いたします」
ブリーゼはそう言うと恭しく頭を下げて馬車の中に入って来ました。
さっきまでの明るく無邪気な雰囲気は消え、今は落ち着いた淑女といった感じでまるで別人。
「ブ…オリベ夫人と呼んだ方が良いんですか?」
「以前と同じブリーゼで構いませんよ。それと先程は申し訳ありませんでした。私は今でもオリジンの守護騎士ブリーゼ・アブヘェルを演じる事を求められておりますので」
そう言って自嘲気味に笑うブリーゼの顔には疲れが色濃く見えます。
「大丈夫ですよ。なんとなく事情は分かりました」
事情は分かりましたが、まだ不安は消えません。
「せい君どういう事?せい君達が魔王を倒したのは十四年も前なんだよね」
「紅葉、この世界にはネットはおろかラジオすらないんだよ。情報の伝達は専ら口、もしくは本。だから世間一般では、大人になったブリーゼ・フガクさんではなく私達と一緒に旅をしたブリーゼ・アブヘェルのイメージの方が強いんだと思うよ」
昔憧れたヒーローには今でも高潔なヒーローでいて欲しいと思うのと同じです。
「それじゃ、せい君はどんなイメージを持たれてるんだろうね」
私がブリーゼと同じだとしたら…二十八歳にもなって、”僕の魔法は自然の意志。最恐の魔導師ジャスティスファング出現”とか”僕を怒る前に消えた方が良いよ。これから、ここは獄炎に包まれるんだっ”そんなキャラを守らなきゃいけないと。
確かに、最も恐ろしい事になります。
「何百の魔物を一瞬にして殺した魔導師、魔法の探求者、モテない男の守り神とかですね」
顎に指を当ててクスリと笑うブリーゼ。
「守り神って…私はどんな扱いになってるんですか?」
「ガイアには振られた男性を慰めるこんな言葉があるんですよ。友人や知人の男性が女性に振られたら”命懸けで魔王を倒したのに、フィル・スカイに振られたジャスティスファングよりはマシだろっ”て言うそうです」
確かに、断りもなしに異世界に喚ばれて命懸けで魔王を倒したのに振られるって酷い話ですね。
「よく英ちゃんが黙ってますね。王としては嬉しくない言葉なんじゃないですか?」
「今の言葉を広めたのはナトゥーラ様らしいですよ。いくらキヨキ王でもナトゥーラ様を責める程思い上がってはいないでしょう」
お師匠様、何をしたいんですか…。
「犯人はナトゥーラ様ですか…」
「ナトゥーラ様はセイガさんの事を実の子供の様に可愛がっておられましたから。セイガさんを裏切ったキヨキ王やフィルの事を許せなかったんでしょうね…”お前達のした事は風化させないよ”そんな感じですかね…私も母親になったから気持ちは分かります」
つまりオリヤンも父親になったと言う事…周りは落ち着いていくのに私は取り残されていく寂しい現実。
「そう言えばオリヤンは元気にしてますか?」
「…オリベは…元気なんでしょうか」
そう言ったまま俯くブリーゼ…私、地雷を踏んだんでしょうか?
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リヤンの町には様々な建物が並んでいました。
石造りの大きな家の隣に木造の小さな家が建っていたりと、大きさも素材も形も様々です。
この混然一体とした風景が多民族国家リヤンの象徴。
「せい君、なんで同じ町なのに色んなお家があるの」
「一口に獣人と言っても様々な種族がいて、みんな好む環境が違うんだよ。例えは悪いけど動物園の熊と兎の獣舎が違うのと一緒さ。この国の王様イッポはカバの獣人だから寒さや乾燥を嫌うけど、逆に兎の獣人は暑さと湿気を嫌うんだ。流石にそこまで習性が違うと離れた場所に住むみたいだけどね」
ちなみにイッポの住む城は湖の畔に建てられているそうです。
「自分の住みやすい国には住めないの?」
「マナカさん、ミゼルシューブァで普通の獣人が国民として住むのが許されているのはリヤンだけなんですよ。キヨキ聖皇国にも獣人はいますが、前大戦で手柄をたてた獣人のみですし」
やっぱり、簡単にはいきませんでしたか。
「やっぱり獣人差別は簡単には消えませんか」
「ええ、キヨキ聖皇国はまだましなほうです。何しろキヨキ聖皇国で重要視されるのは前大戦で手柄をたてた事、アバター王家に連なる血筋、キヨキ王への忠誠心です」
手柄をたてた事…キヨキ聖皇国の王は前大戦の勇者英ちゃんだから、これは当たり前。
アバター王家の血筋…英ちゃんの正妻はアバター王家の姫ディプル王女ですし、私達を支援をしてくれたアバター王家だから不思議ではないです。
最後のは何と言ったら良いのか。
「そろそろお城に着きますのでご、準備して下さい」
そして見えて来たのは湖の畔に建つ石造りの大きな城。
城の色が灰色なのはイッポがカバの獣人だからでしょう。
私達が城の兵士に案内されたのは豪奢な応接室。
「もう少ししましたらイッポ様がお見えになりますので、しばしお休み下さい」
城の兵士がいなくなるのを見計らったかの様にブリーゼが私に近づいてきました。
「セイガさんお願いがあります…オリベを私の愛する人を助けて下さい。オリベはキヨキ王に裏切られて魔道具に組み込まれてしまったんです」
私のいない十四年の間に何があったんでしょうか?
分かるのは、逃げようのない戦いの渦に巻き込まれていると言う事だけです。
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