再会は嫌な予感?
何気に大きな展開があります
余裕を持って、出発の三十分前には宿に着いたんですが…
「ようやく来ましたね…さあ、リヤンに出発します」
えらく気合いの入ってるカミカさんが、今や遅しと私達の帰りを待っていました。
「…せい君、今日は紅葉もレッドファングに乗るからね…」
そう抑揚のない声で呟く紅葉…カミカさんに正体がバレてもガッカリされるだけだと思うんですが。
イッポは私の戦友です、戦友に今は幸せに暮らしていると伝えるのは大切ですよ。
決して、振り返った紅葉の目が笑っていなかった事に怯えたんじゃありません。
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ラドロを放れて一時間間位すると辺りの景色が、少しずつ変わってきました。
「せい君、なんか自然が豊かになってきたね。ほらっ、綺麗なお花も咲いてるよ」
「リヤンが近くなった証拠だよ、獣人は自然を大切にするから。さて、イッポの奴は元気かな」
文化的な事もありますが、ゲリラ戦を得意とする獣人にとって豊かな自然は即席の砦にもなります。
「イッポさんとせい君はどっちが強いの?もし、奴隷の事でイッポさんが怒って戦いになったら勝てる?」
「確実にイッポの方が強いよ。向こうはずっと現役だったんだし、国軍があるから配下にも有能な武人が揃っている。戦えば確実に私が負けるよ」
素早い動きが出来る獣人は魔法使いにとって天敵。
「イ、イッポさんはせい君のお友達だから大丈夫だよね」
「確かに、イッポは私の戦友だけどそれ以前にイッポはリヤンの王だ。政情の前じゃ友情なんて紙屑同然だと思った方がいい。それより気になるのはシェルムの方なんだよ」
シェルム・トロイ…そうちゃんの護衛騎士兼恋人だった女性。
「シェルムさんって、総士さんの恋人だった人だよね。どんな人なの?」
「夏みたいな少女だったよ。元気でさっぱりした性格で、見た目は赤い髪に浅黒い肌。そう君とは結婚の約束を交わすぐらいに愛し合っていたんだ」
騎士道に仕えるはシェルム・トロイ。
人道に仕えるはブリーゼ・アプフェル。
王道に仕えるはフィル・スカイ。
そんな言葉があるそうです。
「なんか夏子ちゃんと似てるね。シェルムさんの何が気になるの?」
「シェルムはそう君が死んで教会に入ったんだ。教会に入るって事は、残りの生涯をジャンティー・ミゼル様に捧げるって事なんだよ。そのシェルムが教会を出てまでリヤンにいるとしたら…そう君を襲った真犯人が分かった可能性もあるんだよ」
私の考え過ぎかもしれませんけど。
そしてキヨキ聖皇国ではなくリヤンにいるとすれば…疑うのは。
「シェルムさんは総士さんの敵討ちをしようとしてるの?」
「さあな、私はこの十四年で色々あって紅葉と知り合えた。そう君には悪いけど、シェルムも新しい出会いをしていれば良いんだけど」
だけど…振られたのと殺されたんじゃ想いは違うんですよね。
「でも、それは難しいよ。ねえ、前にカミカちゃんからせい君達三人で魔王を倒したって聞いたけど、本当なの?」
「そう君が剣で攻撃して私が魔法、おりやんが回復役をして倒したんだよ。おりやんがいたから残りの魔力を気にしないで強力な魔法が使えたんだ」
今あの頃みたいに強力な魔法を使ったら直ぐにガス欠になるでしょう。
「おりやんさんがいたから?」
「おりやんの名前は冨楽織部。アーツはオリジンアーツの由来にもなった無限魔力、おりやんにマジックドレインをかければ幾らでも魔力を回復する事が出来たんだ」
又の名を織部マジックステーション。
「その間、英男さんは何をしてたの?」
「魔王カイラインは人の心を闇に染めるから軍と一緒にいたよ。いくら魔王を倒しても退路が絶たれたらお仕舞いだろ…まあ、英ちゃんの恋人のディプル王女が許可しなかったっていうのもあるんだけど」
今考えると、魔王を倒して帰って来た私を師匠が直ぐに呼び寄せたのは優しさだったのかも知れません。
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まさか、そう来るとは思いませんでした。
リヤンの国境には一個旅団に相当する軍隊が陣を展開しています。
(イッポの奴、軍を展開をさせやがった…サクセスに主導権を握らせないつもりだな)
サクセスの騎士達の顔が青ざめているのをみる限り、リヤンの勝利は確実でしょう。
「今回はうちの民を助けてくれたそうだな。礼を言う」
姿を現したのは三メートル近い大きさがある灰色のカバ人。
ごつい体に分厚い鎧を着た姿の迫力は凄まじく、紅葉は私に抱きついて離れません。
(イッポの奴、またでかくなりやがったな…しかも、ご丁寧にマジックバリアを張りやがって)
これじゃ強力な魔法を放っても、防がれてお仕舞いです。
「さて、僅かながらだが宴の準備をしている。係の者の案内に従って欲しい」
イッポの言葉で動き出した獣人達が、すぐさま私達を取り囲みました。
(くっ!!このカバ○ット。私に何人つけるつもりだ。案内に一個小隊も必要ないだろうに)
「せい君、怖いよ」
紅葉が怯えるのも当たり前、私達を取り囲んでいるのは様々な獣人達。
「怖がらなくても大丈夫ですよー。セイガさんお久しぶりですー、ここにオリベがいたら、セイガがロリコンになったって心配するでしょうねー。今のセイガさんはハゲロリコンですかー」
(なんで、こいつまでいるんだ!?)
紅葉に声を掛けたのは緑の色の髪の猿人女性。
何より、ゆったりとした口調にそぐわない毒舌。
「ブ、ブリーゼさん!?」
「はいー、今はブリーゼ・フガクですよー。でも安心して下さいー、フィルはいませんからー」
もう、嫌な予感しかしません。
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