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偶像と実物

 旅をするには準備が不可欠です、水・余裕のある食糧・薬・日除けのローブ、そして。 


「久郎、お前馬に乗れるか?」


「砂山さんじゃ駄目なのか?」


「水を飲まないし草も食べない、おまけに鳴かない馬なんて怪しまれるだけだよ。それじゃお前は馬車組だな、少し高くつくが馬を買ってくる」

 殆ど無趣味に近い久郎に乗馬の経験がある訳がないんですけど。


「せい君、私も一緒に行って良いですか?」


「良いけど、紅葉も馬に乗れるの?」


「私、せい君と2人乗りがしたいです。映画やドラマで見るじゃないですか」

 いや、あれは映画と違う点があるんですよね。


「良いですけど、紅葉が前に乗らなきゃいけなくなるよ。ほら、テレビで子供を前に乗せて走るの見た事あるだろ」

 つまり、紅葉が私の懐に抱かれる形になります。


「ありです!!私、せい君と2人乗りがしたいです」

 2人乗りに耐えれる馬体の良い馬って高いんですよね。 

 そして馬の名前は紅葉の希望でレッドファングに、私としては馬場16号が良かったんですけどね。

 ちなみにレッドファングは赤毛の大きな馬で、お値段は80万ウル…私のコレクションがまた一つ消えました。 


――――――――――――――――


 旅立ちの日、約束の場所には4台の馬車とカミカさん、三米君、護衛騎士が数人待機していました。


「もう少ししたらリヤンに出発します。最初の目的地はリヴェール村です」

 なるほど、そう言う事ですか。


「せい君、なんで4台も馬車がいるの?」


「1台は奴隷商が使っていた馬車、1台は荷物運搬用、1台はカミカさんや馬に乗れない人が乗る為だよ。そして残る1台は今のところはもぬけの殻さ」

 幸い、2人乗りをしているので小声でも会話出来ます。


「なんで使わない馬車を用意したんですか?」


「リヴェールはサクセスの隣国レイク自治区との境界線にある村なんだよ。レイク自治区は小国で治安があまり良くない。多分、奴隷商の馬車はレイクとの境界線で見つけた事にするんだろ。獣人は今までどこを旅していたか分からないし、奴隷商は死人に口なしだから誰も反論できないだろ?」

 そう、レイクの盗賊辺りに濡れ衣を着せるつもりなんでしょうね。


「それじゃ、あの馬車は!?」


「名目上は要人を乗せていた帰りって事にするんだろうな?ほら、カミカさんや久郎達が荷物をつけた馬車の方が質素だろ。助けた獣人は手厚く保護致しましたってってね」

 もう一つ気になるのは、護衛騎士が妙に軽装だと言う事。


「あら?モミジちゃんは馬で行くんですか?」

 紅葉に話し掛けてきたのはカミカさん。


「せい君が馬に乗れるんだ。名前はレッドファングって言うんだよ」


「も、もしかしてモミジちゃんもジャスティスファング様のファンなの?私、子供の時に大まどうしジャスティスファングって絵本を見て魔法使いになるって決めたんだ!!」

 はしゃぐカミカさん、絵本ですか…嫌な予感がします。


「へー、どんな本?僕も見たいな」

「カコちゃん、待ってて!!私いつも持ち歩いてんだ」

 いつの間にか近くに来ていたかこちゃんの言葉を聞いたカミカさんは勢い良く馬車に戻りました。


「せい君、良かったですね。エレメンでモテモテなんじゃないですか?」

 背筋が妙に、寒くなったのは気のせいでしょうか?


「これです、これが私の憧れのジャスティスファング様です」

 カミカさんが持っている本に書いていたのは私とは似ても似つかないハンサムさん。

 

「へー、似てんのはデコが広い所だけだな。向こうは鼻が高いけど、お前の鼻はでかいもんな。こりゃ、詐欺になるんじゃねえか?カミカさん本物を見たら傷つくだろうなー。でも正体がバレる事はまずねえな」

 久郎がニヤニヤしながら小声で話し掛けてきました。

 そう言えばナポレオンは背の小さいフツメンさんでしたが、後年になるに連れて背の高いイケメンとして描かれる様になったそうです…って私の顔は絵本にするには偽装工作が必要なんですか?


「リヤンに行けばジャスティスファング様を知っている人に会えるかも知れないんですよ。私の夢は魔法国家ネサンスに行ってジャスティスファング様の最新研究に触れる事なんです」

 ネサンスに行かなくても、目の前にいるのに気づかれない寂しさ。


「そうなんですか、そこではどんな研究がされているんですか?」


「ジャスティスファング様の魔法やお考えとかです。中にはフィル・スカイと別れた理由やジャスティスファング様の決め言葉を研究している方もいるそうなんです!!中にはフィル・スカイに振られたからエレメンからいなくなったって言う人もいるんですよ」

 鑑定番組で昔の有名人のラブレターや借金の申し出の手紙に、値段がついたりしますけど、あれって本人からした嫌がらせでしかないですよね。


――――――――――――――――


 レッドファングは大人しい気性らしく快適に旅が出来ています。


「どうして、あの本は本物のせい君と似てないんですかね?せい君はあんなにチャラい顔はしてないのに」


「私は昔、今もそうなんだけど見た目に自信がなくて何時もローブを目深に被っていたんだ…英ちゃんとそう君はイケメンだったし、おりやんは癒し系だったからね。そのまんまで一緒に並びたくなかったんだよ」

 昔の防衛手段が現在の自分を苦しめるとは。


「なんであんな馬鹿な事をしたんですかね?」


「本人がいないから、無理矢理イケメンに仕立てあげて魔法使いの人気をあげたかったんだろ。魔王を倒したパーティーの魔法使いだけがブサメンじゃ魔法使いの人気が落ちるからな」

 自分で言いながらも何か泣きそうです。

 そしてネサンスでの嫌がらせみたいな研究には師匠が絶対に一枚噛んでる筈。




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