表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/70

多民族国家リヤン

 沈むと分かっている船に乗る人はいないでしょう。

 国も同じ事、この時期に獣人の奴隷を容認する国は、沈む船と変わりません。


「私はこいつらの始末をしてるから、誰か城に報告に行ってくれ。報告する相手は、カミカさんか私を担当してくれたデュライさんにすれば大丈夫だと思う」


「しょうちゃん、僕が行ってくるよ。カミカちゃんとも会いたいし」


「かこちゃん頼むよ。久郎も一緒に行ってくれ」

死体の側にいるのは、きついでしょうし。


「分かった、何で言えば良いんだ?」


「そうだな、依頼の途中で無人の馬車を見つけた。中を見たら獣人の娘が何人も鎖に繋がれていたって、言えば良い。でもデュライさんとカミカさん以外には絶対に言うなよ」

 背後にいる貴族が誰なのか分からないうちは、話を広げるのは得策とは言えません…昔なら、直ぐに貴族の屋敷に乗り込んでいたんですけどね。


「分かったよ、急いだ方が良いのか?」


「ああ、馬鹿貴族が首を長くして待ってるからな。今、砂山さんに馬になってもらうから…砂山さん、馬になって下さい」


「ショウガ、これじゃ埴輪の馬だぞ。おーい!!はに○のヒン○エにしか見えないぞ」

 くっ、懐かしいネタで突っ込んでくるとは。


「兄貴、は○まるってなに?」


「昔、テレビにはいってた着ぐるみ劇だよ。ショウガは最終回を見て大泣きしたんだよな」


「お前も泣いてたじゃねえか。動きは砂山さんに任せておけば良い」

 その後、かこちゃんの希望で砂山さんには紅葉修正が入りました。


「せい君、大丈夫?顔色が良くないよ」


「今回の展開は不味いんだよ。まさか自分から戦争の火種を招き寄せるとはね、流石は貴族様だ」

 自分が乗っている船に穴を開けるんだから、救いようがない。


「せい君、戦争になっちゃうの?」

 紅葉は不安らしく私の腕にしがみついています。


「獣人の多くは多民族国家リヤンに住んでるんだよ。獣人は家族を大切にするから借金の所為で奴隷になる事は少ないんだ。無理矢理拐われたか奴隷商人に嵌められた可能性が高い…リヤンに、この事がばれたらサクセスとの同盟を反故にする可能性がある。それに英ちゃんが聞いたら黙っていないと思うんだ」


「それが、さっき言ってた介入ですか?」


「ああ、リヤンは獣人が魔王軍の戦いで活躍した功績が認められて出来た国なんだ。当然、私や英ちゃんの友人や知人がいる。友人の家族を解放する為に戦う、英ちゃんがサクセスと戦うお題目に持ってこいなんだよ」

 それにサクセスは魔王との戦いには積極的じゃありませんでしたし。


「英夫さんの方が主張的には正しいですもんね…でも、あの娘達は外から見えてますよ?」


「あれは街道の途中で貴族に御披露目する為なんだよ。どんな娘が入荷したかってね、ちなみに中からは何も見えないし聞こえない造りになってるらしい」

 逃げ道を覚えさせない為と、不安を煽る為らしいです。


「せい君はどっちの味方をするんですか?」


「正直、どっちの味方もしたくない。私は奴隷も戦争も大嫌いなんだよ」

 その為に命懸けで戦ったんですけど、たった8年で平和が崩れるなんてお笑い草です。

 とりあえず奴隷商の死体は途中で何かに襲われた様に見せる為に砂山さん二号で移動しておきました。


――――――――――――――――


 それから30分後、デュライさんとカミカさん達が駆けつけてくれました。

 兵士を30人ちかく連れて来たのは、事の重大さを理解してくれたからでしょう。


「この紋章は奴隷商の物で間違いありませんね。この時期に獣人の奴隷を購う輩がいるとは…街道を今すぐ封鎖しろ!!普段は街道にいらっしゃないお方がいたら名前を報告するのを怠るな」

 デュライさんの眉間にくっきりと縱じわが刻まれました。


「モミジちゃん大丈夫ですか?町の暮らしで何かに不便はありませんか?」

 カミカさんが、心配そうに紅葉に話し掛けています。


「カミカちゃん心配してくれてありがとうございます。でも私には、せい君がいるから大丈夫ですよ」


「アカイさんがですか?あまり頼りになりそうには思えませんが」

 そう言って訝しげな目で、私を見るカミカさん。


「と、とりあえず町に戻りましょう。商人さん襲った魔物が近くにいるかもしれませんし…あー、怖い、怖い」

 今度は紅葉達が訝しげな目で私を見ています。


 数日後、私達に依頼が届きました。

 獣人をリヤンまで送る護衛隊に参加して欲しい。

 隊長はカミカ・インシュタルとし、副隊長はミツマイ・アキラとする。

 

「ショウガ、この依頼を受けるのか?」 


「ああ、リヤンに行けば違う情報が手に入るからな」

 何より、獣人の娘達を無事にリヤンに帰さなきゃいけません。


―――――――――――――――


 同時刻、三米明(みつまいあきら)は浮かれていた。


「ルカ、やっと俺にも恋のチャンスがやって来たぜ!!満中さんも佐藤さんも飛びっきりの美少女、しかも一緒にいるのは冴えないおっさん。これは旅で愛が芽生えるんじゃね?あっ、カミカちゃんも捨てがたいよなー」


「明君は護衛に行くんでしょ?真面目にやらないとカミカさんに嫌われるよ」

 そんな三米明を、幼馴染みの木谷流夏(もくたにるか)は心配していた。


「ルカ、心配するなっ。カミカちゃんに嫌われても紅葉と夏子がいる!!今から呼び捨ての練習をしておかなきなゃな」


「でも、かこちゃんはお兄ちゃんっ子だから無理だと思うな、紅葉ちゃんは軽い人が嫌いだし」

 呆れながら答えたのは二人の幼馴染み瀬羽季子(せわときこ)


(やっぱり、ときこは焼きもちを妬いてくれないし、心配もしてくれないんだな)

 彼はずっと片想いをしている幼馴染みの女の子に心配を掛けないために、わざと浮かれてみせていた。


感想、更新リクエスト、活動報告への協力を待っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ