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命を奪うと言う事

 私が結界から出ようとすると誰かが肩を掴みました。

「ショウガ、俺達も連れて行ってくれ。戦いがどんな物なのか見ておきてえんだ、どっちにしろ戦わなきゃ日本に帰れねえんだろ?」


「グロい光景のオンパレードになるんだ。数日、数週間はうなされると思うぞ」

 飛び散る血肉、耳に残る断末魔、怨みと怒りと哀しみが混じり合った視線…どれも慣れないうちは精神をごっそりと削っていきます。


「早く強くならなきゃ飲み込まれちまう世界なんだろ?頼むっ」

 久郎はかこちゃんの兄であり保護者、何よりも大人で男ですから守れる力が欲しいんでしょう。


「紅葉とかこちゃんも一緒に来る?」

 2人共ゆっくりと力強く頷いてくれました。


「分かったよ、砂山さん移動形態に変わって下さい」

………

「ショウガ、何で豚の蚊取り線香に変えたんだ?」

 砂山さん移動形態、それは1mぐらいの大きさの動く蚊遣り豚。


「蚊遣り豚と言え。中に時空の魔法式を展開しといたから口から入れる、早く乗れ」

 最初に砂山さんを蚊遣り豚に変えた時、日本から来た4人で笑って泣きました…ゴーレムを蚊遣り豚に変えた私の発想に笑い、蚊遣り豚を見て故郷を思い出し泣いたんです。


「へぇー、中は案外広いんだ。ショウちゃん、薬草を取りに行くんだよね?場所は分かるの?」

 かこちゃんが蚊遣り豚の口から顔を出して話し掛けてきます。

 この年になって見ると、中々シュールな絵です。


「それは探す方法があるから大丈夫だよ。薬草と一緒に触媒も探したいし」


「セイ君、触媒って何ですか?」

 巨大蚊遣り豚から顔を出して小首を傾げる元カノ…シュールです。


「自然界に存在する物は多かれ少なかれマナを宿してるんですよ。特に魔物の角や牙、純度の高いパワーストーン、特定の植物とかに多くのマナが含まれています。それを触媒とする事で強力な魔法を少ない魔力で使う事が出来るんです」


「それじゃあ、特定の魔物や植物が減っちまうんじゃねえか?」

 確かに地球では象牙を取る為に象が、角を取る為にサイが乱獲され個体数を減らしました。


「魔物を狩れる人間は少ないし、魔法使いは触媒や魔法の使い方を弟子や身内にしか教えないから乱獲はされないんだよ。まっ、含有マナの高い特定の触媒は武具や防具にも使えるから狙う冒険者は少なくないんだけどな」

 でも触媒を手にする事が出来ずに死んでいく冒険者も少なくありません。


「そういえばショウちゃんのアーツってなんなの?やっぱり魔法関係?」


「簡単に言えば魔法の使い方が分かるんだよ。どんな触媒を使って、どんな風に唱えれば良いかが分かるんだよ」

ちょっと省いた所もありますが、決して嘘じゃありません。


「随分と便利なアーツだな」


「あのな、使い方が分かるだけで無条件に使えるって訳じゃないんだよ。それ相応の魔力や魔力の分配が出来なきゃ絵に描いた餅。フランス料理のレシピを聞いただけじゃ作れないし、説明を聞いただけじゃ飛行機は操縦出来ないだろ?努力をしなきゃ強い魔法は使えないんだよ」

 そのお陰で私は実力をつける事が出来たんですけどね。


「さて、それじゃあ動くぞ。マナよ、我が目、我が耳とかせ…サーチスフィア」


「セイ君、サークルじゃなくてスフィアなんですか?」


「サークルだと円、平面でしょ。触媒になるパワーストーンは地中にもありますし、魔物や獣は正面や背後だけじゃなく樹上や空中からも襲って来ますからね」

 ついでに食べれる果物も見つける事が出来る優れた魔法。


「ショウガ、俺達がある程度強くなったらどうするんだ?」


「出来たら一緒に来た人達とコンタクトを取って連携を密にしておきたいな。アーツの中で使い方を間違えたらヤバイのもあったし…それにカミカさんと仲がいい人がいたら気持ちを確かめておきたい」


「セイ君、カミカちゃんに何かあるんですか?」


「多分、殺されるか良くて幽閉される可能性が高いんですよ。不利な条件で契約をさせた事をカミカさん1人の罪にして国の不信感を拭う為にね」

 罪を罰する為に処刑、無理な依頼を押し付ける、自殺に見せ掛けて殺す、人気のない所で襲わせる…いくらでも手段はあります。


「カミカちゃんを助ける事は出来ないんですか?」


「紅葉、私は言いましたよね。”エレメンで何かしたければ強くなりなさい”って。私に依頼をしても良いですけど対価が必要になりますよ」

仲間の頼みだからって無料で依頼をすれば便利に使われるだけですし。


「そんな!!!セイ君は助けてくれないんですか?」


「私はカミカさんを知りませんし、彼女はみんなを騙してエレメンに連れて来た罪があります。それに国と相対するのは命懸けなんですよ」

自分が死ななくても多くの命が散り、多くの人から怨まれ恐れられる。


「セイ君は何をすれば依頼を受けてくれるんですか?」

「静かに…来ますっ!!」


「ショウガ、ありゃなんだ?でけえ。それになんだあの角は!!」

 私達の前に現れたのは2m近い鹿、その頭からは長く鋭い角が生えています。


「スピアディア(槍鹿)だよ。狂暴で強い魔物だけど、角は触媒になるし肉も皮も売れるありがたい魔物なんだよ」


「セイ君、でも子鹿を連れてるお母さん鹿ですよ」

 確かにスピアディアは4匹の子鹿を連れています。


「だから見逃せと?言っておく、お涙頂戴な甘っちょろい動物番組の感覚じゃ直ぐに死ぬぞ。マナよ、氷柱に姿を変えて我が敵を射抜け…アイスニードル」

 氷柱がスピアゴートの体を射抜き、スピアディアは力なく崩れ落ちていきました。

 子鹿は見逃します、でもそれは優しさじゃなく角がまだ小さいからです。


「これから血抜きをして内臓を処理する、気持ち悪くなったら砂山さんの壁を3回ノックすれば窓になるからそこから吐けば良い」

 終わった頃には3人共グロッキー状態になっていました。

 ちなみにスピアディアの死体を砂山さんの中に入れようとしたら猛反対されたので、急遽砂山さん2号を作っ運んでもらっています。

 その後、依頼の薬草の他に触媒になるパワーストーンや植物を何種類か手に入れる事が出来きました。

スピアディアの肉と皮も売れましたから、万々歳なんですけれど。


「みんな、飯は食わないのか?スピアディアの香草焼きはうまいぞ」

しかし3人共食べれたのはパンとスープを数口だけ。

 こればっかりは慣れてもらうしかありません。

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